キャッシュレス百景
第15回
ズボラだからこそ“結果キャッシュレス”。マネーフォワードに頼る by 石井 徹
2019年4月19日 08:15
面倒くさがりでルーズなだけな筆者。お金をつい使い過ぎてしまうことも多かった。
「せめて支出を“死なない程度”に抑えなくては」と思い導入したのが家計簿アプリ「マネーフォワードME」だ。お金の流れを把握できれば、使い過ぎを防ぐことができるという目論見だ。
だが、何しろズボラ人間。買い物をするたび丁寧に毎回毎回記帳するなんてできるわけがない。なにしろ子どもの頃の「おこづかい帳」はすべて3ページ目以降は白紙のまま、捨てている。レシートを元に日付、内容、金額を書き写すというマメな作業を繰り返すのは、ただただ苦痛でしかない。
そこで、「キャッシュレス」だ。
「面倒だから」キャッシュレス化
マネーフォワードのような昨今のいわゆる「クラウド家計簿」には、銀行口座やクレジットカード、電子マネーの明細を自動で取得する機能が備わっている。様々な決済の情報を一元的に集約できれば、お金の流れが明確になる。そのため筆者は「マネーフォワードME」をGoogle Playの定期購入で有料契約している(月額500円)。さらに、「マネーフォワードクラウド確定申告」(月額800円)も契約している。
そして、クラウド家計簿のデータの信頼性を保つためには、なるべく正確に記帳する必要がある。たとえば、すべての会計を現金で支払うなら1つ1つ帳簿をつけることになる。これは面倒だ。
したがって支払い手段を選ぶ際の基準は「記帳の手間がかからないもの優先」になる。その筆頭がクレジットカードだ。そして次に使うのがスマートフォンの電子マネー。iPhoneのApple Payを中心に使っている。筆者は複数のスマートフォンを使い分けており、電子マネーも複数のスマートフォンで設定している。
首都圏で電車を使うなら必須となるのが交通系ICカードだが、これはクラウド家計簿との連携にややクセがある。QR決済も使っているが、クラウド家計簿への対応状況はサービスによってまちまち。今は補助的に使っている。それぞれ説明していこう。
主力はやはりクレジットカード
レストランなどではクレジットカードを使うことが多い。というより、クレジットカード以外のキャッシュレスに対応していない店は多く存在する。したがって、キャッシュレスの主軸は、依然としてクレジットカードということになる。
個人事業主の筆者は、事業用とプライベート用で、複数枚のクレジットカードを使い分けている。国際ブランドは使用できない店が無いようVISA/Master/JCB/AMEXの4ブランドを持っているが、日本ではほとんどの加盟店が複数対応しているため、これはあまり意味はない。
電子マネーは「Apple Pay」「Google Pay」経由で
その次に使うのが後払い式の電子マネー。これはQUICPayをメインで使っている。
後払い式のQUICPayを使うメリットは、事前にチャージをする必要がないこと。「おサイフの分散」を防げる上、筆者のように複数のスマホを使っている場合でも、それぞれに決済手段を用意できる。
AndroidではGoogle Payを使っているが、筆者が今メインで使っているAndroidスマートフォンが「おサイフケータイ非対応」の機種なので、もっぱらポイントカードを提示するために使うことが多い。
現状はiPhoneのApple Payをメインに使っている。Apple Payは、複数枚のカードを切り替えて決済できるのが便利だ。
交通系ICはモバイルSuicaをメインで
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードは、マネーフォワードに登録する上で面倒な部分がある。1つは、スマートフォンで使えるモバイルSuicaは前払い式のみなので「おサイフが増える」こと。そして、交通系ICカードでは、交通機関以外の決済などが「店頭端末」など、大まかな記録しか残らないのも不便な点だ。
カード型の交通系カードなら、マネーフォワードのカードリーダーアプリを使って履歴を読み込める。ただしこれは、カードの仕様で最新100件までしか保存されないらしく、2週間ほど読み込みをサボると取り漏らしすることが多い。これが意外と面倒だった。
なるべく正確に記帳したい仕事の交通費は、モバイルSuica(またはApple PayのSuica)を使うことにしている。マネーフォワードにモバイルSuicaのアカウントを連携しておけば、交通費を自動取得でき確実だ。
また、iPhoneのApple Payでは2枚のSuicaを利用している。アカウント管理が煩雑になるため、プライベート用のSuicaはモバイルSuicaアカウントを登録していないが、交通機関用とコンビニ払い用でSuicaを分けることで、チャージ額をそれぞれ「交通費」や「食費」として計上しておおよそ正しい記録が取れるようにしている。
なかなか残高が減らないQR決済
筆者はQRコード決済もいくつか使っている。もちろん記者という仕事柄、新しいものに触れておきたいというのもあるが、本格的に使ってみようと思い立ったきっかけは、PayPayが昨年実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」だ。とにかく還元率が良く、条件も「買い物するだけ」とシンプルなのが使う動機になった。
(大規模な還元キャンペーンを割り引いて考えると)QR決済はユーザーにとって“必須ではない”と感じている。日本では多くのチェーン店がクレジットカードや電子マネーに対応している。QR決済は普及度ではクレジットカードに、決済のスムーズさでは電子マネーに劣るだろう。ただ、筆者のメインスマホのように、おサイフケータイ機能が搭載されていない端末でも使えるのは、QR決済の良いところだ。
PayPayでは昨年末の大規模なキャンペーンで数万円分のボーナスを得たので、それをコンビニのパンなどで消費するような使い方がメインになっている。キャンペーンでの還元が大きいので、ボーナス分の残高だけでもなかなか使い切れていない。
PayPayの残高は現状、マネーフォワードとの連携が非対応となっている。PayPayの決済にクレジットカードを使うこともでき、そちらはカード側に決済履歴が残るので自動記帳にできるのだが、なかなか減らないボーナス分は家計簿に載らない「裏金」的な扱いになっている。
ところで、「100億円キャンペーン」でド派手なPRをした甲斐があってか、個人経営のバーやコワーキングスペースのような意外な店でPayPayの決済用QRコードを見かけるようになってきた。こうした店ではクレジットカードが使えないケースもあり「第2弾100億円キャンペーン」が終わった後も、PayPayが有力なキャッシュレス支払い手段となりそうだ。
QR決済でPayPay以外に使っているのは「LINE Pay」と「Origami Pay」だ。LINE Payはマネーフォワードと連携しており、データが取りやすい点がいい。そして、LINE Payで意外と重宝しているのが送金機能。記帳するのを忘れがちな飲み会の割り勘なども、LINE Payを噛ませておけば記録に残るので便利だ。
支出の把握で“消極的節約”を狙う
前述の通り、筆者がキャッシュレスを実践しているのは、とにかく手間をかけずに家計簿をつけるためだ。これは個人事業主としては、確定申告の手間をなるべく省く意味合いもある。
家計の財政として考えると、毎月の支出額を把握できるメリットは大きい。リアルタイムで消費額を確認できるということは、常に支払いを意識することになる。特に倹約を意識していなくても、「今月はこのぐらい使っているから、余計な支出を抑えた方がいいな」と、自然と支出に自制がかかるようになる。
筆者の課題は、「支出を見える化すること」だった。それを解決するために、現金や紙の家計簿を使っていては、面倒になってやめてしまっていただろう。自分が手を動かすことなく家計簿をつけられる方法を考えた結果、キャッシュレスになってしまった。筆者はそんな“結果的キャッシュレス”な人間だ。