キャッシュレス百景
第14回
キャッシュレス出遅れITライターのSuica分割術&iPhone SE活用 by 山口真弘
2019年4月3日 08:15
先日、プロ野球のキャンプ地となっている2月の沖縄における電子マネー事情についてお届けした。今回はそんな筆者がふだん都内で電子マネーやスマートフォン決済をどのようなスタイルで利用しているか、その現状をお届けする。
実はあまり電子マネーに詳しくありません
筆者の電子マネー歴はそう長くはない。正確に言うと、去年暮れに本腰を入れて使い始めるまで、電子マネーを敬遠していたほうだ。都内で生活する関係上、Suicaはもちろん所有しているが、交通機関以外ではほとんど使ったことがなかった。物品購入に使い始めたのはほんの最近である。
理由はいくつかある。ひとつは規格が乱立していて、その特性を理解していないこと。一言で言うと「よくわからない」だ。非接触型決済とバーコード決済の違いくらいは理解できても、それがいつどのように引き落とされるのか、競合サービスと比較してのメリットデメリットは、といった話になるとお手上げである。少なくとも人に説明できるレベルにはない。
事実、本連載に寄稿されている方の記事を読んでも、内容の半分以上がちんぷんかんぷんである。おそるおそる使ったり調べたりするうちに、この1~2カ月でようやく「なるほど、このことを言っているのか」と記事の意味を把握できるようになってきたのだが、読者の皆さんのほうが、きちんと理解されているケースも多いはずだ。
ただ規格が乱立しているとはいえ、電子マネー自体の選択肢はそろそろ出揃ったように見えるし、また昨今ではキャンペーンも目白押しで、体験して理解していくには、絶好のタイミングなのは理解できる。筆者の専門でいうと電子書籍でもかつてこのような時期があった。その後多少の淘汰はあるにせよ、乗っかってメリットデメリットを理解するには、適切な頃合いのように思える。
また最近は街中の自販機まで電子マネーに対応し始め、「今ここで電子マネーが使えれば便利なのに」というシーンも増えた。財布を開いて小銭があるか確認し、なければお札を入れて崩すといった面倒なオペレーションをするよりも、電子マネーで払ったほうが効率的なのは明らかだ。そんなこんなもあって、ようやく去年の暮れ頃になって、重い腰を上げたというわけだ。
業務用と業務外で2枚のSuicaを使い分け
もっとも、個人事業主として見た場合、電子マネーの利用はいろいろと面倒なことも多い。なかでも経費精算が行ないにくくなるのは、少々困りものだ。これまでも、Suicaで使用した交通費の中から、業務に関係するものを抜き出すだけで面倒だったのに、そこに物品購入が加わるとなると、考えただけで気が重い。
結局どのように解決したのかというと、Suicaを2枚用意し、業務とプライベートで使い分けることにした。ちょうど時を同じくしてPixel 3を購入したこともあり、Pixel 3のSuica(Google Pay)では業務とは関係ない私物、もともとあったviewカード搭載のSuicaは交通費を含む業務上の物品購入、という守備範囲で対応することにした。アナログだがこれがいちばん確実な方法だ。
何らかの特殊な設定を行なったわけではなく、ただ分担範囲を決めただけだが、これによって公私共に電子マネーの利用機会は一気に増えた。スーパーやドラッグストアでの買い物はSuica払いが可能な店にばかり通うようになり、近所であってもSuica払いのできない店は、急ぎの用以外では足を運ばなくなった。外食をする場合も、Suicaが使えることを確認してから入店するようになった。
なかでもありがたかったのは、クロネコヤマトの支払いをSuicaで行なうようになったことだ。というのも年間を通して、業務用途で発生する現金払いがいちばん多かったのは、宅配便の送料だったからだ。確定申告時のレシートの手入力を減らしたかった筆者としては、これは非常にありがたい。
この結果、現金払いによるレシートの手入力が必要な経費として現在残っているのは、コインパーキング、あと撮影用の小物を買うことが多い百均くらいとなった。前回紹介した沖縄では、このいずれも電子マネーでの支払いに対応しているケースが多く、都内でも早く普及して欲しいと思う。
また、Suica以外の電子マネー、具体的にはnanacoや楽天Edy、WAONについては、現状すべてプライベートでの支出なので、業務外の品を買う時に使うPixel 3(Google Pay)に登録して使うことにした。なので今のところ、業務に関連した支払いだけはカードのSuicaで行ない、その他はPixel 3を使って、その都度なにかしらの決済方法を選んで支払うという分担になっている。
ただ現実的には、都内で生活している限り、Suica以外を使わなくてはいけない機会はほとんどない。せいぜいセブンイレブンでnanacoを使うくらいで、それ以外は残高不足などで支払えなかった時の予備手段だ。特に沖縄であれだけ使った楽天Edy(前回の記事参照)は、東京に戻って以降、まるで使う機会のないままだ。
iPhone SEではバーコード決済を利用
ところで、筆者が電子マネーの利用をためらっていたもうひとつの理由が、メインで使っているスマホが、非接触型決済に対応していないことだ。
前述のように筆者はPixel 3を所有しているが、メインで使っている端末はiPhone SEである。最近はカメラ機能を中心にPixel 3の出番が増えつつあるが、軽量かつ小型なiPhone SEは携帯性も使い勝手も良好で、メイン機の座から外れることは当面考えにくい。
実際に、近所に出掛ける時はiPhone SEだけをポケットに入れ、Pixel 3は自宅に置きっぱなしにすることも多いのだが、そのiPhone SEでは非接触型決済が行なえず、前述のSuicaメインの支払フローには組み込めない。iPhone 7以降に機種変更すれば万事解決だが、音声入力では片手でハンドリングしやすいことが重要で、機種変更は予定になく、それゆえ長らく放置状態にあったというわけだ。
しかしこれについては、去年暮れから急速に立ち上がってきたバーコード決済を導入することで解決に至った。つまり、Pixel 3を持ち歩いている時はそちらを使うが、iPhone SEしか所持していない場合、iPhone SEに入れたLINE Payなどのバーコード決済で支払いを行なうというわけである。何らかのトラブルで、Pixel 3ではうまく決済が行なえない場合も役に立つ。
実際のところ、2台の端末を持ち歩いているのであれば、1台の端末(ここではPixel 3)で複数の電子マネーを使えるようにしておくより、ハードウェアの紛失・破損に備えてもう1台でも支払えるようにしておくのが、電子マネーが一切使えず現金も手持ちがないという事態を回避するのに正しいあり方だろう。上記の組み合わせは、その点でも理にかなっている。メイン機とサブ機が逆になっているだけだ。
余談だが、自分が所有しているスマホは古い機種だからという理由で、スマホ決済の利用をあきらめてしまっている人は、筆者の周囲にはちらほらいる。そうした場合こそバーコード決済の出番なのだが、現在は各社ともキャンペーンでの還元額ばかりをアピールしていて、そのような訴求はあまり目にしたことがない。
むしろそれよりも、「今まさにあなたが使っているその機種でも使えます」という訴求があったほうが、まだまだパイが広がる余地はあるのでは、という気はする。電子マネーまわりが難しすぎて導入に二の足を踏んでいた一ユーザとして、そのようなことも考えさせられる昨今である。