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"自己修復する道路"を実現する新型アスファルト Google Cloud活用
2025年2月7日 12:21
英国のキングスカレッジロンドンとスウォンジー大学の研究チームは、チリの科学者たちと共同で、時間の経過とともにひび割れを修復できる新型アスファルトを開発した。Google CloudのAI技術を活用している。
英国では深刻な道路のポットホール問題(道路の穴やくぼみ)を抱えており、修理費用は年間数百万ポンドと言われている。また、維持管理用のアスファルトは年間2,000万トン以上生産。業界では食品廃棄物などのリサイクル材料を活用することで持続可能性の向上に取り組んでいるが、ひび割れやポットホールの問題は解決されていない。
新型アスファルトは、バイオマス廃棄物から作る自己修復道路で、樹木や一部の動物が持つ自己修復能力を模倣し、人の手によるメンテナンスが不要になる。
道路のひび割れの正確な原因は完全には解明されていないが、多くの場合はアスファルト混合物に使用される粘着性の黒い物質「ビチューメン」が酸化により硬化し、発生すると考えられている。科学者たちは、この過程を研究し、これを逆転させてアスファルトを効果的に「縫い合わせる」方法の開発に取り組んだ。
実験では、新開発のアスファルト材料が1時間以内にマイクロクラック(微細なひび割れ)を修復できることを実証。この自己修復プロセスは、天然の胞子マイクロカプセルと廃棄物由来の若返り剤によって促進される。
研究チームは機械学習を使用してビチューメンのような複雑な流体中の有機分子を研究することで原子レベルのシミュレーションを加速させる新しいデータ駆動モデルを開発。ビチューメンの酸化とひび割れ形成に関する研究を進展させた。このアプローチは従来の計算モデルと比べて、はるかに高速でコスト効率に優れているという。
さらに、研究チームはGoogle Cloudと協力し、創薬に使われる技術と同様の手法で、化学的性質を特定。特定の目的に合わせて設計された仮想分子を作成できるツールを開発した。
新型アスファルトは、自然界の自己修復能力を模倣することで道路の寿命を延ばし、より持続可能で耐久性の高い道路インフラを実現する可能性があるという。