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アップルやグーグルら大手IT規制 スマホソフト競争促進法が成立

スマートフォンのOSやアプリストアなどを手掛けるGoogleやAppleら、大手テクノロジー企業を規制する「スマホソフトウェア競争促進法」が、12日の参議院本会議において可決、成立した。

スマホソフトウェア競争促進法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律案)は、スマートフォンが国民生活や経済活動の基盤となっている中で、そのOSやアプリストア、ブラウザ、検索エンジンなどの「ソフトウェア」における市場競争環境の確保を狙うもの。

スマホのOSやブラウザなどは、「社会インフラ」のような重要性を持つ一方で、大手事業者による寡占状態となっている。これらの事業者による競争制限行為が行なわれると、公正で自由な競争環境が失われるが、これらの巨大市場では新規参入による自発的是正は難しい。また、独占禁止法による個別対応では長い時間を要するため、公正で自由な競争の回復が困難となる。

そのため新法では、スマートフォンのOS、ブラウザ、アプリストアなどにおいて、セキュリティの確保等を図りながら、競争を通じた市場活性化や多様なサービスの選択が可能な環境の整備を目指す。

具体的には、公正取引委員会が、OS等の「特定ソフトウェア」を提供する事業者のうち、ソフトウェアの種類ごとに、一定規模以上の事業を行なう場合、規制対象事業者として指定する(指定事業者)。

指定事業者は、一定の行為の禁止(禁止事項)や、一定の措置を講ずる義務付け(遵守事項)が定められる。主な禁止・遵守事項は、「他の事業者のアプリストア提供を妨げない」、「他の課金システムの利用を妨げない」、「デフォルト指定を簡単な操作で変更できるようにする」など。

【主な禁止事項と遵守事項】

他の事業者がアプリストアを提供することを妨げてはならない
他の課金システムを利用することを妨げてはならない
デフォルト設定を簡易な操作により変更できるようにするとともに、ブラウザ等の選択画面を表示しなければならない
検索において、自社のサービスを、正当な理由がないのに、競争関係にある他社のサービスよりも優先的に取り扱ってはならない
取得したデータを競合サービスの提供のために使用してはならない
アプリ事業者が、OSにより制御される機能を自社と同等の性能で利用することを妨げてはならない

指定事業者には、毎年の報告書の提出を求める。違反が認められる場合は、是正命令を出すほか、国内での売上の20%を課徴金として課すなどを定めている。

新法は、独占禁止法とは異なり、指定事業者やアプリ事業者などと「継続的に対話」しながら、ビジネスモデルの改善を求める新たな規制とする。

法案成立をうけ、アップルは「日本の消費者のみなさんと、そのみなさんがiPhoneに期待する、セキュリティやプライバシーが確保されたユーザー体験に対して、この法律が実際に与える影響について懸念を持ち続けながら、法律の施行に向けて、引き続き日本の公正取引委員会と密に連携していく」と、懸念を示す声明を発表している。

グーグルでは、「グーグルはこれまで政府に積極的に協力し、変化が早く競争の激しいこの業界における弊社の事業運営について説明してきた。今後も政府および業界関係者と建設的な議論を深めていく」とコメントしている。

EUや米国でも、デジタルプラットフォーム事業者による市場支配に対した規制が導入されており、EUでは3月からデジタル市場法(DMA)の本格的運用が開始、米国においてもプラットフォーム事業者の規制強化の動きがある。日本においても足並みを揃え、新たな枠組みを構築していく狙い。今後1年半以内(2025年12月まで)の施行を予定している。