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オイシックス、人手不足の保育園に「タイパ給食」ミールキット
2025年1月29日 17:18
オイシックスは、保育園・幼稚園向け給食事業「すくすくOisix」において、業務用ミールキットの新モデルと献立発注の新システムを確立。給食事業を手掛けるシダックスとの協業で2月3日より提供する。
同社では、関東・関西エリアを中心に保育所向け給食事業を展開しており、2022年からは専属の管理栄養士が作成した献立と必要量のカット済み食材が届く「手作りミールキット」の提供を開始。ミールキット導入前と比べて、調理時間を1日30%、食材費・人件費の総額を18%短縮しながら、完食率は64%から70%に伸張している。
給食用ミールキットは、導入した保育所から好評を博しているが、安定的にもっと時短できるようにしたいという声があったことから、「タイパ給食」をキーワードに新モデルの開発に至った。
「現在の給食用ミールキットも、カットした状態の食材を一部提供していますが、じゃがいもなど泥付き野菜がそのままセットになっていることもあり、野菜の洗浄や皮むきなど、下処理の手間がかかる食材も下処理済みで届けてほしいという声がありました。またハンバーグやフライなど、手間のかかるメニューも調理工数を削減したいという声があり、新モデルではカット済みの食材を増やしたほか、成形済みのハンバーグなどを新たに導入しました」(オイシックス・ラ・大地 BtoB サブスクリプション事業本部 田中 友梨亜氏)
これまでの給食用ミールキットでは、カット野菜の比率が日によって100%だったり40%だったりとばらつきがあり平均して80%だったが、新モデルは常時80%以上の比率で届けられるようになる。
肉類はハンバーグ以外にも、加熱済みの唐揚げなどを新たに導入。おやつもホットケーキなど調理に時間がかかるものは調理済みの状態で届けられる。いずれも冷凍状態で届き、当日に再加熱することで手間なく提供可能になる。
調理時間を最大50%削減 想定より早く迫る保育所の課題
給食用ミールキットの導入には、出生数の激減による保育所の定員割れ、保育士不足、栄養士・給食調理員不足などが大きく関係するという。特に出生数は予測を上回る減少スピードで、まだ先だと思われていた保育業界の課題が既に迫っている。
「かつては保育所が足らず待機児童問題が深刻化していましたが、現在は保育所を作りすぎて保育士不足となっていたり、有効求人倍率を見ても栄養士・調理師が慢性的に不足していたりと、新たな課題が生じています。出生数の減少で利用児童数も減っており、保育所は既に定員割れや統廃合が進んでいます。保育園は入れれば良いという時代ではなく、選んで入るものになっており、選ばれる保育園になるためには保育の質が重要となります」(オイシックス・ラ・大地 BtoB サブスクリプション事業本部 本部長 清水 崇司氏)
また、厚生労働省が定める保育施設の調理人員配置基準が、昭和51年から変わっていないことについても清水氏は言及。施設の定員数40名以下で調理員の配置人数は1人、定員数41~150名で配置人数2人、定員数151名以上で配置人数3人というのが現在の基準となっている。
しかし、実態はアレルギー対応や離乳食作り、従業員の休暇確保などを理由に、基準を上回る人員を配置せざるを得ない状況がある。
保育施設に対して国から出る補助金は、施設の利用者数(児童数)に応じて決まるため、調理人員を基準より多く配置する場合は、独自の補助金を設定している自治体は自治体負担、そうでない場合は保育所の負担となる。
こうした調理現場のひっ迫を解決するために、給食用ミールキットが貢献できると同社は訴求する。
特にカット食材や加熱済み食材を導入した新モデルでは、ミールキット導入前と比較して調理時間は最大50%、食材費・人件費の総額は最大22%削減可能だという(80人規模の保育施設、3名勤務体制の場合)。コストを削減することで高騰する食材費問題にも対応し、調理員の配置義務通りの少人数で安定的に施設運営ができるとしている。
新たな食材発注システムを開発し、「献立再編集機能」を導入。現在の給食用ミールキットは、行事食など保育所がオリジナルの献立を提供したい場合にフレキシブルな対応ができなかった。追加で食材を注文することはできても、帳票の作成や自治体に提出が必要な栄養価の計算などの事務作業が別途必要となり、かえって手間が増えてしまうという状況だった。
新システムでは、その事務作業がすべて自動でできるようになる。1日だけ献立をオリジナルに変更しても、食数注文と自動帳票作成が利用でき、負荷なく園それぞれのオリジナリティある献立提供を可能にする。