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デジタルツイン常設ホール、虎ノ門「TOKYO NODE HALL」始動
2024年3月28日 16:41
森ビルとKDDIは、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの情報発信拠点「TOKYO NODE」内のホール施設「TOKYO NODE HALL」において、常設のデジタルツイン「TOKYO NODE DIGITAL TWIN HALL -RESPECT YOU, au」を開発し、運用を開始した。リアル会場で約300人、デジタルツイン側で最大1万人を収容できる「常設デジタルツインホール」として運用していく。
虎ノ門ヒルズ ステーションタワーには、最上部に位置する45~49階に「TOKYO NODE」(トウキョウノード)がオープンしている。作品展示などが行えるギャラリーのほか、46階にはメイン施設として最大338人収容の多目的ホール「TOKYO NODE HALL」を設置している。
この「TOKYO NODE HALL」をデジタルツインとして精巧な3Dモデルでバーチャル空間に再現し、最大1万人がアクセスできる常設のデジタルツインホール「TOKYO NODE DIGITAL TWIN HALL -RESPECT YOU, au」をオープンした。
リアル会場である、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー内のTOKYO NODE HALLは最大338人の収容で、大型の映画館クラスの規模になり、音楽ライブ向けとしては小型の部類になる。一方、常設のデジタルツインを用意することで、オンラインのライブ配信などでは最大1万人までアクセス可能。これにより、例えば抽選で当選した特別なファン・顧客が現地で観覧でき、一般ユーザーはオンラインで鑑賞する、といった使い方が可能。
デジタルツインとして、リアルの会場と同じ配置や形の3Dモデルが構築され、映像や照明などの演出を同期させることが可能。デジタル空間ならではの付加価値として、リアル会場にはない映像の合成や、昼間・夜間の切り替え、一部を水面にするといった大胆な演出も行なえる。専用アプリは不要で、ユーザーはWebブラウザからアクセスできる。今後はVRヘッドセットなどへの対応も検討していく。
TOKYO NODEには出演者の3Dキャプチャーが可能なボリュメトリックスタジオが用意されており、あらかじめ撮影された3D映像をデジタルツイン側のステージに登場させられる。今後はリアルタイムキャプチャーにも対応する予定で、会場のステージの出演者がリアルタイムに3Dモデルに変換されてデジタルツイン側のステージにも登場する、という演出が可能になる。
主催者側にとっては、あらかじめデジタルツインが用意されていることにより、ゼロから構築するような費用がかからず、比較的低コストで大規模なオンライン配信とデジタルツイン体験を提供できるメリットがあるという。ただし、デジタル側の演出は公演によりカスタマイズされるため、費用はまちまちになる見込み。
なお、TOKYO NODEはすでに好評でスケジュールも埋まっているという。一般的に、予約で施設のスケジュールが埋まると、利用を検討する主催者による「内見」ができなくなる課題があるというが、これもデジタルツインが出来上がっていることにより解決している。会場の中ではどういう見た目になるのか、どういった演出が可能か、といったことがデジタルツイン側のステージで再現して提案できる。
TOKYO NODE HALLのデジタルツインの取り組みではさらに、ホールで出演したアーティストのコンテンツをスマートフォンのARコンテンツとして持ち帰ることができる「ARコレクティブコンテンツ」の展開も可能。特定の模様が描かれた指輪型や台座型のオブジェにスマートフォンのカメラをかざすと、イベント出演者に関連した立体映像のコンテンツを表示させられるというもので、NFTを利用したコレクションコンテンツとしても展開できる。
視聴から“体験のインターネット”へ
森ビル 新領域事業部 TOKYONODE運営室 課長/TOKYO NODE LAB Executive Producerの杉山 央氏は、「新たな都市体験を創造する」というTOKYO NODEのテーマを紹介。「同じ場所で体験する喜びを、デジタルで拡張する。これまでならリアルな場所に集まるしかなかったが、ホール自体を拡張していく。リアルとデジタルが重なることで、これまでにない体験が生まれる」と、デジタルツインの意義を語っている。
KDDI事業創造本部 副本部長の中馬和彦氏は、「インターネットは“視聴”に留まっているが、これからの3Dは“体験”ができる。視聴のインターネットから“体験のインターネット”へ。これがWeb3の世界。そのスタンダードを作っていきたい」と、TOKYO NODEが常設デジタルツインホールの好例になることに期待を寄せる。
中馬氏は「デジタルは観るだけのものじゃない。体験できるようになっている。デジタルにはリミットがない」とも語り、今後も、出演者をリアルタイムに3Dキャプチャーして配信する機能などを提供し、機能を拡張していく方針を説明している。