Suica大変革　Suicaアプリやウォークスルー改札、2万円の壁超え

JR東日本は10日、今後の「Suica」のあり方について発表した。「Suica アプリ(仮称)」を2028年度までにリリースするほか、移動、決済、地域などの生活シーンにおける新たな体験やDXのサービスとしてSuicaを推進していく。

鉄道乗車や店舗の決済を中心としていたSuicaのあり方を「Suica Renaissance」と題して変革。2026年秋頃には「モバイル Suica」アプリによるコード決済機能などの新たな決済体験、2028年度には利用者に応じた割引やクーポンなどの移動体験の提供を進め、10年以内にはチケットやSF(電子マネー)などのバリューをセンターサーバーで管理するサービスを目指す。

Suicaアプリで変革　あと払いやウォークスルー改札も

その中心となるのが「Suica アプリ(仮称)」。鉄道サービスや決済機能のほか、移動、決済、地域などの生活シーンにおける新たな体験やDXのサービスとしてSuicaを作り変えていく。

「移動」ではかざす必要もない「ウォークスルー改札」「位置情報の活用」「事前チャージがいらないあと払い」などに取り組む。

「決済」では、「地域限定バリュー」「個人間送金」のほか、「2万円以上の買物」へも対応を予定している。

「地域」においては、「ライドシェア、デマンドバスなどの連携」「マイナンバーカード連携の行政申請」「家族見守り」「給付金の地域バリューでの受取」などを目指す。

センターサーバー化で変革 　利用エリアや「2万円の壁」を撤廃

これらの実現のため、チケットやSFのバリューをセンターサーバーで管理する新しいプラットフォーム型のシステムへ移行する「センターサーバー化」を順次検討していく。

鉄道利用は定期券とSF(電子マネー)という位置づけから転換。2028年度には、「Suica アプリ」においてセンターサーバー管理型の鉄道チケットの提供を開始する。

たとえば、毎月3,000円を払うことにより、自宅最寄り駅である大宮駅を起点として、どの駅でも運賃が50%割引となるサブスク商品(割引上限あり)などを展開。また、鉄道の日などの記念日、駅ビルやイベントでの買い物により配信される鉄道クーポンなどを活用できるようにする。

また「改札はタッチ」という“当たり前”も変えていく。将来的にセンターサーバー化により、タッチせずに改札を通過できる「ウォークスルー改札」を実現するほか、改札機がない駅での「位置情報等を活用した改札」を実現するという。

さらに「Suica 利用エリア」の制限もなくしていく。現在は、首都圏(長野含む)、仙台、新潟、盛岡、青森、秋田のSuicaエリアがあるが、2027年度にこれらを統合する。これにより、Suicaで常磐線で上野から仙台まで利用できるようになる。また、Suica未導入エリアにて、モバイル Suicaアプリで購入できる「スマホ定期券(仮称)」を利用可能としていく。

決済面でも大きく変化。これまで事前チャージが必要だったSuicaをクレジットカードや銀行口座と連携することで、チャージする必要のない「あと払い」を実現。2026年秋頃には、モバイル Suica アプリをリニューアルし、タッチ決済に加え、Suicaの上限額(2万円)を超える買い物にも利用できるコード決済機能を追加する。さらに、家族/友達に電子マネーを送る&受け取る機能、クーポン機能、地域限定のバリューの発行などに対応する。

ご当地 Suicaやおもてなし　他社連携も

また、自治体とのMaaSの連携にて実現している移動と地域のDXモデルを「地域連携ICカード」との統合により拡張。各地域に根差した「ご当地 Suica(仮称)」を創る。

同サービスは「Suica アプリ(仮称)」をベースとし、マイナンバーカードとの連携により、地域内の生活コンテンツ、サービス(地域割引商品、デマンドバスなど)、商品券や給付金の受け取りや行政サービスの利用を実現する。

さらに移動や生活シーンでSuica を利用したデータを活用。たとえば旅行時に新幹線が到着したらタクシーが待っていたり、帰宅時にお風呂が沸いていたりする「おもてなし」サービスや、健康状態に合わせた食事のレコメンドをする「お気遣い」サービスの実現を目指す

訪日外国人向けの「Welcom Suica」は、2025年3月を目処に「Welcome Suica Mobile」(iOS)サービスを開始。日本入国前にアプリのダウンロードやSFチャージを可能とし、成田/羽田空港からJR線や東京モノレールなどの鉄道各線をシームレスに利用可能にする。

2025年秋には「JR東日本の新幹線eチケット」や「在来線特急のチケットレスサービス」を、2026年春には中央線をはじめとした普通列車グリーン車も同アプリから利用可能にする。将来的にはセンターサーバー化により訪日客にもウォークスルー改札や全線でのSuicaの利用を提供する。

さらに他交通事業者へSuicaサービスを提供。11月にモバイル Suicaで「東京モノレール区間の定期券(通勤定期券)」を実現しているが、他の交通事業者への定期券発売サービスも展開するほか、'26年春頃には通学定期券にも拡大する。

また、将来的にはこれらのSuicaサービスを、モビリティを含めたTOD・スマートシティ開発の1つの機能と位置づけ、海外マーケットへの拡大を目指す。