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消費電力1/100へ 万博NTTパビリオンはIOWN進化体験場

NTTパビリオンのスタッフユニフォーム

NTTは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に出展するNTTパビリオンの概要を発表した。普及に取り組んでいる光通信技術「IOWN」を全面的に採用し、未来の活用方法を提案する。また、万博の会場全体のインフラとしてIOWNが敷設され、各社から会場内外で実装されるユースケースも披露される。

NTTパビリオンはゾーン1~3の3つの建物で構成。テーマは「Parallel Travel」。ツアー形式で、1回最大70名、所要時間は20分。ゾーン1は、通信技術の歴史やコミュニケーションの進化を振り返る内容で、展示全体のプロローグとして、今はまだ埋めきれていない“隔たり”も表現されるという。

NTTパビリオン

ゾーン2はメイン施設で、3D空間伝送の体験が提供される。これは、高速大容量・低遅延・低消費電力というIOWNのメリットを最大限活用したもの。NTTの「動的3D空間伝送再現技術」と「触覚振動音場提示技術」を活用し、吹田市にある万博記念公園の会場でPerfumeがライブパフォーマンスを披露、その3次元空間データや振動データが、IOWNにより高速大容量・低遅延で大阪・夢洲の万博会場にリアルタイムに伝送・再現されることで、史上初の3D空間ライブパフォーマンスを実現する。

ゾーン2、3D空間伝送の体験
Perfume

他会場で行なわれるパフォーマンスが空間ごと伝送され楽しめるというコンセプトで、来場者は3Dグラスを装着し、眼前のパビリオンのステージと遠隔地がつながる演出を楽しめる。なお、リアルタイム3D空間伝送を使ったライブパフォーマンスは万博会期前の4月2日に実施され、万博会期中はこの模様を収録したデータを使い3D空間伝送を追体験するという形になる。

ゾーン3は「Another Me」として来場者一人ひとりにフォーカス。入場時にスキャンされるデータから分身となるデータが作られ、スクリーンの中で自律的に歩き出し、言葉や文化の違いを超えてコミュニケーションをはかる様子を見ることで、自分の新たな可能性に気付けるという。

ユニフォームの空調服バージョン

このほか、デジタルツインとして「バーチャルNTTパビリオン」も用意。バーチャル版独自要素として、ゾーン3の「Another Me」をコンテンツにした「Another Me Planet」が用意される。ここでは、自分自身の分身「Another Me」を手元のスマートデバイスで生成でき、今はない未来の職に就いたAnother Meとの対話が楽しめる。合成音声にはNTT研究所の合成技術が、会話にはNTTのLLM「tsuzumi」が使われる。

バーチャルNTTパビリオン
Another Me Planet

パートナーのユースケース(一部)

低消費電力のIOWNコンピューティング領域も加速

NTTパビリオンは、技術的にはIOWNを全面的に活用したものになる。展示や演出以外でも、光電融合デバイスとして2026年度に商用化予定の「IOWN光コンピューティング」が世界初のサーバー実装型で投入され、パビリオンの展示システムの処理に用いられる。光電融合デバイスは最終的に現在の1/100という大幅な低消費電力化を目標に掲げており、今回投入の「IOWN光コンピューティング」はその先駆として、従来の1/8の低消費電力化を実現する。

光電融合デバイスの適用領域は、データーセンター間やサーバー間といったネットワーク領域から、今後はコンピューティング領域にシフトしていく。ボード間接続(IOWN 2.0)、パッケージ間接続(IOWN 3.0)、そしてダイ間接続(IOWN 4.0)と、微細化していく方向の進化が描かれている。「IOWN 2.0」に位置づけられる「IOWN光コンピューティング」は、これまで「DCI」(Data Centric Infrastructure)と呼ばれてきたもので、万博への投入に合わせて分かりやすい名称に変更されたものとなる。

ロードマップと電力消費
IOWN 2.0「IOWN光コンピューティング」

「IOWN光コンピューティングをサーバーとして実装したのがメッセージ。いよいよ、消費電力1/100への取り組みが始まったことの宣言だ」(NTT島田社長)とし、IOWNがコンピューティング領域でも加速していく様子が語られている。なお、NTTはデータセンターオペレーターとして世界第3位の規模を誇っており、電力消費の増加に対して、再生可能エネルギーの活用やIOWNによる低消費電力化を適用していく方針。

NTTは万博のパビリオンについてIOWNのユースケースや価値を改めて認知してもらう場と位置づけるが、裏方として活躍する、光電融合デバイスによる「低消費電力のIOWN」という側面も訴求していく。

NTT島田社長