キャッシュレス百景
第13回
おサイフケータイから続くキャッシュレス15年。駐車場という壁 by 法林岳之
2019年3月26日 08:15
おサイフケータイという歴史あるキャッシュレス
「おサイフケータイ」という言葉が登場して、そろそろ15年ほどになる。その当時から積極的にケータイやスマートフォンを使って、「キャッシュレス」を実践してきたつもりだけど、なかなか拡がらないのが実状。聞くところによれば、日本で出荷されるFeliCaを搭載した携帯電話及びスマートフォンのうち、20%程度しか、おサイフケータイが利用されていないとか……。
まず、筆者の環境を簡単に説明しておくと、仕事柄、基本的には主要3社の端末を持ち歩いている。かつてのケータイ時代はケータイが3台、ここ10年近くはスマートフォンが3台に切り替わり、最近ではiPhoneを使うシーンも増えているので、結果的に4台の端末が必ず身の周りにある状態。仕事とは言え、ちょっとどうかと思うけど(笑)、触らないとわからないことも多いので、しかたないですね。
携帯電話会社の回線とおサイフケータイのサービスの関係は、それぞれのキャリアと各サービスの結び付きをそのまま継承している。たとえば、NTTドコモの回線はiD、auはモバイルSuicaといった具合い。ケータイ時代から愛用している人なら、覚えているだろうけど、NTTドコモは当初、ビットワレットの「Edy」(現在の楽天Edy)に注力していたのに対し、auはサービス開始こそ遅れたものの、最初からモバイルSuica狙いで、サービス開始時にきっちりと対応端末を揃えてきた。そう言えば、当初、NTTドコモがモバイルSuica対応予定としていた端末が急遽、非対応になったり、auも対応端末が発売後におサイフケータイの改修(アップデート)が実施されるなんていう話もありました。
iDやモバイルSuicaのほかには、auの回線でQUICPayを利用しているが、これらの内、基本的にもっとも多く利用しているのがQUICPay。理由はカンタンで、ANAのマイルを貯める関係上、支払いをできるだけひとつのクレジットカードに集中させているから。
交通機関は基本キャッシュレス。海外はApple Pay
実際に支払うときの利用シーンについては、電車やバスなどの公共交通機関はモバイルSuica、タクシーはQUICPayとモバイルSuicaを併用している。モバイルSuicaはケータイ時代からの流れだけど、券売機で切符を買う必要がないし、とりあえず、どの路線でもすぐに乗れるのがポイント。
タクシーについては、とにかくおサイフケータイを最優先と考えている。最近ではJapanTaxiなどのサービスで乗車前に決済するしくみが増えたけど、ケータイ時代にいち早くタクシーに導入されたのはiDで、当時はできるだけiDに対応したタクシーを選んで乗っていた。その後、鉄道会社の系列タクシーでSuica対応が増え、QUICPayなどのFeliCa対応サービスも増えたことで、選択の範囲は拡がったけど、今でもタクシーはおサイフケータイ対応が最優先。そのため、申し訳ないけど、ほとんどの車両がおサイフケータイ非対応の個人タクシーは遠慮させてもらうことが多い。
タクシーでおサイフケータイ対応を重視するのは、トラブルというか、ミスを避けたいという考えがあるため。筆者がタクシーに乗車するのは、お酒を飲んだときが多く、現金で支払うと、金額を間違えたり、お財布(本物の方)から現金や領収書、クレジットカードなどを落としてしまうかもしれないから。実は、この考え、iDがタクシーに普及しはじめたとき、ある運転手さんに「私らもお釣りの間違いを減らせるし、お客さんもお財布を落としたりしなくなるので、こういう支払い(おサイフケータイ)の方がいいんですよ」と説明された経験に基づいている。
おサイフケータイで利用する対応サービスは、決まったものしか使わない状態が続いていたんだけど、昨年、Google Payが登場したことで、ちょっと変化があった。Google Payと連携するおサイフケータイのサービスを利用すると、Google Playのクレジットが抽選でもらえるというキャンペーンが実施されたため、対象サービスのひとつであるセブンイレブンのnanacoを導入。それ以来、セブンイレブンでの支払いはnanacoを利用している。やっぱり、こういうキャンペーンは大事ですね(笑)。
スマートフォンを利用した支払いで、もうひとつ利用頻度が増えてきたのがApple Pay。iPhone 7以降の機種はFeliCaが搭載され、Apple Payの支払いサービスが利用できるが、実は海外でもApple Payが利用できるケースが増えている。
海外に出かけたとき、以前はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで、現地通貨のコインを迷いながら支払っていたけど、最近は欧米やアジアでApple Payを利用できるところが増えたため、iPhoneをかざすだけで支払うことができている。国と地域によっては、まだ相手(お店側)も「お? どうやって、支払ってるんだ?」という反応で、興味津々というレベルのこともあるけど、昨年はイギリス・ロンドンでおなじみの2階建てバスにもApple Payで乗車できたりして、かなり利用範囲は拡がってきた印象。
クレジットカードによっては海外でApple Payが利用できないケースもあるようだけど、筆者はApple Payに登録した楽天カードが海外で利用できている。小銭に苦しまなくても済むという意味からも欧米に旅行や出張で出かける人は、Apple Payにクレジットカードを登録しておくことをおすすめしたい。
さて、日常生活での利用については、おサイフケータイが優先だけど、使えない時はクレジットカードが次のチョイス。これは前述のように、支払いをまとめ、マイルを貯めるためで、最近はかなり徹底しているので、現金を使うのはごく一部の店舗や飲み会などで割り勘するときくらい。
クレジットカードは主に航空会社の提携カードを利用しているが、例外もいくつかある。たとえば、携帯電話料金はNTTドコモのdカード、auのau WALLETクレジットカードで支払い、ヨドバシカメラやビックカメラもそれぞれの店舗が発行するクレジットカードを利用している。携帯電話会社については、仕事柄、両社のクレジットカードの内容を理解しておきたいというのもあるが、基本的には自社サービスのポイント還元率が高いときは、そのクレジットカードを利用することが多い。
駐車場というキャッシュレスの壁
おサイフケータイやクレジットカードを使うことで、すっかりキャッシュレス化が進んだ筆者の環境だけど、なかなかキャッシュレス導入が進まず、現金払いを強いられている感があるのが駐車場。
筆者は普段、クルマで移動するため、駐車場を利用することが多い。係員が1人しか居ないような小さいビルの駐車場はともかく、ホテルや映画館といった商業施設が入っているビルなのに、未だにクレジットカードでの支払いに対応していないところがあったりして、驚かされる。
1回あたり2,000円も3,000円も支払うこともあるのに、現金のみっていうのはさすがにどうなんでしょう?
かつて、街中のコインパーキングは硬貨でしか支払いができず、駐車場の前に1,000円札が使える自動販売機があり、お釣りで硬貨を作るため、何本も缶コーヒーを買ったなんてこともあったけど、最近は紙幣での支払いに対応した精算機が主流になってきた。しかし、クレジットカード払いに対応してるところはまだ少数派。
なかには積極的に取り組んでいる企業もあって、パーク24が提供する「Times」ブランドのコインパーキングは、ほとんどの駐車場でクレジットカードでの支払いに対応しているようで、個人的にも利用するときの目安にしている。
最近は少しずつ認知されてきたキャッシュレス。でも、周囲の人たちを見ていると、まだまだ積極的に使っている人は少なく、もっとボクらもいろいろな人が使えるように、わかりやすく解説していかないといけません。特に、ここ数年の海外での普及ぶりは、おサイフケータイで先行していたはずの日本がいつか追い越されてしまうのではないかと心配なくらい。海外のキャッシュレスもいくつか体験してきてましたが、その話はまた別の機会に。