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ソフトバンク、南極の水中ロボットを日本からリアルタイム制御 世界初

ソフトバンクは、トラッキング技術を活用した水中光無線通信と衛星通信を組み合わせ、ソフトバンクの本社(東京都港区)から南極(昭和基地の南方約55kmに位置するスカルブスネス・鳥の巣湾)の海氷下を移動する水中ロボットをリアルタイムで遠隔制御する実証実験に世界で初めて成功した。

実証実験は、情報・システム研究機構 国立極地研究所の協力の下、第65次南極地域観測隊による観測事業の一般研究観測課題「マルチスケールのペンギン行動・環境観測で探る南極沿岸の海洋生態系動態」の一環で実施されたもの。

一般的に、南極の海中調査では、技術者や研究者自身が現地に赴き、水中航走体(ROV)を海中に投入・操作して観測を行なっている。しかし、これには多大な時間とコストがかかり、過酷な環境である沿岸の調査ポイントに長期滞在するなど効率性や持続可能性に課題がある。

今回の実証実験は、日本の技術者や研究者などが南極まで出向くことなく、日本にいながら遠隔地から海中を調査できるシステムの構築の可能性を検証するもの。2023年3月に発表した光の明滅を信号に変換する技術「OCC(Optical Camera Communication)」と「NTN(Non-Terrestrial Network、非地上系ネットワーク)」を組み合わせた水中ロボットの遠隔リアルタイム制御システムを改良し、南極で実証実験を行なった。

具体的には、OCCとNTNを活用して2台の水中ロボット間で水中光無線通信を行なうシステムを開発。LEDの光の明滅をカメラで撮影し、画像処理を用いたトラッキング技術で光を検出・追従。光の輝度変化をデジタル信号に変換し、リアルタイムな通信を実現する。これにより、水中ロボットが互いに協調動作を行なうための指示やデータを迅速かつ確実に送受信できる。

システムは親機となる水中ロボットとNTNで接続し、遠隔地からコマンドを送ることが可能。離れた場所にいるオペレーターが海洋で動作している水中ロボットに対して指示を出せる。

水中ロボットは搭載された水温や水圧センサーなどから得た情報を収集し、そのデータや水中ロボットの動作状況を遠隔地のオペレーターに衛星通信などのNTNを通じて送信可能。これにより南極にある水中ロボットを約14,000km離れた日本からリアルタイムで遠隔制御し、情報をモニタリングすることに世界で初めて成功した。

また、水温が約-2℃まで低下し、海氷に閉ざされていて音響通信の活用が難しい南極の海氷下でも、水中ロボットや機器をリアルタイムで遠隔制御し、水中ロボットからのデータの収集や観測などを遠隔で実行できることを確認した。

実証実験の成功により、日本の技術者や研究者などが南極まで出向くことなく、遠隔で海中を調査できるシステムが将来的に構築可能であることを証明。将来実用化すれば、南極や北極などの極域における資源調査・学術調査の進展に寄与できるとしている。

ソフトバンクは今後、自律型水面航行ロボット(ASV)と組み合わせて活動範囲を拡張した、より実用的な遠隔制御システムによるサンプル回収・分析などの研究を進める。また、この技術を応用した、日本近海における水中での測位や水中無線コミュニケーションが可能な水中ロボット、産業ダイバー向けソリューションを開発し、2026年度の商用化を目指す。