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アップル、EUで外部ストア開放や代替決済 リスク増大も警告
2024年1月26日 13:30
Appleは、EUのデジタル市場法(DMA)に準拠するため、EUを対象にiOS、Safari、App Storeに大幅な変更を加えると発表した。DMAが導入される3月から、iOS 17.4の新機能として提供される。開発者はiOS 17.4のベータ版で新機能のテストが可能になっている。
DMAは、AppleやGoogleなどの大手テック企業を「ゲートキーパー」に指定し、各社の22のコアプラットフォームサービスに、デジタルサービスの開放性の確保を求める法律。遵守できない場合、その企業の全世界売上高の10%を上限に制裁金を科す。
前提として、アップルはDMAの規制内容に否定的な立場を明らかにしている。DMAに準拠する一方、引き起こされることが予想される“新たなリスク”を軽減するために、新たな安全策を導入すると表明。「規制がもたらすプライバシーとセキュリティの脅威の増大からEUユーザーを守る」としている。ただし、新たな安全策を導入しても、リスクが排除(eliminate)されるわけではないとも指摘している。
アップルが実施する変更には、600以上の新しいAPI、アプリ分析の拡張、代替ブラウザエンジン向けの機能、非接触決済の新機能、アプリの支払処理とiOSアプリの配布に関するオプションが含まれる。
具体的には、3月に提供されるiOS 17.4では、開発者はiOSアプリを代替アプリマーケットプレイスでも提供できるようになる。代替アプリマーケットプレイスの作成ツールも用意される。
WebブラウザはWebkit以外のブラウザエンジンが使用できるようになり、Safari以外のブラウザをデフォルトに指定可能になる。アップルは、代替エンジンのブラウザでは、性能やバッテリー寿命に悪影響がある場合があるとしている。
アップルの端末において非接触決済のNFCが開放され銀行アプリやウォレットアプリで利用できるようになる。アップルは、サードパーティ製の非接触決済アプリをデフォルトとして選択できるEUの施策は「新たなリスクをもたらす」と警告、可能な範囲でリスク軽減措置を講じるとしている。
App Storeは、外部での決済に対応する。App Storeにおいて外部の代替決済を利用するアプリはラベルで明示される。アップルは、例えば代替決済手段で詐欺被害に合った場合、アップルがサポートできる範囲は限られるとしているほか、悪質な業者が機密性の高い金融情報を盗む機会が増える可能性があるとしている。
追加のマルウェア保護も提供する。インストール後にマルウェアが含まれていると判明したアプリは、起動できない措置を講じる。
このほかEUにおけるiOSアプリの配信について、App Storeでの手数料の引き下げ、決済手数料の変更、コア技術料の設定などについて明らかにされている。
DMAへの準拠、アップルは「新たなリスク」と警告
アップルは、アプリをApp Store以外からダウンロードしたり、代替の決済手段を利用したりするための新たな方法について、「マルウェア、詐欺、不正で有害なコンテンツ、その他のプライバシーとセキュリティの脅威に対する新たな道を開く」と警告している。
こうした外部からのリスクや、ユーザーが晒される・選択しうるリスクについて「対処する能力はAppleにはあまりない」ともしている。審査・認証など各種の保護策でリスク軽減を図るとするものの、DMAへの準拠で引き起こされる新たなリスクや、デフォルト指定の変更によるユーザーの混乱、その間隙を突かれる可能性を含め、「多くのリスクは残る」と安全性の低下を示唆している。
一連の変更は、EUがiOS、Safari、App Storeをデジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)に基づく「コアプラットフォームサービス」に指定したことを反映したもの。アップルは、DMAが導入される3月に、EUユーザーが変更点を理解するための情報や対処法などを公開する予定。