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中小企業は楽天がAI化する 法人向け「Rakuten AI」

楽天モバイルは、法人向けの生成AIサービス「Rakuten AI for Business」の提供を開始した。ユーザーの質問に生成AIが回答するサービスで、営業メールの作成支援や社内資料の参照・抜粋など、業務の中に組み込んだ利用が可能。中小企業を含め、さまざまな分野の企業の業務効率化を支援していく。初期費用は不要で、利用料は1契約あたり月額1,100円~。1カ月間の無料トライアルが可能。楽天モバイルの回線契約がなくても利用できる。

PC・スマートフォンのWebブラウザからすぐに利用でき、導入する会社ごとの環境構築が不要で、初期費用も無料。セキュリティを高めた環境で、入力されるデータはAIの学習に無断活用されないとするほか、社内の機密情報をAIに送信する前にブロックするNGワードの登録もできる。

職種別のプロンプトテンプレートを用意するのも大きな特徴。楽天グループが社内でこれまで利用してきた生成AI関連のノウハウを適用した。生成AIから的確な回答を得やすい質問方法や内容を集めたもので、カスタマイズにも対応する。

楽天グループが活用してきたノウハウを元にしたオンライン個社研修や、導入後の利用の定着を支援するコンサルティングも有料で提供していく。

利用料は基本料金が月額1,100円。基本料金内で1ライセンスあたり合計10万文字(入力+出力)まで利用可能。10万文字を超過する場合、1,000文字ごとに11円の従量料金が発生する。

三木谷氏「すべての企業にAIを」

1月29日にはメディア向けの発表会が開催された。冒頭に登壇した楽天モバイル 代表取締役会長の三木谷浩史氏は、2024年に「AIの民主化」を掲げ、法人向けの領域でもさまざまに展開してきたことを紹介する。

楽天モバイル 代表取締役会長の三木谷浩史氏

楽天の社内では、AIの活用で3つの指標(マーケティング効率、オペレーション効率、クライアント効率)の20%増を狙う“トリプル20”の目標を設定。三木谷氏は、2024年の1年間でそれぞれ10%増と、進捗が半分にまで至ったとした。

また、楽天市場では、通常の検索機能の結果がユーザーの期待する内容でなくても、AIによるレコメンドを入れることで購買意欲をつなぎ止めることに成功していることなどを紹介し、楽天のさまざまな部分にAIを活用して、さらに拡大していく方針。2025年の挑戦として「すべての企業にAIを」というテーマを掲げ、社内だけでなく法人向けサービスとして大々的に展開していくことを宣言した。

AIは「生き残るためのツール」

法人向けの生成AIサービス「Rakuten AI for Business」は、中堅・中小企業がターゲット。それらの企業がDXの推進や生成AIの導入で感じている課題について、楽天社内で活用している経験や知識を元にして、解決する機能を備えた。

導入までのハードルの高さは、初期費用は不要、専用環境の構築が不要、スマートフォンからでも利用できることなどで、始めやすくした。

法人向け機能が不足しているという課題は、前述のようなセキュリティを高めた環境やプロンプトテンプレートの充実で、短時間で使いこなせる仕組みを用意した。

試験的に導入しても利用が定着しないという課題については、楽天での活用事例としてビジネスメールの作業時間が54%削減できたといったケースを紹介したほか、楽天でのノウハウを適用し実際の業務の現場を想定したテンプレートが充実していることがアピールされている。

またAIの導入に関するKPIの設定といった、基本的な取り組みを実施することで定着が図れるとし、有料コンサルティングではこうした定着支援の取り組みも行なっていく。

楽天モバイル 代表取締役 共同CEOの鈴木和洋氏は、こうした中小企業が感じている課題を汲み取り解決を図ろうとしている点が、OpenAIやグーグル、マイクロソフトといった大手が提供しているサービスとの違いとしている。

楽天モバイル 代表取締役 共同CEOの鈴木和洋氏

楽天グループの取引企業は、楽天市場の出店企業に加えて、楽天トラベルのホテル・旅館業界、ファッション業界など、63万社以上に及ぶといい、こうしたチャネルも活用して生成AIの導入を進めていく。また、AIの活用シーンは細分化され活用事例が整備されていくとして、プロンプトテンプレートもさらに拡充していく方針。

中小企業のAI活用やDXは伸びしろがあり、積極的に支援していく考え。鈴木氏は「No AI, No Business。これからはAIを使いこなせないと、生き残っていけない」(鈴木氏)と訴えた。