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ソフトバンク、LINEヤフー株のNAVERとの交渉は「時間が必要」

ソフトバンク 宮川潤一社長

ソフトバンクは9日、2024年3月期 決算説明会を開催した。事業状況とともに生成AIやLINEヤフー株式の過半取得に向けた取り組み宮川潤一社長が言及した。

ソフトバンクと韓国NAVERは、LINEヤフーの64.5%を保有する中間持ち株会社(Aホールディングス)の株式を50%ずつ保有している。'23年10月に発生したLINEヤフーの不正アクセスによる情報漏洩では、NAVERのPCにマルウェアが感染したことから、被害が発生。52万件のユーザー情報流出につながった。この問題を受けて、総務省からは2度の行政指導を受け、LINEヤフーが管理する情報にNAVER側がアクセスできる委託関係の問題とともに、親会社に委託するという資本構成も問題され、「資本関係見直しの具体化」も要求された。

そのため、LINEヤフーは親会社に資本構成の見直し、具体的にはソフトバンクが株式の過半数を持つ体制への変更を要望しており、ソフトバンクとNAVERの間で交渉が始まっている。

ソフトバンク宮川社長は、交渉の事実は認めるものの、9日時点では明確な進捗はないとする。「LINEヤフーからの要請を受けたので、親会社としてセキュリティガバナンスの強化、事業強化の観点からなにがよいか議論をしている。現在の比率は半々だが、一株でも動けばどちらかがマジョリティになる。ソフトバンクの投資に見合うかどうかを冷静に判断し、事業の展開に影響ない範囲で検討していく」とした。

交渉完了時期については、「相手があることなので、いつまでと言えることはない。じっくり議論していくし、NAVERの考え方も理解した上で話し合っている」とした。なお、「本音を言うと、今日の決算までなんとかしたいと昨日も(NAVERの)CEOと1on1で協議したが保留となった。相手の考えもあるし、よく話し合うしかない。(総務省への報告書期限)7月1日に間に合わせたいが、直感から言うとそこまでにまとめるのは難易度が高い」とした。

宮川社長は、不正アクセス問題などの事態収拾に追われるLINEとヤフーの統合について、「期待感はあったが、スタートから蹴躓いてる」と表現。「組織統合を上手にやってくれないかなと常々思ってきた。ソフトバンクはいろいろなキャリアをM&Aしながら、組織統合して次の一手を作ってきた。こんなに手こずるかな、と思っていたがいろいろな事情がある」とした。

また、8日のLINEヤフーの決算では、PayPayとLINEのアカウント連携延期も発表されたが、この件について宮川社長は、「伸びるのはちょっと痛い。ただ、LINEもう一度セキュリティ強化して、問題がなくなれば一緒にやった方が良いに決まっている。辛抱するしかない」と言及した。

ソフトバンクの2024年度3月期決算は、売上高が3%増の6兆840億円。エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの4事業が増収で、コンシューマ事業は減収となった。営業利益はコンシューマ事業を含む全事業が増益で8,721億円。

モバイルなどのコンシューマ事業は、2022年度で底打ちして、利益ベースでは反転。継続的な増収を見込む。スマートフォン契約台数も'23年度は147万件純増と堅調で、顧客基盤が拡大しているほか、PayPay連動の「ペイトク」プランなどでARPU(ユーザーあたりの平均収益)拡大を図る。また、PayPayやLINE、ヤフーなどグループサービスのシナジーを生かした成長を目指す。

生成AIに1500億円投資

ソフトバンクグループの好調な業績をうけ、生成AI関連に追加投資も実施する。現在ソフトバンクが保有するAI計算基盤は0.7EFLOPSの計算能力を持つが、2024年度は約1,500億円の投資を行なうことで、25.7EFLOPSと37倍の能力に増強。2024年度中に1兆パラメーターLLMの構築を目指す。1,500億円のうち、421億円は経産省のクラウドプログラム補助金が充てられる見込み。

基盤となるGPUにはNVIDIAが3月に発表したばかりの「DGX B200」を2024年度下期から導入。同システムを導入する世界初の企業の一つとなる。

AIについては、マイクロソフトと共同で、コールセンター向けの自動化ソリューションについても共同で開発中。リアルタイムで変化する状況に合わせ、自律的に対応が可能なAIを実現する。

生成AIについて宮川社長は、「2030年には日本だけで2兆円の市場がある」とし、同社として生成AI時代のマーケットリーダーを目指すという。設備投資をしてそれを貸し出すだけでも投資は回収できるが、自社で1兆パラメータLLMを構築することで、企業や自治体に提供することを目指し、これをソフトバンクの長期ビジョンの柱とする考えも示した。生成AIへの投資を行なうことで、さらなる成長の加速を促す。