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明治、カカオ由来の保湿成分「カカオセラミド」を素材化 世界初

明治は、カカオの未活用部位を独自に抽出し、カカオ由来の保湿成分「カカオセラミド」を世界で初めて素材化した。今後、化粧品への使用や商品化を目指していく。

セラミドは肌の表皮の角質層内に含まれる保湿因子のひとつで、スキンケア成分として多くの化粧品に含まれている。今回、化粧品領域で有効とされる「ヒト型遊離セラミド」が、カカオの未活用部位に多く含まれていることを明治が世界で初めて発見。独自の手法により、抽出・素材化に成功した。

カカオセラミド

未活用部位が多いカカオの実

カカオの実は、チョコレート原料のカカオ豆をはじめ約3割しか価値に転換されておらず、カカオハスク(種皮)やカスカラ(殻)は有効活用されていない状況にある。特にカカオハスクは世界で約50万トン、日本では約4,900トン発生していると推計され、その大半が有効活用されていない。

その中で明治は、フルーツとしてのカカオすべての可能性を追求する取り組み「ひらけ、カカオ」を推進。カカオの新しい価値創造に挑戦する中で、カカオハスクに他の植物よりもはるかに多量のセラミドが含まれることを発見した。

カカオの実で価値に転換されるのは全体の3割
明治が推進する、カカオすべての可能性を追求する取り組み「ひらけ、カカオ」

帝京大学 理工学部バイオサイエンス学科 古賀 仁一郎教授は、セラミドの種類について以下のように説明。

「植物由来のセラミドは大きく2つに分けられます。食べることで肌への潤い効果がある『グルコシルセラミド』と、肌の水分が蒸発しないよう表皮に含まれている『遊離型セラミド』の2つです。しかし、加齢に伴い表皮中の遊離型セラミド量は減少し、肌の潤いが保てなくなります。そこで遊離型セラミドと同じ構造を持つセラミドを合成し、合成したものを化粧品に入れることによって、減少したセラミドを補給する、そのような役割の化粧品にセラミドが使われています」

遊離型セラミドも大きく2つに分けられ、「植物型遊離型セラミド」と「ヒト型遊離型セラミド」が存在する。化粧品に使われるヒト型遊離セラミドは天然由来のものが希少で、化粧品に使われているのは主に合成されたヒト型遊離セラミドだという。

セラミドの構造と作用
帝京大学 理工学部バイオサイエンス学科 古賀 仁一郎教授

明治がカカオの研究をする中で、カカオの未活用部位(カカオハスク)に他の植物よりもはるかに多量のセラミドが含まれることを発見。中でも遊離型セラミドの含有量が多く、そのうちの36%がヒト型遊離型セラミドであることが判明し、化粧品への活用可能性が生まれた。

これまで希少とされていた天然由来のヒト型遊離型セラミドがカカオハスクに多く含まれていたことから、セラミド市場を拡大でき、他の植物由来のヒト型遊離型セラミドに対して抽出のコストダウンも期待できるとする。また、カカオの未活用部位の高付加価値化により、サステナブルな原料の利用ができると考えている。

カカオハスクに他の植物よりもはるかに多量のセラミドが含まれることを発見。中でも遊離型セラミドの含有量が多い

カカオセラミド配合のチョコレート

化粧品への利用は検討段階だが、カカオセラミドを使った食品はアルビオンとコラボレーションして商品化が決定している。今回の研究の中で、カカオの未活用部位には食品として利用できるグルコシルセラミドも多く含まれていることが判明。

「カカオグルコシルセラミド」を配合したチョコレートとゼリー入りドリンクとして、1月17日~22日に開催されるサロン・デュ・ショコラ東京会場で販売する。

価格は、チョコレート「meiji×ALBION CACAO DRIP」(5g×9枚)が3,240円、ゼリー入りドリンク「meiji×ALBION CACAO DRIP JELLY DRINK」(240g)が1,100円。

チョコレート「meiji×ALBION CACAO DRIP」
ゼリー入りドリンク「meiji×ALBION CACAO DRIP JELLY DRINK」

チョコレートは「カカオグルコシルセラミド」と、カカオ豆から抽出した明治独自の素材「カカオフラバノールエキス」、カカオ果汁を使って作り上げた。カカオポリフェノールに含まれる「アントシアニン」という成分由来の赤い色が特長で、カカオがフルーツであることを感じられる甘酸っぱい味わいと、独特の苦渋みが余韻に残るとする。食べきりサイズのミニタブレットチョコレートで、化粧品のようなデザイン缶入りで販売。

ゼリー入りドリンクは、「カカオフラバノールエキス」とカカオ果汁で作った甘酸っぱいドリンクに、「カカオグルコシルセラミド」を配合したクラッシュゼリーを入れた新感覚のカカオドリンクとしている。

チョコレートのみ、サロン・デュ・ショコラ公式オンラインショップ(1月5日~2月2日)と、阪急百貨店オンラインストア(12月28日~2月7日)でも購入可能。

「カカオグルコシルセラミド」を配合

カカオ未活用部位を菓子容器にアップサイクル

また、明治ではカカオセラミドの価値を高め、世の中に届けるための新たなプロジェクト「meiji CACAO BEauty Project」を始動し、異業種も含めたパートナーとの協業で行なっていく。プロジェクト名の“BE”には、Beauty(自分自身の美しさ)、Benefit(社会全体の便益)、well-Being(地球全体のよりよい暮らし)を目指すという意味を込めた。

meiji CACAO BEauty Project

同プロジェクトには、Zero Gravity社と、国内外における化粧品分野での開発について協力し、「カカオセラミド」の化粧品原料化を目指すほか、バイオプラスチックの分野で独自の技術を持つヘミセルロース社と共に、「カカオセラミド」抽出後に残ったカカオハスクを使用した商品容器へのアップサイクルにも取り組む。

ヘミセルロース社では既に、カカオハスクに植物由来プラスチックを配合してカカオ樹脂プラスチックの開発に成功。明治のチョコベビー容器やマカダミアチョコのトレー、明治社員の名刺などに利用している。

明治 代表取締役社長 松田 克也氏は、「我々明治は、カカオを国境や性別を超えてもっと価値のあるものにし、その技術や知見を広く共有することで、カカオ産業全体を豊かにしていきたいと考えています」とコメントした。

ヘミセルロースが開発したカカオ樹脂プラスチックを、明治のチョコベビー容器やマカダミアチョコのトレー、明治社員の名刺などに利用
明治 代表取締役社長 松田 克也氏