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ズーラシアで自動運転バスの実証実験 NTT Comなど9社

NTTコミュニケーションズを代表機関としたコンソーシアム9社は、横浜市と共同で自動運転バスの走行に関する実証実験を9月30日~10月8日まで実施する。最先端の通信技術と、路車協調システムを活用し、混雑エリアにおいても安全に自動運転が実現可能かを検証するもの。場所はよこはま動物園ズーラシア付近。

バス業界における人員不足により、自動運転バスの導入が有望視されているが、自動運転レベル4相当での走行では、警察庁のレベル4に向けたガイドラインに則した遠隔管制(車両情報や映像によるリアルタイムでの遠隔監視)が必要となる。このため、都市部や観光地などの混雑エリアでは、通信が不安定になるなどの課題がある。

また、自動運転車両走行には死角にある一般車両や歩行者などを適切に検知し、車両の制御を行なう必要がある。

実証実験会場の「よこはま動物園ズーラシア」は、年間約100万人が訪れるエリアで、特に平日は人出が少ないが休日には多くの来場者が訪れるという環境。緩急のある人流を活用してさまざまな実証実験を行なう見込み。運行する車両は、日野自動車「ポンチョ」で、自動運転レベル2の車両。

よこはま動物園ズーラシア
日野自動車「ポンチョ」

自動運転車両の走行には、車両情報や映像によるリアルタイムの遠隔監視が必要であり、特に通信の揺らぎが大きい混雑エリアでは、安定した通信システムと適切な映像処理が必要になる。今回の実証実験は、通信が混雑した環境で実際にどのような通信方法が有効かどうかを検証する。

車内に設置されたモニタで車両の状況をみることができる
運転士は基本的にハンドルを握らない

具体的には、「IOWN」の構成要素である「Cradio」を使い、複数のネットワークサービス(ローカル5Gと5Gワイド)の無線品質の劣化を予測し、未然に切り替える通信システムの検証と、無線リソースの優先割り当てや、映像伝送の遅延やカクつきを最小限に抑える「AV-QoS」の検証を行なう。これにより、異なるネットワーク間でのデータの受け渡しがスムーズに行なえるかを確認する。

走行ルートは、よこはま動物園正門5番バス停 → 北門バス停(乗降なし)→ 正門5番バス停の約2km。バス停付近は5Gで通信を行ない、道路上ではローカル5Gで通信を行なう。ルートのローカル5Gの基地局は、WiGigを使って通信をリレーすることで、車両からの情報を遠隔監視室に中継する。

周辺には「スマート道路灯」も整備。既存の道路灯を、AIカメラを搭載した道路灯に置き換え、信号などの道路設備がなく、死角の多い環境でも、AIカメラによってクルマや歩行者の接近を知らせることで安全を確保する。また、自動運転車両が接近中であることを歩行者などに知らせる役割を持つ電光掲示板も設置している。

スマート道路灯
電光掲示板で自動運転バスの接近を知らせる

遠隔監視室には「車両情報」「遠隔監視」「路車協調」を表示する3台のモニタを設置。路線バスの運転経験者が監視を行なう想定。

遠隔監視室には3つのモニタ
車両情報
遠隔監視
路車協調

将来的には3つのモニタを1つにまとめ、「1車1台」のモニタ、1人で複数の自動運転バスを監視できるようにする。また、監視業務については、運転経験者以外の人材も採用できるような仕組みも検討している。

現在はレベル2での自動運転だが、実証実験はレベル4自動運転を想定して検証を行ない、将来どのようなネットワークインフラが最適かを検証。2027年までに各技術の自動運転サービスへの商用適用を目指す。

コンソーシアムの参画企業は、NTTコミュニケーションズ、相鉄バス、先進モビリティ、東海理化、スタンレー電気、パナソニック コネクト、ドコモ・テクノロジ、NTTテクノクロス、NTTデータ経営研究所の9社。

なお、10月1日~8日の土日を除く6日間は、一般を対象に体験搭乗も可能。試乗専用乗車予約サイトからの事前予約制。