ニュース

能登半島の海岸が約4m隆起 産総研が現地調査

鹿磯漁港の防潮堤に固着した生物遺骸が示す隆起の様子。人が持っている標尺の長さは5m

産業技術総合研究所地質調査総合センターは、令和6年能登半島地震に伴う海岸の地殻変動調査を1月8日に実施。石川県輪島市門前町鹿磯(かいそ)周辺での調査で、海岸が3.8~3.9m隆起していることを確認した。

鹿磯漁港ではまず、防潮堤壁面に固着したカキやカンザシゴカイ類などの生物が隆起によって離水した様子を観察。本来、海面下で生息していたこれらの生物が、海面より高い位置で固着している様子を確認し、その高さを計測したところ、3.8~3.9mの高さで防潮堤が隆起していることを確認した。

また、鹿磯漁港より北側では、「波食棚」と呼ばれる平坦な岩棚が、地震による隆起で干上がった様子も観察されている。波食棚は、岩盤の風化と波の浸食によって形成されるもので、本来はおよそ平均海面付近の高さに広がる地形。波食棚の前面は崖になっており、地震後の海面との高さの差は約3.6mあることが確認された。

今回の地震に伴う隆起で離水した波食棚(鹿磯漁港の北)
隆起した波食棚前面の崖の様子

光波測距儀による地形断面測量では、「海成段丘」が形成されたことを確認。同センターによると、能登半島には中期更新世(約77万年前)以降の海成段丘が発達しており、長期間にわたり地盤が隆起してきたという。隆起はおもに断層活動によって地震時に生じると考えられ、2007年能登半島地震(M6.9)や2023年能登地方の地震(M6.5)に引き続き、今回の地震でも沿岸の隆起が測地観測データの解析によって報告されていたが、今回現地での調査により、実際に海成段丘が形勢されたことを確認した。

能登半島北部沿岸にはおよそ6千年前以降に形成されたと考えられる3段の海成段丘(高位からL1面〜L3面と呼ぶ)が分布しているが、過去に海成段丘を形成するような大きな隆起が少なくとも3回起きていたことを示している。今回の地震に伴う隆起では「L4面」と呼ぶべき4段目の海成段丘が形成された。

今回の地震による隆起で形成された海成段丘の地形断面(青線)