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メルカリ、「高価格帯」強化へ 堅調な日本事業、USは反転せず

メルカリ 山田進太郎 代表取締役 CEO(写真提供:メルカリ)

メルカリは13日、2024年6月期決算を発表した。売上収益は前年比9%増の1,874億円、営業利益は同13%増の188億円と堅調だが、通期GMV(総流通額)成長率は目標の10%に対し、9%と未達となった。一方、越境ECやBtoCの伸びは堅調で、スキマバイトの「メルカリ ハロ」もユーザー数を伸ばしている。

中期的には、メルカリのエコシステムを外部のパートナーと連携して拡大。日本のメルカリでは、CtoCの安定的成長のほか、越境ECを強化。メルカリ ハロの拡大に注力する。Fintech事業は、メルカードを中心に「第2の柱」への成長を目指す。US事業については、2025年6月期中のブレークイーブンを目指す。

各事業のシナジー強化などにより、今後3年間で売上収益CAGR(年平均成長率)25%を目標とし、2025年6月期は同社として初めて、期初時点での連結業績予想を開示した。売上収益は前年同期比7~12%増の2,000~2,100億円、営業利益は同17~33%増の220~250億円。

メルカリは「鑑定」など高価格帯強化

日本のメルカリなどマーケットプレイス事業は、ロイヤルティプログラムや越境EC、BtoCなどが伸びたが、GMV(総流通額)成長率は前年同期比で9%増の1兆727億円で目標の10兆円には未達。売上収益は1,072億円、調整後コア営業利益率は40%で高い収益性を確保し、グループ全体を支える構図となっている。

来季はCtoCの安定成長に加え、越境取引やBtoCなど、高い成長により、GMV成長率+10%前後を、調整後コア営業利益率は37-42%を目指す。この中にはスキマバイトの「メルカリハロ」も含まれる。

メルカリの拡大に向けて、AIやLLMを活用したUI/UXの改善に取り組むほか、高価格帯カテゴリーの強化を図る。ひとつは「鑑定」を伴う機能で、ラグジュアリーブランドについて本物かどうかを確認した安全な取引などを強化する。またクルマや周辺パーツ、トレーディングカードなどは、「高価格が故に個人の信用だけで取引が起こりづらいものがあった。何らかのサービスを付与することで伸ばせるのではないか」(メルカリ 山田進太郎CEO)とした。

また、越境取引とメルカリShopsなどBtoCが拡大しており、越境取引は3.4倍、BtoCは2.7倍に増えている。こうしたCtoC以外の出品が増えることが、結果としてメルカリ上の取引拡大につながるとして、強化していく。

一方、メルカリ ハロについては、ワーカー登録数が500万人、パートナー拠点数5万といった数字以外は非公開だが、「想定よりは強い需要がある」とし、全国展開に向けた強化を図る。新規事業としては、メルカリ上の「広告」事業もテストを行なっているという。

Fintechも好調 USは不調でGMV減 人員削減も

Fintechについては、メルカードが牽引し、通期売上収益は前年同期比40%増に伸長。2期連続の通期コア営業利益黒字化となった。売上収益は437億円、コア営業利益は7億円。

「メルカード」発行枚数は340万枚を超えたほか、カード保有に伴う「メルカリ」内ARPU(ユーザーあたりの平均売上)が50%向上するなどグループシナジーが高いとする。また、メルカード開始に伴い、自社決済比率が6ポイント向上し、コスト削減効果もメルカードにはあるという。

Fintechでは「定額払い」が好調。Fintech債権残高は前年同期比52%増の1,872億円。回収率は99.2%。また、Fintech事業に含まれる暗号資産取引の口座開設数は220万を超えた。

Fintech事業では、引き続き「メルカード」ユーザ獲得を進めるほか、支払手段やロイヤルティプログラムの拡充などを図り、継続的な増益フェーズへ移行。コア営業利益30億円以上を目指す。

好調な2事業に対し、US事業は苦戦。売上高は前年同期比9%減の293百万米ドル、調整後営業利益は17百万ドルの赤字だが、赤字幅は圧縮された。GMVも前年同期比10%減の913百万ドル。

メルカリでは、「インフレの長期化をはじめとする外部環境の影響によって、成長軌道に戻せず」と説明。春には販売手数料を無料化し、買い手から手数料徴収する形に大きな施策を打ったものの「GMVへの寄与は現時点では得られず」という。そのため、6月には人員削減を含む組織再編を実施し、プロダクト改善などを進めながら2025年6月期のブレークイーブンを目標とする。

なお、SHIENやTemuなどの中国系ECの影響については、「利用者の可処分所得が、限られている以上、(コロナ禍からの)Back to Nomalにおいて影響はあるだろう。ただ、我々ができることは、我々がフォーカスしたお客様にとって適切なサービスを提供すること。我々としてできることをやっていく。そこで明確な影響があるとは思っていない」とした。

また、Fintech事業における「給与デジタル払い」対応については、「先週、PayPayさんが認可されたので、流れはできてくるだろう。選択肢が増えるのはいいことで、早く対応したいが、規制等の問題はある。いつ実現できるかの言及は難しい」と説明した。