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大洗~苫小牧の深夜フェリーに新船「かむい」 船室はすべて個室
2025年1月17日 20:00
大洗~北海道航路に次世代燃料「LNG船」初就航
「さんふらわあ かむい」はこれまで就航していた「さんふらわあ だいせつ」と比べて、エントランスなどの共用スペースや浴室などが、広く見違えるほどに綺麗になった。長距離フェリーのイメージ「カーペット敷きの大部屋で雑魚寝」も今は昔の話、新船は全室が個室・半個室仕様で、プライバシーが確保されているという。
さらに、フェリーの動力としてLNG燃料を使うことで、環境にも優しく、乗り心地も良い。同系列の「さんふらわあ」航路では、23年1月に大阪~別府間でLNG船「さんふらわあ くれない」などが就航しているが、大洗~北海道間での就航は「さんふらわあ かむい」が初めてとなる。
なお、船名の「かむい」はアイヌ語で「神、魂のような大いなる力」を意味するといい、伝統と未来をつなぎ、美しい海を守るという願いが込められているという。これまでの「さんふらわあ」とは異なる斬新なデザインも印象的な「さんふらわあ かむい」の内覧会で、船内を見学させていただいた。
船室はすべて「個室」 食堂のかわりに「ど冷えもん」
エントランスは以前の船「だいせつ」と比べても広々と開放的で、窓側の共用部のほぼすべてにコンセントが設置されている。食堂のかわりに冷凍食品の自動販売機(ど冷えもん)があるので、ここで食べても良いだろう。
冒頭にも述べた通り、「さんふらわあ かむい」は、全室がプライバシーを確保した個室となり、コンセントを全室に完備している。それぞれの船室を見てみよう。
コンフォートSシングルは定員数1名で船室面積は約3.84m2。設備はベッド1台(幅78cm)、テレビ、備品としてキルケット、枕、机、椅子、スリッパを備えている。
プライベート空間を確保し、遮音性も高いようで、20時間近い船旅を快適に過ごせそうだ。なお、バリアフリー船室もある(要電話予約)。
ドライバーズルームは、トラックドライバーがしっかりと運転の疲れをとれる仕様となっている。コンフォートSシングルとの共通点も多い。
スーペリアウィズペットサイドは定員数2名で船室面積は約10.08m2。設備はベッド2台(幅78cm)、ソファベッド1台(70cm)、テレビ、備品としてキルケット、枕、机、椅子、スリッパを備えている。
「かむい」では、一緒に移動できるペットルームが新設された。外にはドッグランもあるので、たまに外に出て海風に吹かれながらペットと遊ぶのも良いだろう。
好評の「大浴場・サウナ」は存続
以前の船「さんふらわあ だいせつ」で好評だったドライバー用の大浴場・サウナは存続。海を眺めながらの入浴は格別だ。
さんふらわあ深夜便は、貨物コンテナやトラックの利用も多い。今回の「かむい」はフィットネスルームやリラックスルームを完備し、物流を担うトラックドライバーの方々や、一般の観光客の方々に、より快適に過ごしてもらいたいという。
さんふらわあ かむいは「2024年問題」対策の切り札になるか?
さんふらわあ深夜便は、大洗港・苫小牧港の双方を午前1時台に出航している。トラックドライバーからすれば、深夜に出航して夕方に到着できれば、降りてすぐ納品先に向かい、農作物なら翌朝すぐに販売できる。
トラックの積載能力は、大型トラック(13m)に換算すると155台。既存の「だいせつ」に比べて積載能力はグッと向上した。また北海道からの貨物は牛乳・野菜などの生鮮食品が多く、車両甲板(トラック・コンテナなどのスペース)には120口の電源が用意されている。
就航に当たって、商船三井さんふらわあの牛奥博俊社長は各社の質問に答えた。
牛奥社長はまず、トラックドライバーの走行時間が削減できるうえに快適に過ごせる「かむい」の就航が、休憩時間の厳格化などでトラックドライバーなどが不足している「2024年問題」の解消や、トラックドライバーの労働環境・移動環境の改善に寄与することに期待を寄せた。
また、次世代燃料であるLNG燃料については、今後とも貨物船(RORO船)での対応船の導入や、バンカリング(供給)船を使用した「シップ・ツー・シップ」による効率良いLNG燃料の補給を、積極的に検討していくそうだ。
ただ、「かむい」の僚船(おなじ航路を担うペアとなる船)の「さんふらわあ ぴりか」は建造が遅れており、就航はまだ「春以降」という部分しか決まっていないという。
ひとまずは、1月21日の「かむい」就航と入れ替わりで、前の船「さんふらわあ だいせつ」は定期運行を退き、「ぴりか」就航のタイミングで「さんふらわあ しれとこ」も引退。まずは味のある内装の「だいせつ・しれとこ」に、いまのうちに乗船するのも良いだろう。