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板橋に都内最大の街づくり型物流施設 災害時退避やドローン場併設

三井不動産と日鉄興和不動産は、都内最大の街づくり型物流施設となる「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」を9月30日に竣工した。「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」は延床面積約77,400坪(25万m2超)と都内最大の物流施設。首都高速5号池袋線「中台IC」出入口から約2.7km、都営三田線「西台」駅から徒歩10分の位置にある。

施設内にはワンフロア約11,000坪の倉庫区画、大規模冷凍冷蔵倉庫、板橋区と連携した災害対策設備のほか、地域に開かれた緑地広場や、東京都初となる物流施設併設型ドローン実証実験の場「板橋ドローンフィールド」も備えている。

都内最大の街づくり型物流施設

テナントはほぼ90%入っており、そのほかも引き合いが多い状況で「おおむね満床」だという。物流施設としてのテナント数は4社。説明会では施設概要のほか、地域に貢献する防災・環境配慮の取り組み、新産業創出に資する新たな取り組み等について説明され、ドローンのデモンストレーションも行なわれた。

ドローンフィールドにはドローンスクールなども開校される
併設される板橋ドローンフィールドの全体像

日常と非日常時の両方の局面で地域に貢献

日鉄興和不動産 執行役員 企業不動産開発本部 副本部長 加藤由純氏

記者説明会ではまず、日鉄興和不動産 執行役員 企業不動産開発本部 副本部長の加藤由純氏が立地特性や地域貢献への取り組みなどの概要を紹介した。「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」の物件は1935年より80年以上も日本製鉄の製鉄所として操業されてきた土地。その土地を2021年に日鉄興和不動産が取得した。大きな物件となることから三井不動産と協業し、大規模物流施設開発プロジェクトを推進してきた。

日鉄興和不動産はビル事業、住宅事業、物流事業を主要事業として展開している。特徴は全国の日本製鉄グループの製鉄所エリアを中心に、地域再生事業に取り組んでいること。特に遊休地の開発を進めており、日本全体での開発総面積は570ha(東京ドーム121個分)に及ぶ。

「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」が位置する立地は、荒川が氾濫すると最大7m浸水する可能性がある。そこで板橋区とも協議を重ね、防災拠点としての整備と同時に、豊かに暮らせる憩いの場の整備と、日常と非日常時の両方の局面で地域に貢献できる「フェーズフリー」な開発を目指した。

日常と非日常時の両方の局面で貢献できる「フェーズフリー」な開発を目指した

地域貢献の取り組みとしては、新しく整備された官民連携による「高台まちづくり」の取り組みを国内で初めて採用した。浸水時に活用できる退避路(デッキ)の整備、水害時に逃げ遅れた地域住民1,000人が退避可能な一時退避場所を整備した。そのための非常食も2週間分備蓄している。さらに災害時に活用可能なヘリポートの整備を実現した。

国内初となる「高台まちづくり」

また、災害物資の保管・配送拠点となる「災害時配送ステーション」を整備。避難所への物資供給に加えて、広域自治体からの支援物資受け入れの役割を担う。板橋区、入居テナントであるヤマト運輸とも「4者災害協定書」を締結し、万が一の場合の運用体制を構築している。

緑道や開かれた空間も整備
親水公園とシームレスにつながっている

緑道の整備も行なった。隣接する区立舟渡水辺公園から繋がる緑道を親水空間として600mにわたり整備。約9,000m2の地域に開かれた空間を提供する。子供用の遊具が設置された広場や各種イベントが開催可能な広場のほか、余剰電力を区内の小中学校へ供給可能な約4MWの太陽光発電電力も整備した。

多目的に用いることができる広場
太陽光発電の地産地消
屋上に設置された太陽光パネル
屋上にもドローンポートがある

都内最大の街づくり型物流施設

三井不動産 執行役員 ロジスティクス本部長 篠塚寛之氏

三井不動産 執行役員 ロジスティクス本部長の篠塚寛之氏は「MFLP・LOGIFRONT東京板橋は街づくり型物流施設の集大成だ」と述べた。23区内の大規模用地であり、物流インフラへのアクセスが良い。工業専用地域での大規模開発であることから、大規模マテハン機器の導入も可能。

共用部も充実しているため従業員確保にも有利であり、環境性能やBCP対策の側面でも高いスペックを持っているという。各テナントは拠点の最適化によるコスト削減や配送リードタイム短縮が可能になる。

都内最大の街づくり型物流施設

内部も業界トップレベルの施設、洗練されたデザインを採用。地域に開かれた「街づくり型開発」を行なうことでエリア全体の価値が上がり、施設の価値も上がる、良い循環を目指しているという。「単なる物流施設だけではなく、託児所など社会のニーズに応えるような施設をミックスさせることで、エリア全体の価値を上げたいと考えている。施設自体の共有部にも力を入れ、経営課題となっている従業員確保にも非常に有利になる」と述べた。

施設スペックは業界トップレベルだという

ドローンによる新産業創出も目指す

三井不動産はドローン産業の今後に着目

三井不動産は不動産デベロッパーから産業デベロッパーとして社会的価値創出を目指している。「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」では「板橋ドローンフィールド」の開設のほか、新産業創出支援の取り組みも行なう。ドローンは物流効率改善、人員不足の解消のほか、点検人員の省人化・管理費削減、災害支援などに活用できる可能性があると考え、各種取り組みを進める。

ドローン産業創造の場として「板橋ドローンフィールド」を設置

まず東京大学・土屋研究室、ブルーイノベーションと連携し、高層マンションへの配送などの実験・研究を行なう。人材育成については「KDDIスマートドローンアカデミー東京板橋校」を開校。ドローン産業発展に資するオペレーターを育成する実践的な場を提供する。会員制の「ドローンコミュニティ」も創設し、新たな共創ビジネス誕生を支援していく。

まずは高層マンションへの垂直搬送の実験などから始める
ドローンコミュニティ創出を目指す

荒川氾濫時には板橋区の防災拠点の一つとしても活用

板橋区 区長 坂本健氏

板橋区 区長の坂本健氏は「板橋区では荒川の氾濫に備えて水害に強い街づくりを進めている。互いに協議調整を重ねて、高台街づくりを推進してきた。区南部の高台への避難が間に合わない場合に緊急的に退避できる場所として確保してもらった。大型物流施設としての特性とヤマト運輸の管理ノウハウを活用することで実効性のある対策が運営できるものと考える。地域の課題解決として多大な協力を頂いたことを改めて御礼申し上げる。整備された緑道が区民に愛される空間となることを願う」と防災施設としての期待を示した。

デッキスロープは避難路としても使用可能
あおぞら広場のベンチは充電も可能なスマートベンチ

なお、避難路としても活用可能なデッキスロープは、歩車分離の動線によりワーカーの安全性にも配慮されている。今回、防災用品がおさめられた板橋区防災倉庫も公開された。竣工時の在庫は115,000食、2リットルのペットボトルが1,038本。今後増やしていく予定。

板橋区防災倉庫
非常用の食料や毛布が保管されている

地域に貢献する緑地広場・災害対策設備

「MFLP・LOGIFRONT東京板橋内部の通路

説明会では梁下有効天井高5.5m、床の積載荷重1.5t/m2を確保して、ワンフロア約11,000坪の広大なスペースを実現した汎用性の高い大型倉庫のほか、ワーカーのくつろぎの場となる6F「View Lounge」やテナント用事務所スペースなども紹介された。床荷重2t/m2を採用した大規模冷凍冷蔵倉庫は今回は残念ながら公開されなかった。

倉庫スペースは大型設備も導入可能
休憩スペースの6F「View Lounge」。荒川が望める
ボーネルンドの遊具が並ぶ広場は誰でも遊べる

都初の物流施設併設型ドローン実証実験の場「板橋ドローンフィールド」

ドローンフィールド担当者の三井不動産 ロジスティクス事業部 事業グループ 小菅 健太郎氏。

「あおぞら広場」に設置したドローンポートからドローンが飛行して外壁点検や太陽光パネル点検を想定したデモを行なったり、狭小空間や高所点検を想定した倉庫内を飛行する実演デモンストレーションなども実施された。

ドローンフィールド担当者は三井不動産 ロジスティクス事業部 事業グループの小菅健太郎氏。監修は日本USA産業振興協議会(JUIDA)理事長 鈴木真二氏が行なっている。会見ではドローンの未来を歌い上げる華々しいビデオが上映された。

日本USA産業振興協議会(JUIDA)理事長 鈴木真二氏
屋内での狭所点検デモを行なったドローン
「あおぞら広場」でのドローンデモ
屋外では屋上に設置されている太陽電池パネルの点検デモを行なった

高さ約13.7m、5面をネットに囲われたドローン飛行用施設の「ネットフィールド」は、ドローンスクールなどに用いられる。ドローン不在時はフットサルコートとして開放される。こちらではブルーイノベーション 代表取締役社長の熊田貴之氏が今後の取り組みなどについて紹介した。

「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」では主にコミュニティ創出に力を入れるとのこと。オープンイノベーション拠点となるラウンジスペース「Drone Lounge」も設置されている。また、今回のデモは3箇所で行なわれたが、もっと多くのドローンが飛び回るような活用も考えているそうだ。

ドローン不在時はフットサルコートとして使用可能なネットフィールド
ブルーイノベーション 代表取締役社長 熊田貴之氏
オープンイノベーション拠点として用いられるラウンジ「Drone Lounge」

「MFLP・LOGIFRONT東京板橋 MIRAI FES」も開催

左から三井不動産 執行役員 ロジスティクス本部長 篠塚寛之氏、日鉄興和不動産 執行役員 企業不動産開発本部 副本部長 加藤由純氏、板橋区 区長 坂本健氏による記念撮影

10月26日には「MFLP・LOGIFRONT東京板橋 MIRAI FES」と題して、ドローン操縦体験や中澤佑二さんのスペシャルトークショーも開催予定。入場は無料。詳細は公式サイトを参照のこと。