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ライドシェア空き時間に「ゆうパック」配達 Uberと日本郵便が実証

記者発表会で公開した「貨客混載実証事業」の説明動画

Uber Japan、日本郵便は加賀市と連携し、公共ライドシェアドライバーによる貨客混載の実証事業を3月より開始する。この取り組みは、地域交通と物流の課題解決を目指すもので、ライドシェアサービスによる貨客混載は全国初の試みとなる。

加賀市では、2024年3月の北陸新幹線延伸に伴う観光客増にあわせ、Uberアプリを使った公共ライドシェアの本格運行を開始した。ライドシェアは順調に利用されているものの、時間帯や季節によって需要と供給のバランスが不安定になるという課題があった。特に平日昼間や観光客が少ない時期には、ライドシェアドライバーの稼働率が低くなり、ライドシェアドライバーからは「時間を有効活用したい」という声が上がっていたという。

加賀市版のライドシェアは24年3月に開始後、トラブルや苦情報告なく順調に運行を拡大

この実証事業では、ライドシェアドライバーの収入を向上させ、ライドシェア供給を安定化させるとともに、日本郵便の配達リソースを確保することを目的に実施する。ライドシェアドライバーが「ゆうパック」の配達を行ない、ライドシェア以外からの収入源を確保することで、1時間あたりの平均収入を向上させ、より安定したライドシェアの稼働が可能になるとしている。さらに、ドライバーの空いた時間を活用するため、ライドシェアのオンライン時間の増加にも期待でき、配車リクエストのマッチング率の改善を見込む。

加賀市におけるライドシェアの運行状況は35人(うち15人が二種免許取得者)のドライバーが登録

Uber Japan 代表取締役の山中志郎氏は、「ライドシェアは時間帯によって需要と供給のバランスが不安定になる。ドライバーの収入機会を拡大しながら、ライドシェアの安定供給、郵便リソースの多様化にも期待がもてる」と述べた。

Uber Japan 代表取締役 山中 志郎氏

実証事業は加賀市内の一部地域で3月より実施される。ライドシェア業務は従来通り、加賀市観光交流機構が主体となり、Uberアプリで乗客とのマッチングを行なう。配達については、日本郵便がドライバーと契約し、「ラストマイル輸送等への輸送対策としての自家用有償運送の許可」を取得したうえで、ゆうパックの配達をライドシェアドライバーに委託する。なお、集荷や時間指定のゆうパックは取り扱わない。

また、3社が連携してドライバーへの配達業務に関する研修を実施し、ライドシェア側のドライバー点呼などの運行を担当する加賀第一交通がまとめて管理を実施する。加賀市観光交流機構がライドシェアと荷物配達双方の稼働時間を把握し、ドライバーの長時間稼働を避ける体制をとる。

加賀市長 宮元陸氏は、「人口減少が深刻であり、移動手段の確保が喫緊の課題にもなっている。EC物流も増加しているが、ロジスティクスに関しても人手不足の状況下で(加賀市だけでなく)地方が生き残るには、貨客混載といった合理化が重要になる」と期待を示す。

加賀市長 宮元 陸氏

今後の実証では、1日に配達できる個数やそれに伴う収入、乗車リクエストと配達のバランスを確認し、ドライバーの収入にどの程度影響があるかを検証する。また、ゆうパック利用者が貨客混載による配達員であることわかるよう、バッジや腕章を着用するといったルール決めについても、実証事業を通じながら検証を進めていくとしている。検証の終了時期については未定で、少なくとも数カ月かけて展開していく。

「ドライバー不足への対応として、旅客・貨物両運送事業間でドライバーを融通し合う柔軟な仕組みの検討を進めており、この実証実験を通じて、取組の成果や制度面を含む課題などを明確化し、全国への普及を目指したい」(国土交通省大臣官房参事官 高本仁氏)とし、今回の加賀市での取り組みをモデルケースとして、全国の地域交通及び物流の課題解決に向けた展開も視野に入れている。

国土交通省大臣官房参事官 高本 仁氏
左から、加賀郵便局 局長 能瀬 宏行氏、日本郵便 指宿一郎氏、加賀市長 宮元陸氏、Uber Japan 山中 志郎氏、官房参事官 高本 仁氏