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セイコー「専用すぎる腕時計展」を見てきた すき焼き専用・両利き専用
2024年2月9日 08:00
セイコーウオッチは、東京・原宿で「専用すぎる腕時計展」を開催している。会期は3月31日まで(会期中無休)。時間は11~20時。場所はJR原宿駅前にある「WITH HARAJUKU」1階の「Seiko Seed」。入場料は無料。
このイベントは、同社のデザイナーが日常業務とは異なるアプローチでデザインを試みる「power design project」の2024年の展示となっている。
これまでセイコーは、ダイバーズウォッチ、競技用ストップウォッチ、鉄道時計など様々な専用時計に注力してきた。今回、その歴史を受け継いで7人のデザイナーが思い入れを込めた“特定用途向け腕時計”を発案。商品化を前提とせずに突き詰めたデザインにすることで、腕時計の新たな可能性を探った。そのため商品化は未定となっている。
いずれの時計も実際に手に取れる展示になっており、質感や重量を確認できる。
晴れ男専用腕時計
腕時計型の日時計なので、“晴れ男”でないと使えないというアイテム。腕時計型の日時計自体は存在するが、本品は日時計としての圧倒的なこだわりが詰め込まれているのが特徴だ。
本体は折り畳み式になっており、各部の回転や緯度に合わせた角度調整機構、加えてコンパスや水準器も備えており、高い精度を目指したという腕時計だ。同社の計測では日差-1.59ミリ秒というから、クォーツ時計よりもよほど正確ということになる。
使うには、方位の確認、文字盤の展開、緯度に合わせたアームのセット、季節に合わせたケースの回転、標準時基準値との経度の差に合わせた文字盤の回転、指時針のセット、水平の確認といった流れが必要というスローな時計だ。
腕時計としてはやや大型で、金属のかたまり感がありずっしりと重い。メカニカルな作り込みで、機械式腕時計に通じる魅力もある。このまま商品化してもそれなりに売れるのではないかと思わせるアイテムだ。
すき焼き専用腕時計
担当デザイナーが大好きだというすき焼きを最高の状態に作るためのタイマーを搭載した時計。
すき焼きで有名な「人形町今半」に1人前のレシピを作ってもらい、それを作る工程を盛り込んだ。具材の種類、投入時期、ひっくり返すタイミングなどを網羅した。開発は人形町今半と二人三脚というほどやり取りしたという。
文字盤は都会的な印象だが霜降り牛肉をあしらっており、なんともすき焼きが食べたくなるデザインとなっている。名称も「SKYMASTER」ならぬ「SKYKMASTER」。すき焼き愛が大変感じられる1本だ。
パンダ好き専用腕時計
腕時計愛好家は、特にクロノグラフの白と黒からなるモデルを“パンダ”と呼ぶことがある。しかし、動物のパンダ好きからすれば「それはパンダではない」となる。
そんな思いから誕生したのがこの時計で、単にパンダの顔を模したのかと思いきや、しっかりとクロノグラフ(ストップウォッチ)機能を搭載している本格派だ。
耳の部分がクロノグラフのボタンになっておりスタート/ストップとリセットができる。目の部分の針は通常の秒針ともうひとつは積算計となっている。
またクロノグラフウォッチによく搭載されているタキメーターも装備。この時計は目盛が二重になっていて、タキメーターのパンダ版として「SASAMETER」と呼んでいる。
タキメーターは1kmを走った車の平均速度がわかる目盛で、外周部のタキメーター目盛は一般的なクロノグラフのそれだ。一方で内側の目盛は秒針の2周目を計測するものとなっている。
パンダが1kmを走るのに掛かった時間が、例えば2周目の6時位置を指した(90秒かかった)場合、SASAMETERの40の数字を読んで平均時速40kmとわかる(同社によるとパンダの走る速度は時速30kmとのこと)。
由来となったクロノグラフはそのままに、パンダ仕様に落とし込んだこれまたパンダ愛の溢れる時計と言えそうだ。
かくれんぼ専用腕時計
子供達のかくれんぼで鬼は不人気な役だそうで、そんな鬼でも「この時計が使えるならやってみたい」となるような腕時計を目指したとのこと。
異形の理由は、フタを開けて左目で時計を見ると右目も目隠しになるようにするため。レンズを通して覗き込むのでカウントに集中できる。時計は10秒や60秒のカウントができ、時間になるとかくれんぼで聞き覚えのあるメロディが聞こえる仕組みだ。
鬼になるとカウントを素早く数えてしまう子もいるが、この時計を使うとそうしたこともできなくなる。日本かくれんぼ協会が協力し公式ルールに則った作りになっているため、本気で楽しめそうな時計になっている。
フタに付いているダイヤルを回すことで、見つけた人数のカウントもできる。ダイバーズウォッチの回転ベゼルのように、逆回転防止になっているのが時計メーカーらしいところだ。
両利き専用腕時計
作業によって利き手を使い分けている両手利きの人が一定数いるそうで、そうした人のために作られたのがこのモデルだ。
時計の上下の色や仕上げを変えることで、左手に付けたときと右手に付けたときで異なるデザインになるようにした。
右利きの場合(左手に装着)は、左脳を使うことから論理的な思考をイメージする黒板の黒をメインカラーにした。反対に左利きの際は創造的な右脳を使うことからキャンバスや石膏をイメージした白基調のカラーになるようにしている。
文字盤はダイヤモンドカットのストライプ状にすることで、斜めから見ると色が黒と白に変わる。また、針も2色にし、その時の文字盤カラーの反対の色の針で読めるようにした。
同社では「両手利きの人のパフォーマンスを最大化する」としている。
パタンナー専用腕時計
パタンナーはデザイン画をもとに服の型紙を作る職業。まち針を刺せるピンクッションと一体になっているのが特徴だ。
実用的にまち針を刺しておくこともできるが、花形のクッションのほうは12分割されているので文字盤の延長として時間を絡めた場所に針を刺して目印にできる。
文化学園大学の学生と教員が協力し、使い勝手などを検討していった。製作にはぬいぐるみ製作会社の協力も得たという力作だ。
リュウズが距離を経てクッションの外側に出ている構造も苦労した部分とのこと。また、下部のリュウズは文字盤の日付ダイヤルを回すためのもので、締切までのカウントダウンができるようにしてある。
マスキングテープ好き専用腕時計
コレクションとしてもファンが多いマスキングテープ(マステ)。それを時計にはめ込めるようにしたのが本作。
マステの着脱機構も色々検討し、ストラップを付けたままでも入れ替えができるようにした。付けるマステを替えると時計の雰囲気もガラッと変わる。
さらに面白いのは、切ったマステを内側に貼れるようにしていること。自分でインデックス風に貼り付けたり、何かの時刻のマーキングにしたりと文字盤をオリジナルにデザイン可能だ。
ストラップを外せば置き時計のように使うこともできるので、好きなマステといつも一緒に過ごせる。