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タッチの次は「トークン」 高度化するVisaの決済サービス
2024年11月27日 09:00
ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、決済エコシステムの戦略や、「大阪エリア振興プロジェクト」の進捗について説明会を開催した。同社 代表取締役社長のシータン・キトニー氏が報告した。
同社は従来から、戦略的な柱として「市場の形成」「生活をより豊かに」「未来を見据えビジネスをサポート」という3つの注力領域を明らかにしており、内容は変わっていない。
「市場の形成」では、目下タッチ決済の普及に取り組んでいるところで、タッチ決済対応カードは9月末時点で約1億4,000万枚発行、過去2年で1.6倍に成長している。Visaの対面決済におけるタッチ決済の普及率は45%に拡大、2023年の25%から大幅に伸びていることが明らかになっている。
またタッチ決済が伸長している要因は、コンビニや飲食店など“日常利用”のカテゴリーの伸びに加えて、“非日常利用”の加盟店にも利用が拡大したことが大きいとした。
公共交通機関への導入も全国で拡大しており、32都道府県において、100以上の公共交通機関でタッチ決済が導入されている。これらのユーザーはメインカードで利用するケースが多く、一人あたりの利用金額・取引件数の増加につながり、決済業界全体にプラスの効果をもたらしているという。
中小企業の加盟店を増やすことは依然として課題で、中小企業が対象のプログラムを引き続き推進していく。「エコシステムに参加してほしいと、強く思っている」(キトニー氏)とし、ユーザーの体験が向上することや、業務の効率化が図れて売り上げの増加につなげられることを粘り強くアピールしていく。
またスマートフォンの普及率などを鑑みて、「今後はプラスチックカードではなく、モバイル中心で利用をどんどん進めていく」(キトニー氏)と、モバイル端末を使うタッチ決済に注力していく方針。
「トークン」導入で決済サービス高度化「Click to Pay」展開へ
裏側の仕組みながら、ユーザーの利便性にも影響するのが、国内Visa取引における「トークン」(VTS、Visaトークンサービス)の導入と普及。VTSはカード番号をトークンに置き換え、従来よりも高いセキュリティのサービスを提供するもので、カードの不正利用対策としてのほか、承認率の増加なども見込む。
トークンの導入は前年比9.3%増という状況で、普及はこれから。「トークン化は単なる不正防止策ではなく、最重要の優先事項。今後1年をかけ、クリティカル・マスにまでもっていく」と、重点的に取り組む領域であることが語られている。
このトークン化は「ユーザー体験が標準化され、一貫したものになる」(キトニー氏)と言うように、ユーザー体験の向上にも活用される。例えばECサイトでは、Visaのトークンに対応することで「Click to Pay」を利用可能になる。これは既存のPayPalやAmazon Pay、Google Payなどに近いイメージで、Click to Payに登録したユーザーは、ECサイトの決済時にClick to Payのボタンを押すことで利用するカードを選択でき、送付先住所もあらかじめ登録してある住所に指定できる。
これにより、決済完了まで平均14クリックが必要という行程を2~3クリックにまで減らせるといい、トークン化による安全性に加えて利便性の向上も図っていく。国内におけるClick to Payの展開は2025年に開始される予定。
大阪エリア振興プロジェクト
万博を控えた大阪エリアで集中的にプロモーションやイベントを実施する「大阪エリア振興プロジェクト」では、4月から連続的にプロモーションなどを実施。この結果、Visaのタッチ決済の認知率は、全国平均が76.4%のところ、大阪では80.7%にまで伸びたという。
大阪におけるVisaのタッチ決済の利用は月あたり200万アカウント以上で、新規利用は第2弾キャンペーンが終了した8月時点で100%以上増加した。カードでの利用、モバイルでの利用のどちらも全国平均より高い推移をみせ、ユーザーからの好意的な反応も多く「成功したと言える」(キトニー氏)と現状をまとめている。
こうした自治体などでエリアを限定して集中的にプロモーションを行なう取り組みは、全国に拡大する意向。キトニー氏は「大阪を皮切りに、日本の経済の可能性を最大限に引き出していく」と意気込みを語っている。
アダルト拒否は「ブランドを守るため」
質疑応答の時間には、昨今、(日本国内において合法な)アダルトコンテンツの販売を行なうサイトではVisaが決済に利用できなくなっているケースについて、その理由が問われた。
キトニー氏は、Visaには合法で正当なものには可能な限り使えるようにするという方針がある一方で、「時には、ブランドを守るために、使えなくすることが必要になる」とコメント。実情として、グローバルの方針とローカルな方針の両方が絡む複雑な判断になっているとした上で、「誠実さや完全性を維持することも重要で、今後も続けていく」と、一連の決定が一時的なものではないことを示している。