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NEC、地盤沈下に強く高精度な潮位測定技術 LiDAR活用

NECは、3D-LiDARを活用し、遠方からでも高精度に潮位を測定できる技術を開発した。地震などの災害で津波が発生した際、潮位の計測機器を設置した場所で地盤隆起・沈下が起きても、それらの影響を受けにくく継続的な潮位の把握が可能になる。また、NECが6月に東京港で行なった潮位測定の実証実験では、海上遠方の潮位を高精度に測定できることを確認している。

地震や噴火などの災害により津波が発生した際、潮位の変化を即座に把握することが重要になるが、現在の電波式やフロート式の潮位計測システムは測定可能距離が20m程度のため、検潮所を海岸線に設置して海水を引き込み、検潮儀を水面の直上に設ける必要がある。

しかし、地震などの災害で地盤隆起・沈下が発生すると、水面までの距離不足や検潮所の水没などにより潮位の測定が困難になってしまう。実際に1月の能登半島地震では、一部海岸線の地盤隆起により計測不能になり、計測の再開までに時間を要している。

今回の技術は、3D-LiDARによる赤外線レーザー光を、海上に浮かせた浮標(ブイ)に照射し反射光を捉えて距離を計測する仕組み。最先端の長距離・大容量光送受信技術(コヒーレント受信技術)を活用した長距離3D-LiDARにより超高感度な光受信を実現し、遠方から物体の3次元点群データを取得可能にした。

これまでの技術検証では、陸上500m遠方の物体の高さ計測を実現していたが、今回の実証で初めて海上60m遠方の潮位を2cm程度の誤差で測定することに成功している。また、取得した3次元点群データにクラスタリング処理を行ない、ブイの形状と周辺地形を高精度に分類した上で、それらを照合して位置補正を行ない、ブイの高さを推定する3次元水位計測技術も開発。これにより様々な場所や角度から計測可能となり、場所を選ばずに3D-LiDAR機器を設置できるようになった。

これらにより、海岸線で数m規模の地盤隆起・沈下が起きてもその影響を受けにくい場所に検潮所を設置でき、災害に強く継続的な潮位の把握が可能になる。また、可搬型で設置場所の自由度が高い機器により、設置コスト低減と設置時間の短縮も実現する。

今後は、測定可能な距離を数100m程度に延長するとともに、3D-LiDARによるデータと周辺の地図情報を照合して測定精度を向上するなど開発を進め、2025年度内の実用化を目指す。