ニュース

JR東日本と松竹、観光・夜・文化で協業 TAKANAWAから地方創生

JR東日本と松竹は18日、10年間の包括的業務提携契約を締結した。「観光・地方創生」「こころとからだの健康増進」「ナイトタイムエコノミー」の3つを柱として、デジタル技術を活用した新たな体験や文化を提供する。

また、山手線・高輪ゲートウェイ駅直結の「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」に2026年春に開業する、地上6階建ての文化創造棟「MoN(モン) Takanawa: The Museum of Narratives」と松竹の協業も発表され、日本文化を中心とした新たなコンテンツの共同開発も行なっていく。

「観光・地方創生」「こころとからだの健康増進」「ナイトタイムエコノミー」の3つを柱とする
2026年春に開業する、高輪ゲートウェイシティの文化創造棟「MoN(モン) Takanawa: The Museum of Narratives」模型

デジタル融合で「文化をアップデート」

東日本旅客鉄道 代表取締役社長 喜㔟 陽一氏は、松竹との業務提携について「JR東日本の重層的でリアルなネットワークと松竹の文化伝統芸能や幅広いコンテンツをかけあわせ、デジタル技術を活用し『文化の力』のアップデートにより心豊かで活力ある社会の実現を目指す」としている。

「観光・地方創生」では、都市部と地方双方の行き来を活発にできるようなコンテンツを展開し、交流人口を拡大する狙い。

例えば、都市部から地方への観光では、地域性のある歌舞伎演目やアニメコンテンツを活かした「聖地化」の取り組みを進めていく。各地の地域特性を活かした「名所歌舞伎」 など、新しい歌舞伎演目の創造に挑戦する。

「観光・地方創生」では、都市部と地方の交流人口拡大を目指す
東日本旅客鉄道 代表取締役社長 喜㔟 陽一氏

移動中の列車内で楽しめる「デジタルエンタメトレイン」も展開を検討している。MR等のデジタル技術を活用し、これから向かう旅先の関連文化コンテンツを楽しめ、移動空間でも目的地の理解を深めるなど、新しい移動体験を提供する。車内でのMRコンテンツは、機器の貸出などでのサービス提供を想定している。

地方から都市部への観光では「どこでもエンタテイメント」として、「巡業イマーシブシアター」が各地を巡ることで、都市部のエンタテインメントを地方でも臨場感を持って体験できるようにする。イマーシブシアターには、4K相当画質の次世代オンライン会議サービス「空間自在ワークプレイスサービス」と、「駅等のアセット」を組合せたものを採用。

巡業イマーシブシアターを通して地方でもエンタメを楽しんでもらうことで、都市部のエンタメコンテンツへの関心を高め、リアルにも足へ運んでもらえることを目指すという。

MR等を活用した「デジタルエンタメトレイン」
移動空間でこれから向かう旅先の関連文化コンテンツを楽しみ、目的地の理解を深める

「こころとからだの健康増進」は、浜松町・竹芝・東銀座エリアにおいて、JR東日本が持つ「移動データ」と松竹が持つ「エンタメコンテンツ」を掛け合わせ、エンタメ観光を提案することで健康増進のきっかけ作りを行なう。

「例えば、浜松町駅に到達したユーザーに、AIを活用した心と体の健康チェックを行ない、その結果に基づいて街歩きプランをレコメンドする。浜離宮や芝離宮での癒やしの体験や、新橋演舞場、歌舞伎座等の文化施設での学び、あるいは芸人による街歩きガイドなど、その人に適した観光をしてもらい、ストレス軽減や身体活動の向上など健康状態をリアルタイムで可視化します。そうした体験によって、楽しみながらこころとからだの健康増進をサポートしていきたいと考えています」(喜㔟氏)

サービス当初は浜松町・竹芝・東銀座エリアでの観光提案になるが、トライアルを踏まえて他エリアでの展開も検討していく。

こころとからだの健康増進。AIを活用した健康チェックの結果からエンタメ観光を提案し、健康増進をサポート

「ナイトタイムエコノミー」は、インバウンド需要が増加する中、ナイトタイムのエンタテイメントが少ないことから、豊かな夜時間の過ごし方を創造する。

両社の施設が東京湾に面して近接して立地する「高輪」、「浜松町・竹芝」、「東銀座」エリア一体で、地域の自然や文化施設・史跡や水上交通を活かしたコンテンツを提案。

高輪ゲートウェイシティでのライトアップのほか、パフォーマンスを夜でも楽しめるコンテンツ、東銀座のイルミネーションなどを予定している。検討段階ではあるが、夜9時からお酒を楽しみながら観劇できるコンテンツなども企画中だという。

ナイトタイムエコノミー
エリア一体でコンテンツを提案する

高輪ゲートウェイシティ「MoN」に松竹が協業

高輪ゲートウェイシティにおける、松竹の具体的連携施策についても発表。共創パートナーとして、THE LINKPILLAR 1 SOUTH8階に入居。松竹の中でもオープンイノベーションに積極的に参画する松竹ベンチャーズが主に稼働し、サテライトオフィスとしての機能も果たす。

高輪ゲートウェイシティにおける、松竹の具体的連携施策についても発表

高輪ゲートウェイシティに拠点を置くビジネス創造施設「LiSH」とも連携。LiSHが主催する共創の祭典「GATEWAY Tech TAKANAWA マッチングプロジェクト」へ参画する。

同プロジェクトについて、松竹 代表取締役社長 社長執行役員 髙𣘺 敏弘氏は「スタートアップや多様な企業が一同に会し、1社では難しい社会課題の解決に向け、新たなつながりを生み出し、共創の創出を目指す取り組み。共創パートナーの一員として、松竹と松竹ベンチャーズが参画する」と説明。

この取り組みでは「新たなIPコンテンツの創造」「映画館や劇場を活用した新たなデジタル体験の創造」「楽しく行なう健康管理など新領域でのエンタメ創造への挑戦」の3つの課題に対して新たなアイディアを募集し、実証実験を検討しながらソリューションを展開していくという。

松竹 代表取締役社長 社長執行役員 髙𣘺 敏弘氏

また、高輪ゲートウェイシティでは、文化創造棟「MoN Takanawa」での協業も発表し、日本文化を中心とした新たなコンテンツを共同開発していく。

具体的には、日本文化とテクノロジーを融合し、飲食とともに楽しめる新たな日本文化体験、デジタル演出・記録による新ジャンルのパフォーマンス、鑑賞型から参加型へ、誰でも楽しめる「文化の新たな楽しみ方」として実験的なテックイベントなどを検討している。

文化創造棟「MoN Takanawa」はTHE LINKPILLAR 2と、TAKANAWA GATEWAY RESIDENCEの間に位置する
地上6階建てとなる

髙𣘺氏は、「松竹のミッションである『日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する』を体現しながら、皆様をワクワクさせる新たな日本文化体験を提供できる場となるように共に歩んでいきたいと考えている」とコメント。

その1つとして、最先端テクノロジーと地域に縁のあるコンテンツをかけ合わせ、地方創生の新たな可能性を提供し、文化によるネットワーク作りを通じて地域活性化を目指していくという。

「例えば、高輪といえば泉岳寺、そして歌舞伎の演目にもなっている『仮名手本忠臣蔵』が有名だが、幅広い世代がご存知かというと必ずしもそうではない。しかしそこには歴史があり、それを今の時代のニーズに再構築して国内外へ発信していく。そして松竹の持つエンタテイメントをプロデュースする力と、JR東日本のネットワークを使い、高輪に限らず全国各地、ねぶたなど地域に根づく全国のお祭りを再構築し、日本だけでなく世界へ広げることで地域の歴史や物語を未来へ紡ぎ、新たな交流や地域活性に貢献していきたい」(髙𣘺氏)

MoN Takanawaでの協業内容

記者会見には、歌舞伎俳優 尾上菊之助氏がゲストとして登壇。今回の提携について「歌舞伎が大きな力添えができると思っております。歌舞伎の演目は時代もジャンルも問わず柔軟に対応しており、たくさんの芸能文化とともに双方が発展してきたという歴史があります。常に新しい話題や演出を取り入れ、進化・発展してきました。この度両社が取り組まれる新しい日本文化体験の創造ということに対しては、歌舞伎が持つ歴史、経験、進化し続ける精神というものが大きな役割を果たし、歌舞伎においても大きな新しいチャレンジの場になるのではと考えています」とコメントした。

歌舞伎俳優 尾上菊之助氏