ニュース

シチズンのチタンは55周年 新ゴールドカラー「アンバーイエロー」

スーパーチタニウム製のケース・ブレスレットに「デュラテクトアンバーイエロー」を施した「クロスシー」

シチズン時計は、独自の表面硬化技術「デュラテクト」の新色「デュラテクトアンバーイエロー」を開発した。耐メタルアレルギーを実現しながら、落ち着いた色味の金色や、高い表面硬度を実現したのが特徴。

「デュラテクトアンバーイエロー」は、金めっきで一般的に使用されることが多くアレルギーを起こしやすいニッケルを使用せず、合金の「ニオブチタン」を使用することで、金色を実現したのが特徴。これにより、典型的なメタルアレルゲンであるニッケルをはじめ、コバルト、クロムなどを含まない、耐メタルアレルギー性能を獲得した。

表面硬化技術の「デュラテクト」は、素材の上に複数の膜を重ねることで硬さや色味を実現する。「アンバーイエロー」の色味は、落ち着いた色味の金色になるように製造条件を調整され、従来の金色のイメージとは異なる、ヴィンテージウォッチにも通じるような、クラシカルな雰囲気に仕上げられている。

また、「アンバーイエロー」はデュラテクト技術の中でもトップクラスの硬さを誇り、ビッカース硬度は約1,700~2,300HVと、一般的な金めっきと比較して10倍~20倍にもなる硬度を実現している。

デュラテクトの硬度

名称のアンバーの由来は、植物由来の宝石であるアンバー(琥珀)から。「肌へのやさしさ」「高い硬度」「美しい外観」を象徴するものとして名称に採用し、長い年月で愛着が湧くようにとの想いも込めた。一般的にイエローゴールドと呼ばれる系統の金色だが、派手さを抑えた落ち着いた色味が特徴。

デュラテクトアンバーイエローの開発中のサンプル。さまざまな試作の中から落ち着いた色味が選ばれた
男性向けサイズのケース・ブレスレットのサンプル。今後はこうしたモデルにも展開が検討されている

このアンバーイエローをスーパーチタニウム製ケースに施した製品として、「シチズン クロスシー hikari コレクション エコ・ドライブ電波時計 ティタニア ハッピーフライト」(ES9492-57D、102,300円)が4月3日に発売される。

ES9492-57D

このほか、ケースがスーパーチタニウム製ではなくステンレススチール製ではあるものの、3月13日に発売される「シチズン エコ・ドライブ ワン」の新作「AQ5022-02W」「AQ5022-02E」も、アンバーイエローを採用した製品となっている。

AQ5022-02E

シチズンのチタンは55周年 表面加工と共に歩んだ歴史

シチズンは腕時計の素材としてチタンに早くから着目し、最初の製品は1970年発売の「X-8 クロノメーター」にまで遡る。これは、世界で初めてチタン素材をケースに採用した腕時計だった。

1970年発売「X-8 クロノメーター」

チタンは錆びにくく軽量で高強度、耐メタルアレルギーといった、腕時計で望まれる特徴を複数備える一方、加工の難易度は非常に高く、技術者の間では「打てない・削れない・磨けない」で「加工三重苦」と呼ばれていたという。

シチズンがチタン製腕時計の第2弾を投入したのは12年後となる1982年で、1,300mの防水性能を備えるダイバーズウォッチのケース素材としてだった。高い強度を見込んでの採用で、この時もまだ、日常で使う腕時計の素材ではなかった。

1982年発売、1,300mの防水性能を備えるダイバーズウォッチ

チタン素材の加工にさまざまな工夫を凝らして独自の加工技術を確立、チタン製であることを全面に打ち出して投入したのが、1987年発売の初代「ATTESA」(アテッサ)だった。表面にガラス多層膜コーティングを施すことで、チタンの課題だった表面の傷つきやすさや指紋のつきやすさを克服しており、チタンが日常使いできる腕時計の素材として使われる先駆けとなった。

1987年発売、初代アテッサ

以降、アテッサはチタン素材を全面的に採用するブランドとして進化していくほか、弱点を克服する表面加工技術・表面硬化技術も進化していく。転機となったのは、公害や環境問題の観点で、めっきの方式が湿式めっきから乾式めっきに切り替わったこと。1970年代から乾式めっきの開発を続け、技術を蓄積したことが、後の表面硬化技術「デュラテクト」につながっていく。

日常使いにおけるデュラテクトの耐傷性テスト

2000年に入ると、チタニウムにデュラテクトを施した独自素材を「スーパーチタニウム」として確立。その後も表面加工技術に着色技術が加わり、さまざまなバリエーションが展開されている。現在では月面探査「HAKUTO-R」プログラムの月着陸船に搭載する着陸脚部分の素材としてスーパーチタニウムを提供するなど、シチズンのチタン素材と表面硬化技術はさまざまな展開をみせている。

2000年以降、スーパーチタニウムやデュラテクトのバリエーションが拡大
スーパーチタニウムにデュラテクトDLCが施されたHAKUTO-Rコラボモデル
デュラテクトのサンプル
現行のデュラテクトをケース・ベゼルに施したサンプル