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ゼブラ、手書きとITの関係を模索する「kaku lab.」 第一弾はXRお絵描き
2025年2月20日 12:00
文具メーカーのゼブラは、ペンとITを組み合わせた「kaku lab.(カクラボ)」を発表した。
第一弾はXR空間でペンを使って描画する「kaku XR」。同社が独自開発した「T-Pen」を使い、Meta QuestやApple Vision ProなどのXR機器と連携し、空中に立体として絵を描ける。さらにそのデータを生成AIと連動し、イラスト化や3Dデータ化なども行なえるようになっている。
ただしこれは直接的な製品化を目指した技術ではなく、T-Penも発売の予定はない。ゼブラとして「将来の文具のあり方」を見据えた研究の中で取り組んでいるものだ。
デジタル融合の「第一弾」がXR展開
同社は1897年創業でペンを中心とした文具の老舗。「ハイマッキー」や「シャーボ」、「デルガード」「ブレン」など、多数のヒット商品が思い浮かぶ。
一方現在は、デジタル機器の普及もあり、文字を手書きする機会は減ってきている状況ではある。
ただその中でも同社は「手書き」の価値はまだ高いと認識している。教育・創造・表現の場で手書き(手描き)は欠かせないものであり、デジタル技術との融合を目指し、2016年から研究開発をしてきた。
その成果として、3D visual生成プラットフォームとして公開されたのが「kaku lab.」だ。
T-Penはそのためのプラットホームであり、実はXR機器で書くための専用ペンではない。普通のペンでもあるので、もちろん紙にも書くこともできる。内部には9軸のモーションセンサーが内蔵されており、傾きや書いている人の姿勢、筆圧やペンが動く時の加速度などを取得し、Bluetoothで他の機器に伝えることができる。
kaku XRにT-Penを使ったのはkaku lab.の第一弾だから、という部分が大きい。
手のひらをパレットにして色を選び、空中に線を引き、そこから生成AIによって「イラスト化」や「3D化」も行なえる。
繰り返しになるが、T-PenはXR専用ではないので空中での位置把握機能は搭載されていない。しかし今回のkaku XRでは、XR機器の搭載しているカメラでペンと持っている手を認識し、空間のどこにあるかを認識している。
そのため、アプリからのカメラ制御に制限のあるVision Proでは動作しておらず、現状はMeta Quest 3でのみ動作している状態だ。しかしT-Penとの連携の仕組みはXR機器を限定したものではないので、XR機器側の準備が整えば、どのデバイスでも使える想定だと言う。
なお、kaku lab.はN T マイクロシステムズとインタラクティブラボラトリーが共同開発として参加している。
可能性を模索し、パートナーを募集
前述のように、kaku lab.は、現時点で「すぐに商品として売る」ことを前提としていない。現状のデモも文字通りの「デモ」であり、完成されたものではないし、実用性が高いものでもない。
それでもこの時点で公開に踏み切ったのは、kaku lab.やT-Pen、kaku XRを使って様々な可能性を模索したいからだ。
kaku XRの狙いは空間に絵を描くことだけではない。
前述のように、生成AIと連動させ、描いたデータから別の絵や3Dモデルを生成することもできる。生成AIはXR機器内でのオンデバイスAIではなく、クラウド上のAIや別のPCにインストールしたAIを使う。このための仕組みはフレームワーク化されており、用途に応じた拡張やAIの入れ替えも想定した形となっている。
センサーの入ったペンでどんなデータをとって活用するのか、空間に描いた絵をどのように活用すると高い価値を生めるのか、そして、そこからさらに生成AIなどの技術を組み合わせていくと、どのようなことが生まれるのか。ゼブラの中だけでは見つからないものを見つけるのが狙いの1つである。
そのためゼブラは、現在ビジネスパートナーを募集している。スタートの段階では企業を対象としたB2Bの形で連携して開発を進める。開発情報等については、将来的にはオープンソースとしての公開も検討していくという。
なお、ゼブラといえば「マッキー」だが、現在AIエージェント向けに「マッキー君」も開発中だ。3Dのキャラクターになっており、動きながら会話できる。いつか、同社のデジタル製品とともにマッキー君が話しかけてくる姿を見られるかもしれない。