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LINEとPayPayアカウント連携は延期へ LINEヤフー セキュリティ強化に150億円

LINEヤフー出澤剛CEO

LINEヤフーは8日、2023年度 通期及び第4四半期決算の発表とともに、今後の事業戦略や不正アクセスによる情報漏洩への対応について説明した。当初2024年度の対応を予定していたLINEとPayPayのアカウント連携は延期する。また'24年上期にYahoo! JAPANアプリをリニューアルすることも表明した。

LINEヤフーの出澤剛CEOは、不正アクセスによる情報漏洩について、ユーザーと関係者への謝罪とともに「セキュリティガバナンス確立に注力する」と強調。前倒しでNAVERとのシステム分離などを進めるとした。

24年度はLINEとYahoo!アプリを刷新。LYPでシナジー

2024年度はLYPプレミアムと、LINEのリニューアル、そして新たにYahoo! JAPANアプリのリニューアルによりサービス成長を目指す。

LYPプレミアムについては、2月の大型キャンペーンにより、100万人以上加入者が増加し、2,444万人まで拡大。同キャンペーンでは1人1万円ほどの特典付与と3カ月無料で新規獲得を強化したが、結果としてYahoo!ショッピングの利用増など、多くのシナジーが認められ、特にLINEからのLYP加入とEC送客に手応えがあるという。

今後無料期間が終わる人が増えることから「これからが勝負(坂上亮介 上級執行役員CFO)」としており、「LINEプリ」や「複数プロフィール対応」など、LYPプレミアムの特典強化を図り、会員数を伸ばしていく。「有料転換の勝ち筋が見えてくれば、同じようなキャンペーンもやっていきたい」とする。

LYPプレミアムでYahoo!ショッピングも増加

LINEアプリのリニューアルも順調としており、2024年度中に検索やショッピング、ローカルサービスなどの対応を強化していく。

今回初めてYahoo! JAPANアプリのリニューアルも公表。2024年度上期中に刷新し、ホームタブのほか、検索急上昇ランキングをベースにしたトレンド情報「トレンドタブ」、ユーザーが選んだテーマの「フォロータブ」、ユーザーの生活・行動を支援する「アシストタブ」を追加する。

NAVER分離・セキュリティガバナンスに150億円

課題となっているのが、「セキュリティガバナンス」だ。昨年10月に不正アクセスによる情報漏洩が発生し、個人情報保護委員会からの行政勧告や、総務省からの行政指導を受けており、NAVERとの資本構成が問題との指摘もなされている。

資本構成については親会社のソフトバンクとNAVER間で協議を進めており、「LINEヤフーの立場から言えることはない」(出澤CEO)としながらも、ソフトバンクが過半数を持つ方向で要請しているという。LINEヤフーとしては、システムやサービス面でのNAVER分離を進めていく。

NAVERとの関係では、従業員向けシステム・ネットワークの運用等にとどまらず、サービス・事業領域においてもNAVER社との委託関係を全て終了する。こうした要因から2024年度の約150億円程度の対策費用を見込む。

加えて、当初2024年度を予定していたLINEとPayPayとのアカウント連携時期は見直しとなり、実質延期。LINEヤフーのセキュリティ強化策を先行させる。

なお、代表取締役CPOの慎 ジュンホ氏と、取締役CSO 桶谷 拓氏は取締役から外れ、経営と執行の分離を進める。慎氏は引き続きプロダクトを統括するCPOとして執行に関わる。「引責や降格ではなく、経営と執行の分離」(出澤CEO)という。

なお、NAVER分離によるLINEサービスへの影響については、「15年前から、コアエンジンなどはLINE独立でやってきたので、協業の要素はそれほど多くない(慎ジュンホCPO)」と説明する。

'23年度決算は過去最高

2023年度通期決算は、売上高が前年比8.5%増の1兆8,146億円、営業利益は同24.7%増の4,179億円、調整後EBITDAマージンは22.9%。PayPayの成長により、戦略事業の調整後EBITDAが通期で初めて黒字化。また、LINEヤフーの粗利と販管費改善が増益に寄与した。

メディア事業はアカウント広告成長で増収となり、マージンは36%に改善。コマース事業も国内物販系取扱高の回復とコスト最適化により増収増益となった。

国内ショッピング取扱高は前年比1.7%減の1兆6,658億円だが、第4四半期はLYPプレミアム施策などにより、大幅に改善し、前年同月比で10%超の伸びと回復傾向。特にECにおいてLYPプレミアムによるシナジー効果がでており、LINEからの送客効果が高いという。そのため、'24年度に予定されているLINEのリニューアルにおいてもショッピングへの誘導を強化していく。

PayPayを中心とした戦略事業は、売上高が2,899億円、調整後EBITDAは115億円。戦略事業では通期で初の黒字化となった。PayPayは連結の取扱高が2兆円以上伸び、12.5兆円で、売上高は2,115億円、連結EBIDTAは98億円。

24年度は、検索分野においては統合コマース検索を強化していく。なお、Yahoo!の検索エンジンについては、現状Googleと契約して利用しており、その期限が2025年3月に迫っていた。検索エンジン変更の検討なども報道されてきたが、2027年3月まで2年間Googleとの契約を延長し、Googleの検索エンジンを継続利用することとなった。また、広告事業ではアカウント広告は機能改善でマネタイズを強化していく。

2024年度ガイダンスは売上収益1.93兆円(前年比約7%増)で、調整後EBITDAは4,300~4,400億円(同3.6~6%増)。LYPプレミアム、LINEリニューアル、Yahoo! JAPANアプリリニューアルなどにより、売上成長を促進。大きな課題としてセキュリティガバナンスの強化に取り組む。