ミニレビュー

屋外最強? ミリタリーテイストなガーミン「tactix 7」を買った

ガーミンのスマートウォッチ「tactix 7 PRO Sapphire Dual Power」(以降tactix 7)を買いました。購入価格は170,500円です。

少し前から、ガーミンの「fēnix 7X」が欲しくなり悩んでいたのですが、そこにfēnixシリーズをベースとしたミリタリーモデルのtactix 7が発表されました。主に外観の変更とミリタリー向けの機能がいくつか追加され、ミルスペックの耐久性も備えるモデルです。

元々、スマホがあるので腕時計はいらないかなと思い始めていたのですが、犬の散歩をするようになると、片手が塞がっている状態で時間を見るのはやはり腕時計のほうが楽ですし、スマートウォッチは表示される情報量が普通の時計より多く、ヘルスケア機能も充実していることから使うようになりました。

これまでApple Watchを使っていましたが、バッテリー充電がほぼ毎日必須なのと、より大きな画面のもの、できればより頑丈なものが欲しいと思っていました。tactix 7では、これらがかなり改善されることを期待して購入しました。

無骨なデザインが魅力

tactix 7は、まずデザインから気に入りました。fēnix 7Xからは主にベゼル部分が変わっているのですが、飾り気のない無骨なスタイルに変更されています。これがまずピンポイントで刺さりました。ボタン周りのデザインも滑り止め加工のようなものが施され、力強いイメージです。

fēnix 7Xとは主にベゼルのデザインが違います
ボタン類のデザインも異なります

価格は、fēnix 7Xのチタンバンドモデルと同じです。tactix 7はナイロンバンドと交換用シリコンバンドが付いて同じ価格なので、本体の価格としてはtactix 7のほうが若干高いようです。ガーミンの純正チタンバンドは別売もしていますが3万円を超えます。

ちなみに、標準ではナイロンバンドが装着されていますが、これがなかなかかっこ良く、気に入りました。バンドは特別な工具を使うことなく簡単に交換可能なのもポイントです。シリコンバンドにも簡単に交換できます。ナイロンバンドはカッコイイのですが、汚れが染みこみやすいと思うので、普段はシリコンバンドを使っています。

画面サイズは直径1.4型(35.56mm)となっており、かなり大きく見やすいです。本体の厚みは14.9mmと、薄いほうではありませんので、人によってはちょっと大きすぎると感じるかもしれません。個人的にはこのゴツい感じがむしろアリなのですが。

画面は大きく見やすいです。ウォッチフェイスも好みのものに変えられます
厚みはけっこうあります。そのかわり頑丈です

バッテリー駆動に加え、ソーラー充電も併用する「Dual Power」も特徴の一つです。Apple Watchは、毎日充電が必要という点が不満でした。tactix 7はバッテリーとソーラー充電を併用することでさらに使用時間を延ばすことができるスマートウォッチです。

購入直後の設定では、バッテリーだけなら約28日間、ソーラー充電で最大9日間の駆動時間が得られます。ただし、ソーラー充電は快晴50,000ルクスの条件で1日3時間屋外で着用していることが前提です。実際には曇りの日などもあり、一日中外にいるわけでもないので、ソーラー充電を最大限活用するのは難しそうですが、毎日少しずつバッテリー駆動時間を補助してくれるというイメージです。

ソーラー充電の履歴をみることができます

バッテリー駆動時間は設定によってかなり変わります。GPSを頻繁に使う「GPSモード」設定では約89時間+33時間など、駆動時間は短めになりますが、筆者の使い方ではGPSはそこまで利用頻度を上げない設定で、就寝時に心拍を測定する設定にしたところ、フル充電時に画面表示上は「20日」と表示されていました。必要十分な駆動時間です。バッテリー残量が33%でも残り日数が「7日」などと表示されるのは実に頼もしく、これで「毎日充電」という儀式からは解放されました。

バッテリー残量33%でも7日使えます
充電端子はむき出しです
むき出しは気になるのでサードパーティ製のキャップも売られていますので装着してみました。ただ、完全防水なわけではないので、かえって手洗い時などにキャップのなかに水が入ってしまって乾かないまま、などもありえるので悩ましいところです

ディスプレイはアウトドア全振り仕様

搭載されているディスプレイにも特徴があります。ディスプレイはスマートウォッチによく使われるAMOLEDではなく、「半透過メモリインピクセル(MIP)」が使われています。AMOLEDも最近では非常に明るく発光するため屋外でもかなり見やすいですが、tactix7の半透過ディスプレイは、そもそも自発光させなくても視認できるのが特徴です。

太陽光を光源代わりに使うもので、自発光せずとも十分な視認性を得られます。そのぶんバッテリーを消費しないメリットがあります。屋外ならばまず問題無く画面の情報を確認できます。

バックライトがなくても屋外でクッキリみやすいです

また、「MIP」はピクセルを一度表示すると消費電力を使わずにピクセルの表示を維持できます。文字などの画像が書き換わったときだけに電力を消費しますので、表示が変わらない場合は電力を消費せず、消費電力が低くなります。反面、Apple Watchのようにアニメーションを多用したグラフィカルなウォッチフェイスなどは望めませんので、このあたりは消費電力とのトレードオフです。

いずれもアウトドア特化という印象で、屋外利用ではまさに最強レベルのスマートウォッチではないかと感じています。

ただし、屋内では若干そのメリットが弱まります。半透過ディスプレイの宿命として、太陽光がない屋内ではあまり視認性がよくありません。蛍光灯に直接照らされている状態なら比較的普通に見られますが、少しでも角度が変わると、バックライトが切れた液晶ディスプレイのように暗く見えてしまいます。

例えば、仰向けに寝ころがりながら腕時計を確認しようとすると、蛍光灯の光が入らないのでほぼ文字盤が見えません。なので結局、バックライト機能を使うことになります。また、お世辞にも発色はよくありません。このあたりは数あるAMOLED搭載スマートウォッチに軍配があがります。

また、バックライドはボタンや画面をタッチして点灯させるほか、腕を上げて時計を見るモーションをすると自動点灯する機能がありますが、標準ではオフになっています。筆者は最初、この機能がないのかと思ったのですが、オフになっていただけでした。ミリタリーモデルですので、もしかしたら夜間戦闘の最中に勝手にバックライトが点灯するような状況を好まない、ということかもしれません。

自動点灯機能には常時有効のほか、「日没以降有効」という項目もあり、日没時間と連動し、暗くなってからのみバックライトを使うということが可能です。無駄な消費電力を極力抑え、バッテリーを最大限に活かす設計思想が覗えます。

また、忘れてはいけないのは、「サファイアガラス」です。高価格帯の時計にはよく使われる素材ですが、本製品の風防もサファイアガラスが採用されています。これまでもサファイアガラスを採用した時計は持っていましたが、ベゼルなどがボロボロになってもサファイアガラスには一切キズがつきませんでしたので、その強度は信頼しています。

サファイアガラスも強い衝撃を受けると割れてしまうことがあるようですが、擦り傷には相当強いというのは実感しています。もちろん絶対にキズが付かないなどということはないと思いますが、価格相応の価値はあると感じています。

ちなみに、形状はベゼルのデザイン以外fēnix 7Xと同じなので、fēnix 7X用に発売されているプロテクターが装着できました。tactix7専用アクセサリは現時点であまりないようです。

fēnix 7X用プロテクターを装着したところ。デザインが異なるのでベゼル周りだけフィットしませんが、プロテクターとしての役割は十分です。デザイン性は損なわれますが

LEDライト搭載が地味にうれしい

このモデルはLEDライトを内蔵しているのも気に入っているところです。これまで夜に犬の散歩をするときには、スマホのライトを使っていました。ただ、これだとスマホを手に握っていないといけないですし、犬の排泄物処理のときには両手を使いたいです。懐中電灯も同じ問題がありますし、そもそも持ち歩くアイテムをあまり増やしたくありません。

tactix 7ではボタンをダブルクリックするだけでLEDライトを利用できます。これならずっと手に握っている必要はありませんし、比較的両手も使いやすいです。夜にクルマの中で捜し物をするような場合など、不意にライトが必要になった場合にすぐに点灯可能なのが助かります。

光量調節もできます
屋外でLEDを点灯したところ

正直なところ、LEDライト機能については「多少でも照らしてくれればOK」程度に考えていたのですが、意外と本格的だったのも嬉しい誤算です。ライトの明るさも調整できますし、ライトの照射範囲が思ったよりもかなり広く、実用的に感じました。ライトを最も明るい状態にしてもバッテリーは6時間ほど持つ表示がでていますので、駆動時間の面でもあまり障害にならなさそうです。ライトの発光色も切替え可能で、白色と緑色を選択できます。

グリーンのライトを点灯したところ

機能としては気圧高度計を国土地理院の「DEM(数値標高モデル)」によって校正できるところも気に入っています。気圧高度計だけで高度を測定すると、気圧の急激な変化にも対応できず、どうしても精度が低くなってしまうのですが、DEMを使って校正を行なうことで、国土地理院が計測した高度情報をGPSの位置情報と合わせて利用できるようになります。一度校正してしまえばその後は移動しても気圧高度計によって高度の上下を計測できます。

山などにいったとき、すぐ高度がわかるのはテンションがあがります
DEMを使った校正が可能です

これがなかなか正確で、たとえば自宅の1階の高度はDEM上は14mですが、tactix7上でも同じ値が表示されます。そこから3階まで登ると18mと表示されるので、校正さえしてあれば気圧高度計による計測もなかなか正確だと思われます。位置情報からDEMの値を呼び出しているので、位置情報が正確であれば当然の結果なのですが、気圧高度計だけだと数十メートルの誤差が出ることがあるので精度は段違いです。校正していない気圧高度では、自宅の高度は80mと表示されたこともありました。

高度の履歴もわかります
個人的には天気の情報もよく使います。体感温度も表示してくれて便利です

キルスイッチ・ステルスモードなどミリタリー感を堪能

その他にも、「キルスイッチ」や、「ステルスモード」「ナイトビジョンモード」など、ミリタリーな機能も搭載されています。

捕虜になりそうな時に使うと便利なキルスイッチは、使用するとtactix7を即座に初期化できます。敵に情報を渡さないための機能です。スパイ映画のようにスイッチを入れたらその場でショートして電気回路を破壊する、みたいな物騒なものではありません。ソフトウェア的に「キル」されるだけなので再利用可能です。ショートカットも設定できて、確実に素速くキルできる便利機能ですが、誤って使うとただの自爆スイッチですので、筆者は設定していません。捕虜になる予定もありませんが。

キルスイッチ

ステルスモードはGPS位置の保存や共有を停止し、ワイヤレス接続や通信も無効にする無線封鎖状態にする機能です。通信をすると位置を探知される可能性があるのでそれを防いだりできます。名前はカッコイイですが日常生活で使うシーンは思いつきません。

ステルスモードはステルス爆撃機っぽいアイコンです

ナイトビジョンモードは、ナイトビジョンを持っていないので使う予定はありませんが、サバゲーをやっている方には普通に便利な機能かもしれません。

ナイトビジョンモードをオンにすると、LEDライトなどの使用も制限されます

ミリタリーモデルということで、明らかに一般人は使うことがない機能も満載ですが、ミルスペックの堅牢性、バッテリー駆動時間の長さなど、非常に頼りになるスマートウォッチという印象で、本職の自衛官が使っても有効活用できそうです。

基本的に一般的なスマートウォッチに搭載されているヘルスケア機能は網羅されていますし、それ以外の機能も満載でまだまだ使いこなしてはいませんが、長く付き合えそうなスマートウォッチです。

正直なところ、17万円のスマートウォッチを買うことになるとは思っていませんでした。スマートウォッチはせいぜい5万円前後までで十分……という価値観だったのですが、それだけ他に代えがたい魅力があったのも事実です。ミリタリーテイストなグッズに興味がある人にはお勧めできます。

清宮信志