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2年先の気象予測 日本気象協会が業界初

日本気象協会は、気象業界初となる「2年先長期気象予測」の提供およびコンサルティングを開始する。

これまでは予測技術で担保できる長期予報の精度には限界があったことと、国の予報業務許可制度で認められていた予報の期間は6カ月先までだったことから、1年以上先の気象予測というニーズに応えることが難しかった。

日本気象協会は、予測期間の延長を可能にする技術を筑波大学 生命環境系 植田宏昭教授の助言・協力のもと開発。さらに2023年に国の予報業務許可制度が改正され、気象業界初となる最長2年先までの長期気象予測の提供について気象庁から認可を受け、企業に向けてサービスを開始することとなった。

特徴の1つとして、従来の長期予報よりもリードタイムが長く予測精度が高い点を挙げている。日本気象協会では従来より最長で6カ月先までの月次の気象予測を企業に提供しているが、6カ月先までの予測において、従来の手法と、2年先長期気象予測の手法による予測の精度の比較で、予測誤差に20~40%の改善が見られたという。

また、2年先長期気象予測を使って2023年の月次気温予測を実施したところ、予測が非常に難しかった3月の極端な高温や、7月から9月の記録的な猛暑といった特異な天候も、1年以上前から傾向を予測することができたとしている。

2023年東日本月平均気温における新予測と従来予測の比較

2年先長期気象予測では、月ごとの平均気温、日照時間、降水量について具体的な予測数値を提供。実数値が分かるため、前年や過去5年平均などとの具体的な比較が可能となる。また、全国平均だけではなくエリアごとの予測もあり、地域別の生産計画・販売計画等に活用できる。

2年先の月別日照時間予測のイメージ

気温、降水量、日照時間のほか、月別の台風発生数・接近数、梅雨入り時期、梅雨明け時期などの予測も提供。例えば「梅雨明け日予測」では、地域ごとに具体的な日付で予測するなど、数値データを提供し、気象予報士による解説レポートも発行する。

梅雨明け日予測提供イメージ(左)と台風接近数予測提供イメージ(右)

昨今、技術革新や紛争、気候変動によってこれまでに経験のない事象が世界規模で発生しており、物理学的手法によって未来を予測できる「気象データ」の重要性が一層増していることから開発。特にビジネスシーンでは、海外への資材発注や経営計画の最適化のため、1年以上先の気象予測のニーズが高まっているという。

2年先長期気象予測により、企業における翌年度の年間計画策定や資材発注、製造・販売・CM計画、新商品の開発といったビジネスシーンにおいて、根拠ある意思決定を支援するとしている。

長期気象予測が事業活動と社会課題の解決につながる業界のひとつとして、アパレルを挙げる。衣料品は企画から販売までのリードタイムが長いことから、製造数をコントロールするためには10カ月以上先の需要予測が必要となる。

日本気象協会は、アダストリアからアパレル販売データの提供協力を受け、2年先長期気象予測を活用した場合のファッションロス改善率をシミュレーション。東京都内の店舗における冬物アウターのシーズン合計売上金額について、発注が行なわれる10カ月前時点の長期気温予測を用いて予測をした結果、前年実績を使って生産計画をする場合と比較して、誤差が14%改善するという結果が得られたという。

冬物アウターの売上金額の実績と10カ月前予測

サービス提供は、6月から、1年半先までの月別・エリア別の気温・降水量・日照時間、エリア別の梅雨入り時期・梅雨明け時期、月別の台風発生数・接近数の天候解説を提供。秋から、2年先までの月別気温・降水量・日照時間の予測数値を提供する。

今後は、日本気象協会の「商品需要予測コンサルティング」において、2年先長期気象予測を活用し、POSデータや広告出稿データ、アパレル販売データ、人流データ、レセプトデータ(医療報酬の明細書)といった様々なデータと組み合わせた最長2年先までの需要予測の提供を行なう予定。1年以上先の天候による社会影響や商品需要を具体的に把握し、生産計画や販売計画、経営計画を立てられるとしている。

また、開発した予測手法は、夏のオホーツク海高気圧や冬の北極振動など大気の内部変動に起因する現象が卓越する場合や、統計に当てはまらない事象が起きた場合には、予測誤差が大きくなる。今後、予測誤差が大きくなるパターンを整理し、予測の下振れリスクや上振れリスクの評価を行ない、情報の実用性を向上させる。