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高輪ゲートウェイシティ開業まで150日 イノベーションで「地球益」実現

高輪ゲートウェイシティの模型。手前がTHE LINKPILLAR 1で、駅に直結する

JR東日本は、2025年3月27日にまちびらきを迎える、山手線・高輪ゲートウェイ駅直結の「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」の、まちびらき150日前記者発表会を実施した。

JR東日本が品川車両基地跡地にて手掛けるプロジェクト。まちびらき時には、主要4棟の1つであるTHE LINKPILLAR 1が開業するほか、高輪ゲートウェイ駅が全面開業する。2026年春にはその他の棟が完成し、グランドオープンを迎える。

品川駅高輪口側の駅前から見た高輪ゲートウェイシティ。手前側に見えるのがTHE LINKPILLAR 1
開業スケジュール

高輪ゲートウェイシティの中核施設として、ルミネによる商業施設「ニュウマン(NEWoMan)高輪」が順次開業することも発表されている。ニュウマン高輪はルミネ史上最大規模の延床面積約60,000m2の規模となる。

発表会では施設の詳細やコンセプトについて説明があったほか、同日名称が発表された文化創造棟「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」の詳細も公表した。

日本初の鉄道が走ったイノベーション発祥の地

プロジェクト全体については東日本旅客鉄道 代表取締役社長 喜㔟陽一氏が説明。この地が、海上の築堤を日本初の鉄道が走った地であるという歴史を紹介し、「江戸時代は海であり、高輪大木戸がある江戸への玄関口だった。150年前に、海上に堤を築き、海の上を鉄道が走った。ここは日本と西洋の技術が掛け合わされ、日本のイノベーションを生み出した場所と言える」と説明した。

東日本旅客鉄道 代表取締役社長 喜㔟陽一氏

そういった場所で、品川から田町まで全長約1.6kmにおよぶ、JR東日本グループが手掛ける都心最大級の複合都市を開発。「世界に新たなイノベーションや文化を発信する場として、まちづくりに取り組む」と述べた。

開発が進められる中で2020年に、明治初期に構築された高輪築堤の一部とみられる構造物が出土した。

喜㔟氏は高輪築堤について、「鉄道人にとって大切な記憶が宿るものであり、鉄道人の責務として、街づくりの中でしっかりとこれを継承、保存し、また整備・活用することでイノベーションの地としての大切な記憶を次世代につなぐ」と説明。'25年3月にまちびまちびらきをするエリアにおいては、築堤の意思を植栽の一部やサイン等に採用。また、鉄道が走ったラインの上にレールを埋め込むなど、日本で初めて鉄道を走ったこの地の記憶に触れられる環境を整える。

築堤ARプログラム「TAKANAWA LINK SCAPE」にて、築堤にまつわる歴史資料を展示。リアルとバーチャルで歴史を学び、体感できる。

'26年春に開業予定のエリアでは、線路の下を船が行き来した第7橋梁部を80mに渡り現地保存する。さらに再現整備を行ない、築堤を眺められる広場空間として整備する。加えて、THE LINKPILLAR 2には、鉄道開業や日本の近代化の歴史を展示する築堤ギャラリーを開設する。そこでは築堤の土台として使われていた木材を活用する。

そのほか、文化創造棟に隣接する公園にも40mにわたる築堤を現地保存し、様々な視点から眺められるよう、公園の地下に回廊空間を整備する。回廊の設計は文化創造棟の設計者でもある隈研吾氏が手掛ける。

文化創造棟の模型。手前側が公園

まち全体での実証実験で「地球益」を実現

高輪ゲートウェイシティは、150年前のイノベーションの記憶を受け継ぎ、未来のイノベーションへとつなぐという考えのもと開発が進められており、「100年先の心豊かな暮らしのための実験場」として展開。「かつて江戸の玄関口であったように、日本各地や世界への玄関口として、国内外のあらゆる人々、自然、文化とテクノロジーをつなげる」ことを目指し、まち全体での実証実験にのぞむ。

こういった取り組みにより社会課題の解決を図るまちとして、キーワードに掲げるのが「地球益」。環境問題に代表される深刻化する社会課題に対し、高輪ゲートウェイシティでは「ビジネス、 文化、エネルギー、地域活動など、すべての活動が人や地球の健康につながる未来を目指し、地球にポジティブに貢献していく地球益の実現に取り組む」という。

国際交流拠点の象徴となる駅直結ツインタワーから開業

3月27日には、延床面積で全体の約6割を占めるTHE LINKPILLAR 1を中心に始動。THE LINKPILLAR 1の一部施設や、高輪ゲートウェイ駅の品川寄りの南改札および構内店舗が開業する。

開業時には、広場でのマルシェを始め、街の未来の姿を先行体験できるシアターを設け、国内初公開のキネティックアートが楽しめるナイトミュージアム&バーや、アートインスタレーションなど、20を超える多彩なイベントプログラムを用意する。

THE LINKPILLAR 1は、国際交流拠点の象徴となる駅直結のツインタワー。国際的な企業の本社などが入居するオフィスのほか、2千人規模のMICEに対応するコンベンションホール/カンファレンスルーム、ラグジュアリーホテル、商業施設、ビジネス創造施設を有する。さらに、ホールの枠組みにとらわれない、まちの広場全体を活用した「街ごとMICE」の展開を可能とする。

SOUTH棟高層階には、首都圏初進出のラグジュアリーホテル「JW マリオット・ホテル東京」が2025年秋に開業。ホテル内に、旅をデザインする新たな観光拠点として「高輪ゲートウェイトラベルサービスセンター」を設置する。

商業施設のNEWoMan高輪については、これまではファッションビルとして主に女性に向けた提案をしていたが、高輪ではテクノロジー、社会性、地域性にフォーカスをした新しいライフスタイルを提供。例えば、最新のフードテックを活用したフードロスにも貢献しながら旬なものに出会える店や、毎日立ち寄りたくなるような親子をテーマとした書店、書店を中心としたアート性の高い遊具などにより、高輪住民にも価値のある施設とする。

同日に新改札が使用開始となる駅構内には、エキナカ公園空間「Eki Park」を設置。また、4店舗がオープンし、製造過程を見て楽しめるなど体験価値を提供する。そのほか、エキナカDJイベントを定期開催するなど、「ワクワクする体験価値を駅でも創造する」としている。

来街者が夜も楽しめるまちに

南北約1km、約4haのパブリックレルムは、東海道53次に着想を得た「53 Playable Park」のコンセプトで、多様なアクティビティと交流を生み出す。

「高輪辻広場」では地域のお祭りやコミュニティを造成するイベント等を展開。国道15号線側の約300mのストリートは初めて列車が走った場所ということから、過去と未来をリンクさせる意味で「高輪リンクライン」と命名した。

「Gateway Park」は駅前に位置し、噴水を設置。このまちのゲートウェイとして、イベントや実証実験を展開する。

まちを横断する1km超のストリートは、人や情報つなぐ道であった東海道になぞらえ「新東海道」と命名。アンブレラフリーで歩行できるほか、次世代のモビリティが行き交う道となる。

そのほか、様々なライティングシステムを活用した演出や、かつての港の情景に思いをはせた光の表現など、夜のランドスケープにも力を入れている。

国内外からの来街者が夜も楽しむことができる飲食やエンターテインメントも推進。音楽イベントや屋内ルーフトップレストランなどを展開する。

都市OS活用「TAKANAWAイノベーションプラットフォーム」

高輪ゲートウェイシティでは、都市OSを活用したまちづくり「TAKANAWAイノベーションプラットフォーム(仮称)」を推進。街に訪れるすべての人を対象に、街から得られるデータ、JR東日本が持つ鉄道や駅のデータ、KDDIが有する人流データなどを活かし、ロボットプラットフォームや街独自のアプリによるサービスを提供する。

また、ファイナンス機能を備えた広域スタートアップエコシステムを展開。拠点として、国内外のスタートアップ100社以上と、東京大学、シンガポール国立大学、パスツール研究所などを掛け合わせ、知を生み出し・育てるビジネス創造施設「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub(LiSH)」を設置する。

ファイナンス面からも社会実装を支援するため、「TAKANAWA GATEWAY 地球益投資事業有限責任組合」(高輪地球益ファンド)を設立する。

地球益の実現に向けては、モビリティ、環境、ヘルスケアの3つを重点テーマに掲げ、CO2排出量実質ゼロのまちづくり、水素由来の電気で走る自動走行モビリティやオンデマンドモビリティ、最新技術を活用するとともに様々な団体と連携したヘルスケアサービスなどを展開する。

'26年春開業予定のTHE LINKPILLAR 2が、まちでのくらしを支える複合棟としての役割を担う。

イノベーティブなまちの価値を向上させる文化創造棟

文化創造棟「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」は、企画運営を担うJR東日本文化創造財団を立ち上げ、国内外からの来街者が文化を通して交流する文化創造拠点として整備。イノベーティブなまちを創造するには、テクノロジーやビジネスだけではなく、文化面においてもエンジンが必要との考えから、全体の価値を向上させる場となることを目指したアクティビティやプログラムを提供する。開業予定は'26年春。

文化創造棟模型
文化創造棟について説明するJR東日本文化創造財団 TAKANAWA GATEWAY CITY 文化創造棟準備室長 内田まほろ氏

名称については、「MoN」には様々な分野をつなぎ新たな自分と出会う「門」、「Museum」には未来へ向けて物語を集め「知をつなぐ」、「Narratives」には伝統と未来をつなぎ新たな「物語」を100年先へ、という意味が込められている。

館内は、プログラムスペースとパブリックスペースで構成。プログラムスペースとして、施設全体のメイン会場となる約1,500m2の「BOX1500」、および「BOX1000」「TATAMI」「BOX300」にて、展覧会、ライブ・パフォーマンス、実験的なプロジェクト、和の文化プログラムを展開する。

フロアマップ
文化創造棟断面模型

BOX1000は着席最大約1,200席、スタンディング約2,000名の収容が可能。TATAMIは約100畳の畳スペースで、和の文化とテクノロジーを掛け合わせたプログラムを実施する。BOX300は壁が開閉する自由な実験空間で、夜はDJやパブリックビューイングなどのイベントを実施する。

パブリックスペースについては、月見テラス・足湯、メディアシェルフ、屋上庭園・菜園を展開する。

実施するプログラムについては、アニメ×歌舞伎、漫画×ライブ、歴史×エンタメといった分野横断を実現するテーマで、各スペースで連携した催しを計画している。

活動方針としては、コンテンツ開発や高輪地域のコミュニティ醸成、全国連携を推進。全国連携についてはJR東日本が有する鉄道のネットワークも活かす。また、日本の文化を世界に発信するとともに、海外のコンテンツを日本に導入し、文化の国際的なハブとして機能することを目指す。

施設規模は地上6階、地下3階で、外周に設けられたスパイラル状のスロープを上って屋上庭園まで歩いて移動できる。緑に覆われていて季節を感じることができるほか、線路側は鉄道も見えることから鉄道ファンに楽しんでもらえることも期待しているという。

敷地面積は7,977.31m2、延床面積は28,952.55m2、高さは44.98m。外装デザインアーキテクトは隈研吾建築都市設計事務所。