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大阪マルビル建替で40階建・192mの複合ビル 形状や回る電光掲示板は継承

大和ハウス工業は、「(仮称)大阪マルビル建替プロジェクト」を本格始動すると発表した。地上40階・地下4階、最高高さ約192mで、ホテルやオフィス、コンサートホール・舞台、商業施設などの複合施設を新設する。形状や「回る電光掲示板」は、従来の大阪マルビルを継承する。開業は2030年予定。

大阪マルビルは大阪府の超高層ビルの先駆けであるとともに、当時の最新鋭の技術を結集した日本初の円筒形超高層ビルとして1976年に竣工。円筒形のユニークな形状で、大阪・梅田周辺のどの場所でもその姿を見られることから大阪のランドマーク的な存在となっていた。

現在は約50年が経過しており、建物・設備の老朽化や周辺施設との競争力の低下が課題とされていた。そこで2022年5月に建替を決定し、2023年6月に全館の営業を終了して夏から解体工事を開始、2024年9月に地上部分の解体を完工した。

同プロジェクトの全体デザインコンセプトは「都市再生のシンボルツリー」。大阪マルビルの形状を継承しつつ、多種多様な人や用途、情報などが集まるというイメージから、建物の構成を単一の「マル」ではなく、多重に積層する「マル」で表現する。

大樹のような円筒形状は、ガラスカーテンウォールで構成。外装には大樹の枝葉をイメージした緑化ルーバーを計画している。地上には大樹の木陰を感じられるよう、半屋外の屋根下空間「ピロティ」を設ける。

また、ピロティと連続する球体デジタルアトリウムを設置。地下街「ディアモール大阪」とつなぐことで、地下から水を引き上げる大樹のように、地下から地上、まちへと賑わいが繋がるイメージとする。

球体デジタルアトリウムはデジタル映像を360度投影するもので、地下2階から地上4階までの巨大な球体を施設内に形成する。LEDディスプレイの映像に没入できるとしており、アトリウムを地下と地上を結ぶ結節点とし、大阪駅周辺の新たなスポットとすることを目指す。

地下から低層階の断面図
デジタルアトリウム

大阪マルビルの特徴の1つとして、屋上に設置された「回る電光掲示板」があった。一時は撤去されていたが、2005年10月に新たにLEDを採用した新型電光掲示板が復活し、天気予報、時刻、気温、地震、津波などの情報を発信していた。

建替後も回る電光掲示板については継承する方向で、建物頂部にうめきたを含む大阪駅周辺からも視認できるデザインを施す検討を進めている。

回る電光掲示板 デザインイメージ

施設整備については、展望スペース、ミュージアム、ホテル、イノベーションオフィス、コンサートホール・舞台、商業施設などを予定。

施設構成
展望スペース
ミュージアム

ホテルはラグジュアリーホテルや都市型ホテルを誘致。2種類のホテルで総客室数約280室を計画している。

イノベーションオフィスには、多種多様な人や情報が集まるワークスペースを設置。世界トップクラスのイノベーション拠点を形成することを目指すとともに、入居するスタートアップの成長を支援するプログラムやコミュニティの提供を検討している。

コンサートホール・舞台では、クラシックコンサートを主にしながら、舞台・客席の規模を変更できる設備を採用。多目的での芸術体験ができる空間設計とする。

コンサートホール・舞台

商業施設は大阪マルビルの雰囲気を継承する空間を計画。施設の用途と親和性のある店舗を誘致する。

商業施設

また、一棟の中に多種多様な機能があるという特徴を活かし、文化機能や宿泊機能、イノベーション拠点の相互連携による、新たな魅力、価値の創出に取り組む。

開発においては敷地内だけではなく、周辺地域の歩行環境改善や修景なども検討。地下では、四つ橋線 西梅田駅に接続する地下通路を新設し、改札口も設ける。また、周辺整備完了後には、まちの賑わい創出のためのエリアマネジメントにも取り組む。

そのほか、都市再生のシンボルツリーを目指して、低層部の壁面に緑化ルーバーを設置。あわせて計画地周辺の緑化も推進する。

周辺整備のイメージ

所在地は大阪府大阪市北区梅田1丁目9-20。敷地面積は約3,246m2、延べ面積は約74,000m2。工期は2025年冬から2030年。なお、建替前の大阪マルビルの規模は、地上30階・地下4階、高さ124m、敷地面積約3,246m2、延べ面積41,069.4m2

解体後の敷地は大阪・関西万博開催期間中、会場へアクセスするバスターミナルとして使用される。その後、ビル建設工事が進められる。

円形の残る大阪マルビル跡地(11月14日撮影)