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「日本型ライドシェア」開始 一般ドライバーが運転

一般ドライバーによる日本型ライドシェアの車両が出発する様子

タクシー会社が管理し、自家用車や一般ドライバーにより有償で輸送サービスを提供する自家用車活用事業「日本型ライドシェア」が4月8日に始まった。東京ハイヤー・タクシー協会が出発式を実施し、斉藤鉄夫国土交通大臣、河野太郎デジタル行財政改革担当大臣・規制改革担当大臣が出席した。

4月8日に開始したエリアは、東京23区・武蔵野市・三鷹市。全国で初めて日本型ライドシェアの運行が開始したこととなる。今後、神奈川・愛知・京都で4月中に開始される予定。

日本型ライドシェアでは、タクシー事業者が一般ドライバー(ライドシェアドライバー)の教育および運行管理や自家用車の車両整備管理を行なうとともに運送責任を負う。また運行が認められる曜日および時間帯も限られており、需要が供給を上回る時間帯のみとなる。

時間帯も東京は月~金で7時台~10時台、金土が16時台~19時台、土0時台~4時台、日曜日が10時台~13時台などかなり詳細に設定されている。これにより、ピーク需要のライドシェアによる補完と、正社員の賃金の維持の両立を図る。

日本型ライドシェア車両の配車手配はタクシーアプリのGO、Uber、S.RIDE、DiDiを使用。運賃は通常のタクシーと同じ基準で、事前に確定した状態で車両が到着する。

出発式にて東京ハイヤー・タクシー協会会長の川鍋一朗氏は、日本のタクシーは品質が良く安全と世界でも評価されていること、海外のライドシェアでは訴訟や事故も発生していることに触れた上で、日本型ライドシェアについて「ライドシェアは海外から輸入された仕組みだが、日本型は高いレベルの安全性を備えた進化した形であり、日本型ライドシェアが世界のライドシェアの新しいスタンダードになると確信している」の述べた。

東京ハイヤー・タクシー協会会長の川鍋一朗氏

斉藤大臣は、ドライバーおよび車の安全性、事故が起きた時の責任、適正な労働条件を国会の議論の中でも訴えてきたと話し、「日本のタクシー業界が築き上げてきた、世界一と言われる安全・安心の体制、仕組みなどを活かす形で自家用車活用事業がスタートする。まずは4地域からだが、国土交通省も各地のデータ等の収集をしており、できるだけ早く全国でスタートさせたい」と今後の展望についても語った。

斉藤鉄夫大臣

河野大臣は、「日本全国至るところで、どこかに行かないといけないのに足がない、という問題がある」と説明。「日本型ライドシェアの議論を始めたのは昨年秋から。国土交通省をはじめ、多くの皆様の非常に早い様々な決断のおかげでスタートできた。多くの人に1度体験をしていただいて、その便利さを感じていただきたい。また、変えなければいけないところはどんどん変えていきたい」とし、今後、電車が止まった時や天候により突発的に需要が増えた際の対応などもこれから考えていくという方針を述べた。

河野太郎大臣

出発式では、テープカットの後に斉藤大臣と河野大臣が、アプリでの予約から乗車までを体験。河野大臣のドライバーを担当したのは女性だったこともあり、ドライバーとの会話の中から「女性の利用者には、女性のドライバーのほうが安心という方もいるのではないか。アプリで女性のドライバーを選べるなどもできるようになれば、それもまたライドシェアのメリットになる」と感想を述べた。

テープカットの様子
ライドシェア車両の予約から実践
2台に分かれて乗車して出発
出発時の河野大臣

規制緩和により遠隔点呼による運用が可能に

出発式を実施したのは日本交通 葛西営業所だが、出発式には日本交通のほか、東京無線グループ 宝自動車交通、日の丸交通、日の丸リムジン、日本交通クループ 陸王交通の車両も参加。整備等の例については日本交通が運用する日本型ライドシェアに使用される車両で行なわれた。

自家用車を使用することから、採用面接時にタイヤの溝やブレーキパッドなど車の検査も行なわれる。そこで問題があるとされれば、所有者自身の負担にて整備を行なわなければならない。

使用する予定の車両をジャッキアップして検査を行なう

そのほか車両点検については、各自が毎運行前に行なわなければならないほか、定期点検を実施する。

点呼については規制緩和により遠隔点呼も認められるようになった。毎運行前後にZoomを使って、車両整備状況、アルコールチェック、体調確認を行なう。

毎運行前にアルコールチェックをして報告する

安全管理の面ではそのほか、対人8,000万円以上・対物200万円以上の任意保険等に加入する形で、全責任をタクシー会社が負う。川鍋氏によれば、保険はタクシーと全く同じレベルであり、事故の対応、もし相手があれば相手方のケアなど、全てしっかりと担保するとしている。

車両のフロント部分には、ライドシェアを示す表示のほか、前方およびドライバーを映す2台のドライブレコーダーが設置されている。

ライドシェア車両のフロント

ドライバーを映す目的は、わき見運転などをしていないかをチェックするため。そのほかシステム上では、一時停止をするべき場所でしていなかったり、急ハンドルを切ったりなどもチェックしており、こういったことがあった場合はアプリを通じて、運転の事後チェックとしてドライバーに示す。また、危険挙動が多い場合はタクシー業者が直接指導を行なう。

顔の向きや表情、一時停止違反などもチェックされている

ドライバー用アプリのために使う端末はドライバー自身が用意する。アプリやドライブレコーダーには、万が一の時のためのSOSボタンを装備している。

ドライバー用アプリ画面

ドライバーの採用状況については、開始して1カ月で1万件もの応募があったという。応募者は約9割が男性で、30~50代が比較的多いものの20代や60代からの応募もある。

開始時点で日本交通で稼働するドライバーの人数は60人だが、国土交通省が示す不足車両数に対してはまだ少なく、今後増やしていく構え。なお不足車両数すべてを1社でまかなうということはなく、国土交通省から事業者ごとに振り分けられる。事業者ごとの運用可能車両数は開示されていない。