レビュー

「Google Nest Hub」が凄くイイ。画面があるから音声操作が活きる

7型のディスプレイを備えたスマートスピーカー/ディスプレイ「Google Nest Hub」が、6月12日に発売された。これまで海外では「Google Home Hub」と呼ばれていた製品がブランドを変更したもので、ディスプレイを搭載したことで音声だけでなく、タッチ操作に対応。検索結果や動画、写真などをディスプレイに表示できる点が特徴だ。

Google Nest Hub

ディスプレイのサイズは7型で、解像度は1,024×600ドット。ディスプレイは斜めに固定されており、角度を変更することはできない。無線LANはIEEE 802.11b/g/n/acに準拠。Bluetoothにも対応しており、スマートフォンやPCと接続してBluetoothスピーカーとしても利用できる。

本体側面。ディスプレイは斜めに固定されて向きは変更できない
本体底面。Gロゴの下に技適マークも表示

操作ボタン類は背面にまとめられており、背面上部にマイクのオンオフスイッチ、背面の左側に音量ボタンが搭載されている。慣れないうちは背面のボタンがどこにあるかわからず、音量の調整は手間取るかもしれない。なお、Nest Hubの本体初期化は、音量ボタンの中心を長押しし続けるという少し変わった手法になっている。

本体背面。上部にマイクのオンオフスイッチ、左側に音量ボタン
同梱品

本体サイズは178.5×67.3×118mm(幅×奥行き×高さ)、重量は480g。ディスプレイ部分だけを見れば7型クラスのタブレットだが、スタンド部分がついているため、手に持つとずっしりとした感覚がある。とはいえ基本的には据え置きタイプのデバイスなので、片手で十分に持てる程度の重さはさほど気にならない。

手に持ったところ。小型タブレット程度の大きさ

価格は15,120円で、本体カラーはChalk、Charcoal、Aqua、Sandの4種類。Googleのサイトに加えて家電量販店や楽天ブックスなどでも購入が可能だ。

ディスプレイ以外の基本的なスペックはこれまでのGoogle Homeとほとんど変わらないが、このディスプレイの有無が実際の使い勝手では大きな違いを生んでいる。

初期設定はGoogle Homeアプリから。ディスプレイはほぼ使わない

本体の電源を入れると、Google Homeアプリをインストールするよう音声で指示される。Google Homeアプリに表示される未設定のデバイスを選択すれば、あとは画面の指示に従うだけで設定が完了。初めて使う人でも、指示に従えば設定はさほど難しくないだろう。

初期設定画面

ディスプレイにも操作手順は表示されるが、基本的な操作はスマートフォンで進めることになるため、初期設定時にせっかくのディスプレイを使う機会はあまりない。

設定対象のNest Hubかどうかを画面に表示される英数字で確認できる
初期設定が終了するとチュートリアル動画が流れる

残り時間がすぐにわかるタイマーが便利

基本的な操作方法は、Google Homeシリーズとあまり変わらない。「OK, Google」に続いて検索したいフレーズや呼び出したい機能を発声するだけ、なのだが、画面があるとないとではその体験に大きな違いが生まれる。

身近なところで便利なのはタイマーだ。Google Homeでもタイマーは利用頻度の高い機能なのだが、タイマー設定中に残り時間を知るには「今何分?」と聞かなければいけない。

それに対してNest Hubはタイマーを設定すると画面には常に残り時間が表示され、複数設定した場合も1画面に2つ、画面をスライド操作することで、3つ以上でのタイマーも確認できる。

複数のタイマーを表示

なお、同じくディスプレイを備えたAmazonの「Echo Spot」も筆者は利用しているが、こちらは設定したタイマーが一定時間で非表示になってしまい、残り時間を確認するには再度タイマーを呼び出さなければいけない。細かな差ではあるものの、タイマーの利便性としては大きな違いだ。

Google Homeをキッチンに置いて音声タイマーとして利用していた筆者に取って、ディスプレイ搭載のNest Hubは「キッチンに置いたらタイマーがより便利になる」というのが狙いだったのだが、実際にキッチンに置いてみると予想を上回る便利さだった。食材に触れるキッチンの中で手を一切使わずタイマーを設定できるのは非常に便利。これがNest Hubになって残り時間もすぐに確認できるようになり、タイマーとしての使い勝手は飛躍的に向上した。

また、タイマーに限らないが、Nest Hubはタッチディスプレイ操作も可能。タイマーが鳴ってから止める時、音声で「タイマーをストップ」というよりも、手が空いていればタッチ操作のほうが早い。タッチ操作もできることで、より負担のない操作が可能になった。

レシピ機能は魅力的ながら使い勝手に課題

キッチン向けの機能としてNest Hubはレシピ機能も備えている。「豚肉と玉ねぎのレシピを教えて」というように、使いたい材料を指定してレシピの検索が可能だ。

レシピ機能。使いたい材料に加えて「レシピを教えて」で検索できる

表示されたレシピはタッチで選択するか、表示されたレシピ名を読み上げることで決定。材料や手順を確認しながら料理を進めることができるほか、気になるレシピは「マイレシピ」に登録してあとから呼び出すこともできる。

レシピは画面下部に表示されるフレーズを読み上げるか、画面をタッチすることで操作が可能。「次のステップ」というフレーズを何度も読み上げるのが面倒、という時はタッチで画面を進めてもいい。

画面下部のフレーズを読み上げるかタッチで操作できる

キッチンでGoogle Homeを活用している身としては興味深い機能なのだが、いざ使ってみると課題も多い。利用できるレシピはNest Hub向けに最適化されたわけではなくWebに掲載された他社サイトのレシピを使っているため、レシピによってばらつきがあるのだ。

Nest Hubではレシピは食材と量が1つの文章にまとめて表示されるが、文中に量が表示されないレシピの場合、Nest Hubで表示されるのは材料名のみで量がわからないことがある。

また、味付けのだし汁やソースなど、事前に混ぜておくようなレシピでは「混ぜておいたBを使って」といった表記があるのだが、具体的にそのBがどれだかわからないということもあった。

食材の分量がわからないレシピ。「Bの材料」もNest Hubでは確認できない
文章に食材の分量が含まれていればNest Hubでも分量がわかる

レシピの表示はNest Hub画面のみのため、スマートフォンで事前に見ておくことも難しい。

筆者が料理する場合、スマホやPCで気になるレシピを事前に探しておき、材料や手順などを一通り読み込んだ上で、実際に作る時にスマホなどでレシピを表示しながら料理する。しかし、Nest Hubの場合はレシピ検索するところから本体を使わなければいけないので、やや使いにくく感じてしまう。

基本的には音声のみで操作できるが、レシピ選択はレシピ名を読み上げなければいけないのもやや面倒。レシピ名が似ていたり、料理の名前が長かったりすると、目的のレシピを表示させるのも一苦労だ。

もちろん、画面をタッチすれば解決するのだが、食材を触っている料理中だからこそ音声だけで操作を完結したい。

料理をしながらレシピを操作できるという点では非常に将来性を感じるのだが、現時点では日常的に使いやすいレベルとは言いがたい。気に入ったレシピをスマートフォンやPCから事前に登録できる、選択したいレシピは数字で選べるといった機能向上に期待したい。

キャスト機能で動画やポッドキャストを「ながら」で楽しむ

レシピ機能そのものの使い勝手は今一歩なものの、キッチンの相棒として推したいのがNest Hubのキャスト機能だ。他のGoogle Homeと同様、Nest HubではChromecast対応アプリからのキャストを受けることができるが、音声だけでなく画面も表示できるために使い方が広がる。

Google Homeアプリからキャスト

Nest Hubは標準でHuluやYouTube、ビデオパスといった動画サービスに対応しているのだが、音声で任意の動画を呼び出すのはなかなか難しい。キャストであれば好きなコンテンツを指定して表示できるので、見たいコンテンツを呼び出す手間を省くことができる。

dアニメビデオをキャスト

筆者の場合、食器の洗い物や下ごしらえのような単純作業時は、キャスト機能を使ってNest Hubに好きな動画を表示しながら作業している。皿洗いなどの雑用に近い作業も、映画やドラマを見ながらであれば楽しく進められる。ただし、字幕の作品はつい画面を見てしまって作業にならないので、できるだけ邦画や国内ドラマ、海外作品の場合は吹き替え版を選ぶようにしている。

実際に調理を始めた時などあまり画面を見られない場合は、ポッドキャストもお勧めだ。基本的に画面が存在しないポッドキャストなら、コンテンツに気を取られすぎずに楽しみながら料理を並行して進められる。

ポッドキャストをキャスト。アプリは有料の「Pocket Casts」を利用

動画は音声だけでなくタッチでも操作でき、スライドバーや30秒送り/戻し、一時停止などの操作も可能。また、声での操作では、一時停止や再生はもちろん、「1分戻る」「10分戻る」など任意の時間を指定することも可能だ。

なお、動画とタイマーは排他になっており、タイマーを起動すると動画の再生は止まってしまうが「動画を再開」などと発声すると続きを視聴できる。できればタイマーを表示しつつ動画も楽しみたいところだが、このあたりは今後のバージョンアップに期待したい。音声のみのポッドキャストであれば、タイマー設定時でも再生可能だ。

また、利用しているサービスで試したところ、YouTubeやHulu、dビデオ、dTVなどは利用できたが、NetflixはNest Hubにはキャストできなかった。オリジナルの人気コンテンツを多数取りそろえているNetflixだけに、Nest Hubにもぜひ対応して欲しい。

レシピ利用という点でもキャストは便利。スマートフォンから作りたいレシピをNest Hubに表示し、より大きな画面でレシピの内容を確認できる。

お気に入りのレシピサイトをキャストでNest Hubに表示

筆者宅では強力マグネットで取り付けられる山崎実業「マグネットスパイスラック」をキッチンに設置し、この中にNest Hubを置いている。キッチンの構造にもよるが、目の高さにNest Hubを置けるため、手元を確認するスマートフォンよりも格段に使いやすい。Nest Hubをキッチンで活用したい人にはお勧めのアイテムだ。

強力マグネットのラックで目の高さにNest Hubを設置

Google フォトの活用で好きな写真を自動表示するフォトフレームに

ディスプレイを搭載したNest Hubならではの機能としてGoogle フォトの表示機能もあげられる。機能自体はChromecastを利用してテレビに表示するのと大きく変わらないのだが、一番の違いは「ホーム画面の写真をGoogle フォトに設定できる」ことだろう。

Nest Hubのホーム画面をGoogle フォトに設定できる

音声操作でGoogle フォトの写真を表示することも可能なのだが、見たい写真を音声で指定するのはなかなか難しい。「ラーメンの写真」のような単語であれば検索しやすいが、Google フォトでは作成しておいたアルバム名を、音声のみでピンポイントに指定することはできないようだ。

スマホからのキャスト機能でGoogle フォトの指定アルバムを表示できるが、画面サイズは7型とスマホと大差ないので、あまり使いみちはないかもしれない。

一方、Nest Hubのホーム画面には、任意のアルバムや人物を指定して表示できる。例えば夫婦でGoogle フォトのアルバムを共有して子供やペットの写真をアップしておき、それをホーム画面に設定すれば、いつでも子供やペット写真が楽しめるフォトフレームとして活用できる。

孫の顔を楽しみにしている実家にNest Hubを設定しておき、常に孫の顔を見ることができる、という使い方もできる。

任意の人物の写真やアルバムを指定してフォトフレームに

わざわざアルバムにアップロードするのが面倒、という人は、Google フォトの顔認識機能で子供の顔を選び、それを家族の共有アルバムへ自動アップロードする設定にしておけば、家族が撮影した子供の顔がすべて自動的にGoogle フォトへ取り込まれる。

便利でいいのだが、子供の顔さえ認識してしまえばあらゆる写真がアップロードされてしまうので使い方には注意が必要だ。

検索結果もディスプレイで可視化されることでより便利に

音声検索もディスプレイがあることでより利便性が上がる。例えば天気予報は音声の読み上げに加え、その日の天気を1時間ごとに表示してくれるため、「何時頃に雨が降るのか」がわかる。予定も画面に表示されるため内容を確認しやすい。

天気予報は1時間単位で表示

ニュースについてもいくつかのサービスは動画に対応。アプリの「スマートディスプレイで視聴できる動画です」と表示されたニュースを選ぶと、音声に加えてニュース映像が楽しめる。

動画対応のニュース
映像付きでニュースを楽しめる

操作面でも、時間帯に応じてお勧めの発声方法を画面に表示したり、「アシスタントができること」という機能で、どのようなフレーズで機能を呼び出せるのかを画面で確認できる。

スマートスピーカーは便利だが「何を聞いていいのかわからない」ということも多く、画面で操作を提案してくれるのはありがたい。

お勧め操作方法の提案や操作ガイド
「アシスタントができること」の一例
表示された操作をタッチで選ぶこともできる

発声した音声の認識結果がリアルタイムに表示されるのも便利だ。

Google Homeを使っていると、自分の発声とは異なるフレーズで認識されることも少なくないが、Nest Hubでは「どういう言葉で認識されたか」がわかるため、自分の中で理解しやすい。筆者の場合「味噌」の発音が高確率で「リスト」と認識されてしまうのだが、テキストで認識することで「ああ、このリストは味噌だったな」ということが思い出しやすくなっている。

この認識結果を利用して、Nest Hubの言語設定を英語にしてみるのもお勧めだ。自分の発音がどのように認識されているのかがリアルタイムにわかるので、ちょっとした英語の勉強になる。英語が得意で無くても、「Ok Google, Timer 3 minutes」程度のフレーズで十分使いこなせる。また、対面でないこともあって発音やフレーズの間違いもほとんど気にならないので、思い切って英語を発音できるのもメリットだ。

英語設定のNest Hubでタイマーを操作。ちょっとしたフレーズでも英語の勉強になる

ディスプレイ搭載で広がるスマートスピーカーの魅力

これまでのGoogle Homeは音声でながら操作ができるのが便利だったものの、検索結果がすべて音声で流れるため、その場で聞き取って記憶しなければならなかったり、そもそもどういう操作をすればいいのかがわからない、という課題もあった。

ディスプレイ搭載のNest Hubであればこうした問題を解決できる。上記の通り検索結果を画面で確認できると利便性は大いに高まるし、音声だけでなく動画や写真といったコンテンツも楽しめるのはディスプレイ搭載モデルならではのメリットだ。

ディスプレイを搭載したスマートスピーカーはEcho Show/SpotやClova Deskといった製品も存在し、1万円を切る価格で販売されるEcho Show 5も6月24日に発売予定だ。特にEcho Show 5は、Nest Hubより5,000円安く直接の競合機種となりそうだが、個人的にはタイマーの使いやすさ、キャスト機能でさまざまなコンテンツを楽しめる点において、Nest Hubに魅力を感じている。

なお、海外ではより大画面かつカメラを搭載した上位機「Nest Hub Max」も発表されている。こちらはビデオチャットにも対応しており、コンテンツに加えてコミュニケーション機能も強化されている。ぜひ日本での展開も期待したい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝