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ソニーがオーディオに適した再生プラスチックを開発する理由

HT-A9000

ソニーは、ホームシアターシステムなど、オーディオ製品において再生プラスチックなど環境対応を進めている。2024年モデルのサウンドバー「HT-A9000/A8000」とホームシアターシステム「HT-A9M2」、肩掛けスピーカー「HT-AN7」など「BRAVIA Theater」において、再生プラスチックを大々的に使用し、バージンプラスチック利用を50~65%削減。再生布やパッケージの環境配慮などを含めた環境対応を推進している。

社会的に環境対応が求められる中、ソニーグループでは、2050年までに事業活動と製品のライフサイクルを通して、「環境負荷ゼロ」の達成を目指す「Road to ZERO」を掲げている。そのため、中期目標として2025年の達成を目指す「Green Management 2025(GM2025)」を定めて、製品のプラスチック使用量の削減を進めている。

Green Management 2025では2018年比でバージンプラスチック使用量10%削減を目標としている

新品の素材だけを使う「バージンプラスチック」を減らし、環境負荷の削減を目指す取り組み。ソニーグループは従来より再生プラスチックの導入に取り組んできたが、オーディオ製品においては、燃えにくさ(耐燃性)や加工しやすさ(成形性)などの基本的な課題のほか、「音質への影響」というオーディオならではの課題があった。

今回、音にも環境にも妥協しない、高音質再生プラスチックの開発により、ホームオーディオ製品での再生プラスチック比率を拡大した。新たな再生プラスチックは、使用済みの水ボトルや、工場・市場から排出された廃ディスクなどを原料に使用。原料は、フィルムやコーティング剤を除去して、原料に配合される。ソニーでは、「美しく響く音」を目指し、配合を調整し、何度も試作しながらオーディオ製品のための独自材料を作り上げたという。

このオーディオ製品用の再生プラスチック「良音再生PC/ABS樹脂」は、ポリカーボネート(PC)とABS樹脂を組み合わせたもの。

ソニーでは従来より、ABS樹脂の響きがソニーの音作りにマッチしているため、音質の観点から長年ABS樹脂を採用してきた。しかし、近年の各国の環境規制の広がりにより、難燃剤の脱臭素化が求められていたこと、同社のGM2025に規定されたバージンプラスチック削減目標の達成のため、ABS樹脂の置き換えとして新たな素材開発が必要だったという。

ディスク(左)や水ボトル(右)からの再生素材を活用
独自の素材を開発

この「良音再生PC/ABS樹脂」は、2種類の再生PC樹脂材料を併用することで、長期信頼性を確保し、再生材における“脆さ”という課題を払拭。加水分解性試験や長期保存試験、光加速試験などの各項目でバージンPC/ABSと同等以上の性能を実現したという。

PC部分は全て再生樹脂とすることで、高い再生材率を実現。ABS樹脂(バージン材)とリン系の難燃剤による難燃性能を確保している。

加えてサウンドバーなどの長尺製品には、グラスファイバー(GF)を5%配合。製品化の薄肉化に対応しながら、高剛性化を図った。

これにより、バージンプラスチックの使用量はサウンドバーのA9000/A8000で65%削減、ホームシアターのA9M2で50%、ネックスピーカー「AN7U」で55%削減され、本体再生プラスチック比率も約40~55%まで向上した。従来製品では、「ほぼ100%バージンプラスチック」とのことで、再生素材の採用を大幅に増やした形だ。

また、サウンドバー等に使われる布素材もリサイクル素材を採用。パッケージなども環境配慮素材や紙素材に改めている。

音質、長期信頼性、高再生材率、難燃性能、高剛性化の5つの目標を達成したことからオーディオ製品への搭載を本格化。オーディオ製品は製品ライフサイクルが長いこともあり、今後順次新製品で再生プラスチック比率を増やしていく方針。