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カードのタッチ決済が1日券 江ノ電ではじまる「Pass Case」で乗車+街の活性化
2025年3月14日 13:51
三井住友カードは、クレジットカードなどのタッチ決済による公共交通機関向けソリューション「stera transit」の基盤を展開した「stera transit MaaSプラットフォーム」の稼働を開始した。
あわせて、このMaaSプラットフォームを活用するサービスとして、3月13日より、利用者向け総合交通アプリ「Pass Case」の提供を開始した。第1弾として、江ノ島電鉄の江ノ電1日乗車券「のりおりくん」が採用。その狙いや今後の展開について聞いた。
国内共通の公共交通事業者向けMaaSプラットフォーム
stera transitは、2020年の導入開始以降、導入する公共交通機関が順調に増えており、2024年度までに関西圏や首都圏の鉄道事業者を含めて180社、2025年度には230社への導入が見込まれている。
三井住友カード Transit事業推進部長の石塚雅敏氏によれば、現在の利用者数は月間約350万件。今後の対応事業者の拡大や利用者の認知向上などにより、数年後は月間数億件レベルにまで拡大すると見込んでいる。また、これまでに183カ国のカードが利用されているとのことで、国内はもとより訪日外国人観光客の利用も大きく伸びている。
そして、stera transitの導入や利用者の増加によって、公共交通事業者をまたいだ利用者のデータ分析なども交えつつ、収入の安定化やコスト効率化、沿線・地域の活性化や発展にも貢献を目指す。そのため、stera transitのプラットフォームを発展させた「stera transit MaaSプラットフォーム」を導入する。
stera transit MaaSプラットフォームは、企画乗車券、定期券、往復割引券、住民向け割引サービスなど、様々な乗車に対応するサービスを、全国共通のプラットフォームとして公共交通事業者に提供する。
提供するサービスの共通機能は、公共交通事業者が独自に利用しているアプリ、経路検索などの交通関連アプリ、地域の観光アプリや飲食アプリ、旅行予約アプリなどへの搭載も目指している。異なるアプリに共通機能を展開することで、利用者は決済手段と移動手段が一本化され利便性が向上するとともに、公共交通事業者の従業員の負担軽減、地域経済の活性化につながるとメリットを強調した。
Pass Caseアプリは江ノ電の「のりおりくん」からスタート
三井住友カードのMaaSアプリ「Pass Case」は、stera transit MaaSプラットフォームを活用する最初のサービスとなる。日本全国をまたがる交通サービスであるstera transitで利用できる日本中のチケットをケースに入れ、交通機関をまたいだ様々な移動に利用できる、そういった想いを込めてPass Caseと名付けたという。
Pass Caseでは、日本全国の様々な公共交通事業者のチケットが購入できることを想定しており、その第1弾として提供されるのが、江ノ島電鉄の江ノ電1日乗車券「のりおりくん」となる。
機能としては江ノ島電鉄がこれまで提供していた紙チケットやデジタル(EMot)の「のりおりくん」と同じで、800円で江ノ電が1日乗り降り自由になるとともに、Pass Caseで券面を表示させることで提携店舗や施設での割引サービスが受けられる。
江ノ島電鉄 常務取締役の嶋津重幹氏によると、2023年4月のstera transit導入以降、訪日外国人観光客の利用が多く、利用客は手間をかけずに乗車できるようになった。従業員にとっても、切符購入に関する問い合わせや時間のロスが軽減され、大きなメリットになっているという。
今回Pass Caseで提供が始まった「のりおりくん」は、これまでは「のりおりくん」の購入のほとんどが駅の券売機や窓口になっていたため利用客に負担をかけていたが、Pass Caseならいつでもどこでも事前購入でき、購入したカードでタッチで乗車できるため、購入時の不便さがなくなり利便性を改善できると指摘。また、それによる従業員の負担軽減という観点からも、今後はデジタルチケットでの販売数を大きく増やしていきたいとした。
その他、クレジットカード利用による属性や消費動向といったデータから、利用者それぞれに適した提携店舗との連携サービスを提案することで地域経済貢献に繋げたり、旅客数に応じて旅客分散に繋がるお得なチケットや沿線住民向けの便利なチケットの販売など、将来の提供チケット拡充も視野に入れていると嶋津氏は説明した。
購入・車はVisaの物理カードから スマホ対応は25年中
今回提供が始まったPass Caseでの「のりおりくん」の購入や利用は、クレジットカードやデビットカードなどの物理カードで決済するとともに、乗車時のタッチも決済に利用した物理カードを利用する。具体的には、あらかじめPass Caseにカード情報を登録し、そのカード情報を利用して「のりおりくん」を購入。利用時には購入に利用したカードを改札のカードリーダーにタッチすることになる。
この仕様について石塚氏は、現段階では物理カードで購入して物理カードで乗ることになるが、サービスを開始したばかりなので、1つずつ検証確認しながら、順を追って決済手段を拡充させたいと説明。Apple PayやGoogleウォレットを利用した購入とスマートフォンのタッチでの乗車については、現在開発を進めており、2025年度中には対応したいという。
また、Pass Caseで利用できるカードは、当初はタッチ決済に対応するVisaブランドのカードのみとなる。stera transitに対応するそれ以外のブランドのカードについては、2025年度中に順次対応したいとのことだ。
ところで、購入に利用したカードがApple PayやGoogleウォレットに登録されていても、そのスマートフォンのタッチでは乗車できず、物理カードをタッチする必要がある。これは、1つのチケットを複数人で使う可能性が考えられることから、乗車券の不正利用を排除するための対応となる。乗車券としての不正利用を排除しながら利用者の利便性をどう高めていくのかは、これから検討していきたいとした。
今後stera transit MaaSプラットフォームを導入する事業者の動向については、今回の江ノ島電鉄での導入を皮切りに、2025年度中に複数の事業者での導入が決まっているという。