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みんなの銀行が3周年。100万口座超えで物理カードも検討 BaaSは法人強化

みんなの銀行は6日、サービス開始3周年の振り返りとともに今後の事業展開について発表した。5月末には「撤退検討」を報じられたが、「具体的な検討事実はない」としており、2027年度の黒字化に向け、個人向けローンのほかBaaS事業のBtoB展開などを目指す。

口座数は5月に100万を超え、ユーザーは10-30代のデジタルネイティブ世代が70%以上。3月末時点の預金残高は256億円。収益化の柱となるローン事業の貸出金は118億円で、前年の48億円から大幅に伸長した。

2023年度は、ことら送金対応や、BaaS事業のパートナー拡大、ローンの定額返済などの機能・サービス強化を実施。また、おトクな情報にアクセスできる「Circle」機能なども提供開始した。

コンシューマ事業は、口座数の拡大とともに、残高、ローン貸出を伸ばしながら、ローンを軸に収益化に取り組む。同行の特徴であるBaaS機能については、2023年以降に5社が追加され、合計14社となった。5月には航空会社のZIPAIRとのMOUを締結し、ZIPAIRのアプリに金融サービスを組み込むことで協力していく。

BaaSのBtoB展開に勝機 個人向けの板カードも検討

今回の説明会は、銀行サービスを企業に展開する「BaaS」機能に時間を割いて説明した。現在、三井住友海上プライマリー生命や、Pixiv、大和コネクト証券、イーデザイン損保、スーパーなど展開するU.S.M.Holdingsらと提携し、各社のアプリにA2A決済や本人確認などの機能をAPIで提供している。BaaSのパートナーが増えたこともあり、2024年度はBaaS本格スタートの年として、強化を図る。

一方、日本におけるBaaSについては、住信SBIネット銀行の「NEOBANK」などもあり、NEOBANKも採用例をかなり伸ばしている。

みんなの銀行の永吉健一頭取は、同行のBaaS事業の特徴としてAPIの個別提供を挙げ、提供先のアプリに組み込む形で、個人向けのサービスが多くなっていると説明する。

みんなの銀行 永吉健一頭取

一方、NEOBANKは金融機能をフルパッケージで提供する仕組みで、住宅ローンや資産運用などを含む銀行機能を提供先企業のブランドで展開する。例えば、「JAL NEOBANK」などだが、そのためには提携先企業が銀行代理業を取得するなどのハードルがある。

楽天銀行が銀行機能を提供する「JRE Bank」なども類似のパッケージ提供型。多くの銀行機能が必要な場合はパッケージ型が選ばれる。一方、GMOあおぞら銀行のように法人向けの銀行APIに強みを持つ企業もある。

みんなの銀行では、機能をAPIで提供できるため、パートナー企業が自社のアプリに組み込め、特に個人向けのアプリにおいて、デジタルを前提としたUI/UXを実現できる点が強み。活用例としては、アプリでの決済のほか、証券など投資サービスでは、待機資金のための口座としては可能性があるとする。

ただし、まだ提供APIが少なく、APIの整備が間に合っていない点は課題という。パートナーからのニーズの把握も進んできたため、APIの強化にあわせて、これらをベースに今後は法人口座や事業性サービスなどの機能強化も目指す。これにより、BtoBでのBaaS事業展開も強化していく。

さらに、将来的にはパートナー企業を通じた事業性サービスや、ステーブルコインの提供なども想定しているという。具体的なBtoB事例については、パートナー企業との検討を進め、2025年ごろから開始予定。

2024年度は30万の口座増が目標で、みんなの銀行側で20万、BaaSで10万と見込む。

個人向けではローンを軸にした収益拡大を軸に据える。ローン事業は立ち上げ時の目論見を下回ったが、その要因として永吉氏は「平均残高が想定の半分ぐらい。また、30歳代以下が7割となったため、既存の与信モデルがフィットしなかった」と説明。ローン開始から1年半が経過し、ユーザーデータが貯まり、自分たちの与信モデルを構築できるようになったため、自社にあった審査ができるようになったことから、今後の拡大が見込めるとする。

また、個人向けの課題として、デビットカードが「バーチャルカードだけ」という点にも言及。高額なアパレル商品の購入など、バーチャルカードだけではカバーできないシーンがあり、コンシューマ向けでは弱点になっているとのことで、物理カード発行も検討課題とした。