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フリーランスこそNo1を目指そう。好きなことで生きるためのマインド

会社に属さない働き方「フリーランス」が今ふたたび注目されています。その背景には新型コロナウイルスのパンデミックでリモートワークが普及したこと、副業解禁や労働者の意識の変化などもあるでしょう。

フリーランス人口は現在増加傾向にあると言われていますが、実際にそれだけで生計を立てていくのは難しいという話もよく聞きます。場合によっては専門技術に加え、プロモーションや対人スキルも必要ですが、そういったスキル不足に悩んでいる人も多いと思います。

そんな迷えるフリーランスや、フリーランスをこれから目指そうという方に向けた、フリーランスのノウハウが詰まった書籍「クリエイターのためのフリーランスハック」を6月12日に発売します。

この書籍の著者である映像クリエイターの金泉太一さんに、フリーランスの現状や本書の見どころなどをインタビュー。フリーランスの魅力や今後についても語ってもらいました。

フリーランスを楽しく続けていくノウハウがわかる!「クリエイターのためのフリーランスハック

金泉太一(かないずみ たいち)

ビデオグラファー。Cross Effects主宰。企業VPやMVなど多岐分野で撮影編集をワンストップ制作。DaVinci Resolve オフィシャル認定トレーナー。大学卒業後、カナダのトロントでダンサーとして活動をし、いくつかのMVや多数のイベントに出演。帰国後は広告代理店にて海外事業や飲食、アミューズメント系のセールスプロモーションを担当。故郷の東日本大震災被災後、ビデオグラファーとして独立。映像制作の、「出演する側」「依頼する側」「制作する側」の三側面を経験したからこそできる、ワンストップ制作を得意とする。著書に『Premiere Pro よくばり入門』『DaVinciResolve よくばり入門 18対応』(インプレス刊)がある。

12年でフリーランスという働き方がライトに

――金泉さんはフリーランス歴12年ということですが、12年前と比べてフリーランスを取り巻く環境はどのように変化していますか?

金泉氏:12年前と比べると今はフリーランスになることへのハードルも随分低くなったんじゃないかと思います。もちろん今だってフリーランスになるには、覚悟や気合が必要だと思いますが、働き方に対する意識が変化する中で、選択肢の一つとしてフリーランスを検討する人も増えているように感じます。今は、学ぶための環境も本当に充実していて、あらゆるコンテンツから専門スキルやビジネススキルを磨けるという意味でも昔と比べてフリーランスという働き方がライトなものになってきているように思います。

――12年の中で仕事に対する心境の変化はありましたか? またこれまで続けてこられた理由も教えてください。

金泉氏:仕事に対するマインドという意味では、独立当初から今まで変化はあまりないように思います。独立初年度から人脈作りに力を入れていましたし、「常に提案する」スタンスを意識するなど、けっこう前のめりで動けていたと思います。あとは「おもてなし」というか、何事もプラス1のパフォーマンスを心がけて、クライアントに喜んでいただけるように努めるということもずっとやってきました。

4、5年くらい前に教育分野や自分のコミュニティ作りに力を入れ始めました。それまでもGiveの精神というものを大事にしてきていたのですが、そのタイミングでその気持ちがさらに大きくなって「GiveGiveGive」という感じで、クライアントだけでなく、仕事仲間やコミュニティに対しても、何かできることはないかといつも考えています。

映像はチームで制作することも多いのですが、スキルやメンタルに関してなど、自分が提供できるものは提供して、チーム全体が強くなればできることも増えますし、みんながハッピーな環境というのが一番だと思います。

そういったマインドでいたからこそ、今までこの仕事をフリーランスという働き方で続けられているんだと感じています。

本書より「フリーランスだからこそできる『プラス1』戦略」

運をつかむためには継続力が大事

――コロナ以降フリーランスの人口も増加傾向にあります。副業フリーランスも増えている今、業界的にも競争が激しくなっているのでしょうか。

金泉氏:そうですね、そういう話はよく聞きます。学びやすい環境も整っていますし、ライバルという意味ではフリーランスだけでなくインハウスのクリエイターもたくさんいるので、一般的には競争は激しくなっていると思います。ただ、私自身の体感としてはそこまで感じていないです。

この仕事を10年以上続けていると、長い付き合いのクライアントさんが何社もあって変わらず仕事をいただけているというのが大きいかもしれません。もしかしたらクライアントさんの元にもたくさんのクリエイターが営業にきているのかもしれませんが、信頼関係があるからこそ浮気はされないだろうなという自信があります(笑)。

その関係性が弱くなった途端にライバル達が押し寄せてくる可能性はあると思うので、信頼関係や絆というものは大事ですね。

――フリーランスは軌道に乗るまでが本当に大変という印象です。前職の延長で独立した方はノウハウやクライアントにも困らないかもしれませんが、独学でスキルを磨いた先のフリーランスは最初の1、2年で挫折する人も少なくないのではないでしょうか。

金泉氏:そうですね。最初はしんどい思いをする人も少なくないと思います。スタートダッシュでこけてしまうと、メンタル的にも「この先これがずっと続くのか」と不安に思って挫折してしまうこともあるかもしれません。

仕事が獲得できるか、上手くいくかというのは運みたいなものもあると思います。ただ、その運を自分でつかむためにどれだけ動けるか、その継続力というのが大事だと思っています。1つの運をつかむために10回動けるか、100回動けるか。10回動いてみてダメだったとしても、運が悪かったとあきらめないで、じゃあ100回動いてみるか。それで何かつかめたらラッキーというくらいのモチベーションでいるといいと思っています。

私自身は独立初年度、プライベートを含めて年間で140本くらいの映像を作ってSNSに公開しつつ、身内や知人に自分の仕事を周知することも積極的に行なっていました。これまでの12年で考えると、大変だったこともたくさんありますが継続力があったことで乗り越えられたと思っています。

フリーランスになって1、2年で納得のいく結果を出せなかったとしても継続してみる、継続できたらそれは挫折にはならないという考え方でいるのはどうでしょうか。

本書より、金泉氏のお仕事年表

――映像制作のスキルに関してはどこでノウハウを学んだのでしょうか。

金泉氏:独立当初、映像制作のスキルについては師事する人がいなかったので、海外のコンテンツで学んでいました。当時は日本語のコンテンツが少なかったのですが、幸いなことに海外に住んでいた経験から英語が得意だったので、海外の動画などを見てスキルを学び、それを踏まえて自分の作品を作るということをやっていました。

書籍にも書いていますが、掛け合わせという感じで「英語×映像クリエイター」というのが後々自分の強みにもなって海外で大きなプロジェクトに関わることができました。

――ご自身のYouTubeでもチュートリアル動画を公開されていますね。参考にしている人も多いのではないでしょうか。

金泉氏:数は少ないですが、いくつかチュートリアル動画を出しています。たまに「こういう動画作りたいんですけどどうすればいいですか」っていう相談があって、それを解決する形でチュートリアル動画を作るということもありました。

「結婚式のオープニングで実写を漫画風に演出したい」という相談のもと制作した動画

依頼したいときに最初に思い浮かべる存在を目指す

――書籍の中でフリーランスの受注戦略やメンタルリフレッシュ方法など、たくさんの「ハック」を紹介いただきました。金泉さんの中で特に大切にしているハックは何でしょうか。

金泉氏:どれも大事なことなんですが、エピソード込みでいうなら「No.1を目指す」というものでしょうか。これは技術やセンスがNo.1という話ではなくて、「クライアントにとってのNo.1を目指す」という話です。

クライアントが映像制作を依頼したいとなったときに、最初に思い浮かべる存在=No.1を目標に活動するとうことです。

本書より「Only1ではなくNo.1を目指さなければ仕事が取れない理由を知ろう」

エピソードというのは、私が広告代理店で働いていたときまで話がさかのぼるんですが……当時、勤めていた会社の下請けとしていろんな方が営業に来られていて、その中に毎日毎日、それも同じ時間に営業に来る人がいたんです。営業というより「今日は特にお話があるわけじゃないんですが、ちょっと顔だけでも出させてもらいました」という感じですね。

最初のうちは、対応する人も「依頼する仕事が今はなく……」という感じで、対応に困っていた部分もあったと思います。ただ、それが毎日続いてだんだんと周りも「あの人毎日すごいな」「話をしてみようか」と心を開いていって、最終的にはその人にすごい数の依頼をすることになったんですよ。その人が来る時間になると、仕事の有無に関係なく相談ごとがある人の列ができるっていう(笑)。

これがNo.1の現象ですよね。何か相談したい、依頼したいとなったときにいつの間にか思い浮かべる人になっている、仕事においてすごく大事なことだと思います。

――書籍の中でクライアントに喜ばれるポートフォリオについても触れていましたが、実際に金泉さんのポートフォリオも一部見せていただけますか?

金泉氏:ポートフォリオ=提案書という考え方で、クライアントさんから色合いについての相談があったら、過去作品を色ごとに分けて、Greenだったらこういう雰囲気、Blueだったらこういう雰囲気になりますという提案をすることがあります。

季節感を出したいときなども、春だったらこんな感じ、夏だったらこんな感じはどうですかと作品を見やすく並べておくと、イメージしやすいですよね。依頼者に喜んでもらえる、問題解決ができるポートフォリオ(提案書)を意識しています。

色ごとに過去作品を並べたポートフォリオの一部

――最後に金泉さんの今後の目標についても教えてください。

金泉氏:今後も仲間を増やしていきたいですね。同業やそれ以外でも友達のように切磋琢磨し合える仲間がいると、モチベーションも違います。特にフリーランスって「一人で戦わないと」っていう意識を持った人が多いのですが、ときに励まし合ったり意見を交換したり、お互いを目標にし合ったりすることで、楽しみながら成長できると思います。

フリーランスを12年も続けていると、年々肩書がどんどん増えていって……オフィシャルトレーナー、著者など実績としてはすごく喜ばしいことなんですが、私自身は変わっていないのに周りからはなんだか「すごい人」に見られてしまう。もっと気軽に声をかけてほしいし会いに来てほしいのに、悪い意味で権威性のようなものがついて、遠慮されていると感じることがあります。

だから最近は趣味の車についての動画なども公開して、プライベートな部分をもっと見せていこうと思っています。中身を知ってもらえたら、「なんだ、ただのゆるいおじさんじゃん」ってもっと身近な存在になれるかなと(笑)。

そうやっていろんな人と知り合って仲間を増やしていけたらと思っています。

クリエイターのためのフリーランスハック

・価格:1,650円
・発売日:2024年6月12日
・ページ数:192ページ
・サイズ:A5判
・著者:金泉太一
内容
第1章 フリーランスってどうなの!? 12年目のクリエイターが実態教えます
第2章 フリーランス1年生 10年先を見据えたブレない土台を作ろう
第3章 いざ仕事を獲得するために! 受注戦略を極めよう
第4章 メンタルコントロールを学んでQOFを上げていこう
第5章 クリエイティブ系フリーランスのお仕事年表
第6章 これからどうなる? フリーランスの未来