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転倒検知で業界横断プラットフォーム YKK APやドコモら参画
2024年10月4日 20:45
YKK AP、大東建託、NTTドコモ・ベンチャーズ、中部電力の4社は、トータルフューチャーヘルスケア(TFH)に出資し、主に高齢者などを対象とした、生活空間での転倒や疾患リスクの早期発見モデルを実現する業界横断のプラットフォームを発足する。製品の試作や実証実験が開始されており、2025年度から具体的な商品を展開していく。
イーソリューションズ子会社のトータルフューチャーヘルスケア(TFH)がプラットフォームの企画・構想を行ない、YKK APら4社が事業パートナーとしてこれに呼応、プラットフォームに出資するほか、各社がそれぞれの分野で具体的な製品を開発する。実証実験には医療機関も参加する。
また、TFHやプラットフォームに助言を行なうエグゼクティブパートナーとしてさまざまな業界から15名が参加。さらに医療・工学など約200名の専門家からアドバイスが提供される環境も構築する。
技術パートナーとしては、ミリ波を使うレーダーセンサーで転倒検知技術を開発するVayyar(イスラエル)、顔写真からさまざまなバイタルデータを取得するアプリ・技術を開発するBinah(イスラエル)、音声から声帯の状態を分析して疾患リスクを検知する技術・サービスを開発しているPST(日本)と提携、これらの技術をTFHが日本の生活空間向けに最適化し、TFHのプラットフォームを通じてYKK APら事業パートナーに提供する。技術パートナーはさらに3社と提携協議を進めており、内容を拡張していく。
当初の製品は、自宅や介護施設といった高齢者の生活空間の天井や壁などにVayyarのミリ波レーダーによる転倒検知センサーを取り付けるというものが想定されており、2025年度に展開される予定。その後、Binahのバイタルデータアプリと、PSTの音声による疾患リスク検知サービスを組み合わせたものが2026年度に展開される予定。TFHはこれらのデモンストレーションを行なえるショールームを麻布台ヒルズの中に用意し、関心のある企業に説明できる体制を整えた。
YKK APは建材開発、大東建託は賃貸マンションや子会社の介護サービス、中部電力は電力メーターを応用した見守りサービスの拡張、ドコモは通信サービスなど、各社が自らの領域にとりこんで製品を開発していく形になる。
現在すでに、いわゆるスマートホーム関連のデバイスや、スマートウォッチなどのスマートデバイスでも、見守りサービスやバイタルデータの取得、転倒検知などの機能・サービスが提供されている。TFHのプラットフォームがこれらと異なるのは、一気通貫のビジネスモデルで、早期発見から救急搬送にまでつなげることとしている。
また、グローバル市場に視野を広げ、高い技術力を持つ「技術パートナー」を厳選していることもTFHのプラットフォームの特徴。例えばミリ波レーダーを使うVayyarのセンサーは、カメラ撮影と違い、特徴点を抽出するプライバシーに配慮した形の稼働が可能で、トイレやお風呂などあらゆる場所への設置が可能。
転倒検知では、例えば加速度センサーを使うスマートウォッチの場合、高齢者で実際に多いという“崩れ落ちるような転倒”の検知は困難とされるほか、意識を失った後ではデバイスの操作は困難だが、ミリ波レーダーではゆっくりとした転倒や転倒後の様子を通常とは異なる状態として検知可能。また入浴中にヒートショックなどで体調を崩し溺水するケースについても、ミリ波レーダーは水面や水没した状態を検知できる。
生活空間における転倒検知の重要性
TFHのプラットフォームが転倒の検知に注力されているのは、高齢者において、生活空間で急変が発生し転倒するケースが非常に多いため。転倒の早期発見が非常に重要な課題という考えのもとプラットフォームが構築されている。また早期発見は医療費削減にも効果的としている。
転倒は、疾患・発病の結果として転倒する重篤なケースもあれば、認知症やフレイルなど“病気の兆候”として転倒するケースもあるという。また転倒によって骨折した場合、寝たきりになるリスクも高まる。
TFHのプラットフォームでは、こうした生活空間での疾患リスクを検知できるようにして、転倒に至るような病状の進行を抑制するよう診療を促したり、転倒した際に迅速な救急搬送に繋げられるような仕組みを構築し、社会課題の解決に貢献していく方針。