キャッシュレス百景

第17回

カード数百枚所有でも考えはシンプル。クレジットカード+Suicaが心地よい by 菊地崇仁

筆者はクレジットカードだけで80枚、デビットカードやプリペイドカード、電子マネー、ポイントカードなどを含めると数百枚のカードを保有している。もちろん、今流行のコード決済も利用しており、キャッシュレスと名のつくものはほとんど使った経験がある。

筆者の使い方を紹介しても現実的ではないため、おすすめの組み合わせを紹介したい。使うカードはクレジットカード+Suicaだ。

クレジットカードはキャッシュレスの王道

最近はコード決済も乱立しており、「何を使ったらお得ですか」「どう選べば良いですか」などの取材も多い。そこで伝えるのが、コード決済というのは従来の決済ツールのインタフェースが変わっただけと言う事だ。

コード決済は「スマートフォンのアプリに表示されたバーコードやQRコードを読み込んでもらったり、提示されたQRコードをカメラで読み込んだりすることで支払えるサービス」と聞くと混乱する人が多いのだが、実際は従来の決済方法をスマートフォンのコードに移行しただけとなる。

基本的な決済方法はプリペイド、デビット、クレジットの組み合わせとなる。プリペイドは事前に入金した範囲内で利用でき、デビットは銀行の口座から直接の支払となる。クレジットは後日請求書で支払ったり銀行振替で支払うサービスだ。

コード決済を当てはめてみよう。LINE Payはプリペイド、ゆうちょPayはデビット、楽天ペイはクレジット、Origami Payはクレジットとデビットのハイブリッドとなり、プリペイド、デビット、クレジットの組み合わせでサービスが成り立っていることがわかる。磁気、非接触、ICチップなどがコードに変わっただけで、基本的な考えは従来の決済サービスを組み合わせただけと考えると理解しやすい。

従って、混乱するキャッシュレスを理解するのであれば、プリペイド、デビット、クレジットを整理するのが良いだろう。

この中での王道は、やはりクレジットカードだ。

日本でのクレジットカードの誕生は1960年まで遡る。既に60年ほどの歴史があり、利用できる場所は圧倒的に多い。また、国際規格も決まっており、世界中で利用する事が可能だ。最近では国際ブランドの付いたデビットカードやプリペイドカードもあるが、高速道路やガソリンスタンドなど、一部の加盟店では利用できない。また、固定費の支払いにも対応していない場合もあり、やはりメインで利用するにはクレジットカードが安心だ。

クレジットカードは付帯特典も充実している。例えば、不正利用があった場合、60日程度は補償される。デビットカードは100万円まで、プリペイドカードは補償がない場合もあり不安が残る。また、スマートフォンが盗まれてコード決済サービスを利用された場合でも、クレジットカード登録タイプの場合はクレジットカードの不正利用としての補償を受けられる。筆者もカードの不正利用の被害に遭っているので、不正利用はあると思っていた方が良いだろう。

また、クレジットカードには旅行先などでのチケット割引、ゴールドカードの場合は国内線の空港ラウンジを利用できる特典などもある。ポイント還元率も高く、1%を超えるカードも多い。

クレジットカードは使いすぎが心配と言う人もいるが、その場合はWeb明細を活用しよう。web明細では「速報値」や「未確定」などとして請求書に載る前の利用状況を確認できる。最近ではアプリもあるため、通勤時間に少し確認するだけで不正利用や、今月使いすぎたかどうかなども確認することが可能だ。

鉄道に乗る人はSuica一択

続いてSuicaだ。Suicaはプリペイドカードとなる。事前にチャージし、その範囲内で利用する事が可能だ。

国内で通勤・通学する場合は鉄道を利用する場合が多いだろう。海外の鉄道のように、コンタクトレス対応のクレジットカードで乗車できれば良いのだが、日本の鉄道はクレジットカードだけで乗車することができない。従って、SuicaやPASMO、ICOCA、nimocaなどの交通系ICカードを保有している人が多いのではないだろうか。これらは相互乗り入れしているため、どれか1つのカードを持っていれば地方に行っても困ることは少ない。

Suica

これらの交通系ICカードの中でも特殊なのがSuicaだ。AndroidでもiPhoneでもアプリが用意されており、残高を確認したり、チャージしたりできる。また、「ビュー・スイカ」カードやJRE CARDなどのJRE POINT対象のビューカードであれば、チャージでポイントが3倍だ。通常時の還元率が0.5%となるため、Suicaチャージ時には1.5%のJRE POINTを獲得できる。貯まったJRE POINTはwebサイトからSuicaにチャージして利用する事も可能だ。

JRE CARD

他の電子マネーと異なり、利用時にポイントが貯まらないが、チャージするときに1.5%のポイントが貯まるため、実は他の電子マネーよりもお得な場合も多い。イオンではイオンカードや電子マネーWAONを使っている人も多いのだが、WAON POINTカード+ビューカードでチャージしたSuicaの方がお得になる。わざわざ使い分けて損する(または得しない)よりは、常にビューカードでチャージしたSuicaで払っていた方が安心だ。

コード決済の場合はアプリでポイントカードを操作して、さらにアプリでコード決済サービスを操作しなければならず、不慣れであればレジ渋滞を引き起こす。しかし、ポイントカードをアプリで管理し、非接触でSuica払いすれば、支払いもスマートだ。スピード決済とお得度でビューカード+Suicaに勝る物はない。

めんどくさいならキャッシュバック系+ビューカード+Suicaがおすすめ

Suicaで支払える物は全てSuicaで支払い、それ以外はクレジットカードで支払うのがおすすめだ。特にビックカメラSuicaカードは初年度の年会費が無料、2年目以降は477円(税抜)だが、前年度1回でもショッピング利用があれば無料となる。Suicaのオートチャージ設定をしておけば条件をクリアできる。

ただし、Suicaチャージ以外でビックカメラSuicaカードを利用すると、0.5%のJRE POINTと0.5%のビックポイントが貯まる。ビックカメラが近くにあったり、ビックカメラ.comを利用している場合は良いのだが、ビックカメラを全く使わない場合はポイントの使い道がない。

そんな人にお勧めなのは、キャッシュバック系のクレジットカードとなる。P-oneカード Booking.comカードは、どちらも年会費無料で1%還元だ。特にポイントを意識する必要がなく、固定費引き落としや日々の買い物が常時1%割引と考えられる。

クレジットカードだけでも多くの種類があり、それぞれの特徴を考え出すとキリがない。今回紹介した組み合わせは、100点は取れないが、誰でも60~70点くらいは取れるような組み合わせだ。「キャッシュレスは多すぎて何を使って良いのかわからない」と言う場合に参考にして欲しい。

菊地崇仁

ポイント交換案内サービス「ポイ探」代表取締役社長。NTT東日本で、Lモードの料金システム開発等に携わった後、起業。約80枚のクレジットカードを保有し、約135万円の年会費を支払っている。一般カードからプラチナカード等のプレミアムカードを実際に保有・利用し、信用できる情報提供を目指している。すべてのカードを利用し、おトクな使い方、おすすめの使い方を日々研究中。