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免許不要「電動サイクル」シェア開始 ペダルを漕がない「特定小型原付」

OpenStreetは、免許不要の電動モビリティ「電動サイクル」のシェアリングサービスを、HELLO CYCLINGで1月30日から開始する。着座姿勢・ペダルレス(スロットル操作)で走行可能。料金は15分200円、12時間4,000円。

1月30日からは一部の「HELLO CYCLING」ステーションで利用可能。開始当初は千葉市やさいたま市などの首都圏を中心に200台前後を投入する。今後は提供地域を拡大しながら、2024年におよそ3,000台を投入予定。

電動サイクルは、2023年7月1日に施行された改正道路交通法によって生まれた新車両区分「特定小型原動機付自転車」に分類されるモビリティ。2輪座り乗りタイプの特定小型原付のシェアリングサービスは国内初となる。

ペダルは足を置くだけ、漕がない仕様

特定小型原付ではさまざまな新しいルールが制定されており、16歳以上であれば免許不要で運転可能。ヘルメット着用は努力義務、車道や自転車道は制限時速20km、道路標識で通行可能とされた歩道は制限時速6kmで通行できる。

電動サイクルの車体はglafitと共同で開発し、右ハンドルのスロットルで走行可能。車道専用モード(最高速度20km/h)と、歩道可モード(最高速度6km/h)を選択できるボタンを搭載している。航続可能距離は40km。

新しい保安部品の「最高速度表示灯」も搭載。車道専用モード(最高速度20km/h)では緑色に点灯、歩道可モード(最高速度6km/h)では緑色に点滅して周囲に車両の状態を知らせる。

右ハンドルのスロットルで走行
モード切り替えできるボタンを搭載。写真は車道専用モード(最高速度20km/h)
歩道可モード(最高速度6km/h)
車道専用モードでは緑色に点灯

着座式のため、立って乗るキックボードとは異なり、凹凸が多い道路や段差超えの際も姿勢を崩すことなく安定して走行できる点を特徴としている。

車体には、現在HELLO CYCLINGで利用できる電動アシスト自転車と同様にスマートロックを搭載。スマートロックに蓄積された走行データなどを街の課題解決に活かすことで、より安全で快適なモビリティの走行環境の整備や、交通利便性のさらなる向上などの検討を行なう。

HELLO CYCLINGの電動アシスト自転車と同様にスマートロックを搭載

利用はHELLO CYCLINGアプリから行なう。利用前の準備として、交通ルールテストの全問正解と16歳以上であることの確認が必要。16歳以上の確認書類は、免許証、パスポート(日本国発行のもの)、在留カード、マイナンバーカードのいずれかを提出する。また、HELLO CYCLINGアプリ上にSOSボタンを表示、事故発生時の対処方法もすぐにわかるようにしている。

利用前の準備として、交通ルールテストの全問正解と16歳以上であることの確認が必要

次世代モビリティに秩序と利便性

特定小型原付は現在、立ち乗りタイプの電動キックボードでシェアリングサービスが普及しているが、OpenStreetでは着座タイプの「電動サイクル」を推進していく。

なぜ、電動キックボードではなく電動サイクルなのか、OpenStreet 代表取締役社長 CEO 工藤 智彰氏は以下のように説明。

「電動キックボードのシェアリングサービスはやろうと思えばそう難しくはないのですが、あえてやっていませんでした。その理由としては、新しいモビリティを社会実装するうえで、利便性はもちろん、秩序と利便性のバランスをしっかり取っていく必要があると、この数年間シェアサイクルを運営する中で学んだからです。

端的に言うと、電動キックボードは国内の環境にまだ適しておらず、課題が多くあると捉えています。その課題を100%解決する訳ではないですが、秩序立てた普及に必要な要素として、用途・走行空間に適合する『車両』、ガイドラインに準拠し利用者がルールを理解する『運用』、マイクロモビリティと連携する『走行空間』、この要素を入れ込むことがマイクロモビリティの在り方ではないかと考え、電動サイクルを選定しました」

OpenStreet 代表取締役社長 CEO 工藤 智彰氏
「車両・運用・走行空間」を必要な要素とした

車体はglafitと共同開発し、走行環境における車輪のサイズ、立って乗るか座って乗るか、適用距離を特に検討していき、完成に至った。直進性が高い構造、着座の重心、ナンバープレートの対応などにもこだわったという。

車輪サイズは14インチで、「車輪の大きさは乗り越えられる段差の大きさに直結します。日本の道路は左端に溝やちょっとした段差があり、車輪が小さいとそこにバランスをとられて転倒しやすくなるので、最低でも14インチは必要だろうと判断しました」と工藤氏は話す。

glafitと車体を共同開発し、さまざまな検討を重ねてこの形に至った
電動キックボードとの違い
段差を乗り越えるのに最低でも14インチは必要と判断
ナンバープレートの設置位置にもこだわったという

速度調節は楽。歩道可モードはかなりゆっくり

電動サイクルの試乗会も行なわれ、実際に乗ってみた。車道専用モード(最高速度20km/h)と、歩道可モード(最高速度6km/h)は、車両が停止しているときしか変更できない仕様となっている。

試乗してみた

車道専用モードは、右ハンドルのスロットルを回すとグイッと進み、電動アシスト自転車の漕ぎ出しより速い印象。ブレーキは左右にあるので速度を調整しやすく、そこまで危険には感じなかった。なお、スロットルは回し続けても時速20kmは超えない設計とされている。

一方、歩道可モードはかなりゆっくりな印象。時速6kmは人間の早歩きくらいの速度だが、着座状態でその速度で走っているとバランスも取りづらくなかなか遅く感じる。基本は、車道で車道専用モードを使い、歩道で乗らなければならない場合のみ、歩道可モードを選ぶという使い方になる。

なお、航続可能距離は40kmで、バッテリー残量などは車体の操作部では確認できない。バッテリー残量と航続可能距離は、アプリで確認する方式となっている。できれば車体で確認したいと感じた。

車道専用モードはグイッと進むが、歩道可モードはかなりゆっくり

サービス開始当初は、千葉市とさいたま市の一部地域に導入されるが、千葉市では幕張新都心を中心にステーションを設置。交通安全対策として、イオンモール幕張新都心で乗車体験と安全講習会を行なう。

さいたま市では、2月1日からさいたま新都心バスターミナルや大宮駅西口空き地にステーションを設置。3月中に浦和駅周辺、5月中に大宮駅周辺に拡大予定としている。

千葉市では幕張新都心を中心にステーションを設置
さいたま市では、2月1日からさいたま新都心などにステーションを設置。3月中に浦和駅周辺、5月中に大宮駅周辺に拡大予定