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アシックス、アッパーとソールを分別しやすいシューズ「ニンバスミライ」

アシックスは、シューズに使われている材料を容易に分別しリサイクルできるようにしたランニングシューズ「NIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)」を、4月12日に発売する。価格は22,000円。

「ニンバス」は、アシックスのランニングシューズ最上位クラスのブランド。クッション性などの機能性や品質を従来と同等にしながら、アッパーなど各素材をリサイクルできるようにしている。

シューズは世界で年間約239億足作られているが、そのうち95%以上が使用後に埋め立てられるか焼却処分になるという。この理由は、シューズの多くはアッパーとソールを分解できないため分別できず、また多数の異素材を使った複雑な構造でリサイクルにしくいため。

ニンバスミライでは課題を解決するために、アッパーとソールを分解できるようにして、さらにアッパーは単一素材にした。

ニンバスミライのパーツ

アッパーとソールを分解可能とするために、独自開発の接着剤を採用。接着の強度を弱めると使用している時にはがれてしまい、怪我の原因にもなるため、従来と同等の強度がありながら、熱を加えることで簡単にはがすことができる接着剤を開発した。

開発責任者の上福元史隆氏は、採用した接着剤は2006年に開発を進めていたものの途中でストップしていた技術であると説明。これを今回呼び戻し、走っている時にはしっかりとくっついた状態を維持し、解体の時にははがせるというバランスをとるためにトライ&エラーを繰り返して、市場に出せるようにした。

アシックス フットウエア生産統括部マテリアル部長 上福元史隆氏

アッパーに関しては、アパレル産業におけるリサイクルに貢献しているポリエステルに着目。ポリエステル系単一素材として、さらにカッティングで発生する残材を少なくするためにポリエステルの糸を編んだニットでパーツを作成している。特殊な方法をとりながら、通常商品と同じような機能性、特にフィッティングの実現が難しかったという。一方で工夫の結果、重量減にもつなげることができた。

左から順に素材生成の過程
アッパーの素材となるニット

補強部やハトメ(靴ひもの通し孔)なども含めて同一素材で、うち75%以上が再生ポリエステル素材となっている。試験段階においてリサイクル工程へ投入したアッパーのうち、87.3%がPET原料として再び利用できたという。ニンバスミライのアッパーから再生させた素材は、再びシューズに使用される。

ミッドソール(甲被と靴底の間の中間クッション材)とアウトソール(外底)は、粉砕処理をし、マットやパネルなどの素材の一部にリサイクルされる予定。

アシックスには、リサイクルシステムの整備も必要で、中でも消費者に回収プログラムに参加してもらうことが重要との考えがある。消費者に回収方法を伝えるため、シューボックスおよびシューズに特設サイトへアクセスできるQRコードを印刷している。

シューズ
シューボックス

かかと部分には、循環ループを意味する円を、分解可能となったアッパーとソールを横断してデザイン。シューボックスにはループのストーリーを手書きのデザインで描いている。

循環ループをイメージしたデザイン

ニンバスミライはグローバルに展開する予定。この取り組みは裾野を広げることが大切という考えから、アシックスの売上で最も大きいランニングシューズから展開。中でもニンバスは最も売れている商品であることから、ニンバスシリーズを第1弾とした。

カラーはホワイト×ホワイトながら、真っ白に染色はせずに、ポリエステル素材そのものの色である生成色を採用。サイズは22.5~30.0cm。国内での販売はアシックスラン 東京丸の内、アシックスフラッグシップ原宿、アシックスストア大阪、アシックスオンラインストア。

アシックスラン 東京丸の内での展示

デザイン担当者の安藤良泰氏によれば開発にあたり、町民の協力もあり高いリサイクル率を実現している徳島県の上勝町を視察。上勝町ではリサイクル率80%を達成しているが、リサイクルできていない20%の中にティッシュ、紙おむつとともにシューズが含まれていることがわかった。また、リサイクルが成立している背景には町民の理解があってこそという点で、仕組みづくりが成功のために大切であることを実感したと説明した。

上勝町視察時の写真
左から、アシックス サステナビリティ部長 井上聖子氏、上福元史隆氏、パフォーマンスランニングフットウエア統括部デザイン部 安藤良泰氏