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インテル 40年に一度の変革 AI専用プロセッサ搭載「Core Ultra」
2023年12月18日 18:52
インテルは、AI専用プロセッサ「NPU」を、同社として初めて統合したCPU「Core Ultra プロセッサー」を国内で発表した。
同社は、現在はAI時代の新局面であるとし、クライアントからエッジ、データセンター、クラウドまで、プラットフォームを問わずAIを利用可能にする「AI Everywhere」を掲げ、AIを民主化するために、さまざまなハードウェアの選択肢を用意するという。
現在の機械学習はほとんどのワークフローをクラウドで処理するのが主流だが、この傾向は今後変化をしていき、2025年までには、企業が管理する50%以上のデータは、クラウドやデータセンターの外、つまりローカルのパソコンで生成され、処理されるようになるという。こうした多様なニーズに応えるためには、エッジやローカルのパソコンでAI処理ができる環境を強化する必要がある。
クラウドからローカルへ移行する理由としては、クラウド処理よりもローカルでの処理のほうが遅延が少なく、クラウドの利用は別途費用が必要になる場合もある。データのセキュリティについても、クラウドで処理した機密情報や個人情報などの取り扱いには課題がある。ただし、これらはクラウドを否定するのではなく、相互補完の関係にあるという意味合いだ。たとえば機密性の低いデータはクラウドで取り扱い、そうでないものはローカルのクライアントで処理することで情報の漏洩を防ぐような使い方がされることを想定している。
最近では、Metaの「Llama 2」のように、小規模なモデルも公開されはじめている。こうしたLLMを利用すれば、クライアント単体でも処理が可能で、機密データをクラウドに送ることなく処理できるのがメリットになる。
そこで、パソコン用のCPUに、AI専用プロセッサ「NPU」を統合して、AI処理の高速化を図ったのが「Core Ultra プロセッサー」になる。AI機能は現在でも日常的に使われているが、ビデオ会議での騒音を軽減したり、背景を消したりなど、既存の機能を補完するようなものが多い。Core Ultraでは、CPUのAI機能を強化することで、AIを使った本格的なクリエイティブ作業などを日常的に利用できるようにするのが狙い。
40年振りの変革
Core Ultra プロセッサーは、Intel Coreブランドの新展開として発表されたCPUで、インテルが始めてEUV(極端紫外線)露光を使った「Intel 4」プロセスで製造。3次元積層技術「Foveros」をメインストリーム向け製品として初採用し、これは、40年振りの大きなアーキテクチャ変更としている。
高い消費電力効率も特徴の一つとし、「Core Ultra 7 165H」によるベンチマークテストでは、同等の消費電力とする「AMD Ryzen 7 7840U」に対して最大11%高速だった。また、Windowsのアイドリング時の消費電力では最大79%消費電力が低く、Netflixでは44%、4K動画では48%と、それぞれ大きく消費電力を下げることができた。これらは、低消費電力用のEコアを活用することで実現している。
AIの処理については、NPU、GPU、CPUから処理に最適なものを動的に使用することで高速化。NPUは、高い処理能力が必要なタスクや、低消費電力でバックグラウンド処理をする場合に向いていて、Teams、ZOOMなど、ユーザーが気づかないところで処理を行なうケースにも向いている。GPUは並列処理のパフォーマンスとスループットに優れ、LLMでユーザーの入力に対して直ぐに答えが欲しいようなケースに向く。簡単な推論であればCPUによる処理が向いているとし、これらを使い分ける処理を行なうのが、インテルが2018年から提供している開発ツール「OpenVINO」になる。
これらにより、Core i7 1370pと比較して、Stable Diffusionを使った生成AIのパフォーマンスは1.7倍、ビデオ通話中の消費電力は38%削減などの効率化を実現する。
会場では、Core Ultraを搭載したノートPCで、Stable Diffusionによる画像生成をデモ。ネットワークには接続せず、ローカルで処理を行なった。プロンプトによる指示を行なうと、約10秒ほどで画像を生成。LLMで画像を生成する場合は、何度も繰り返して希望する画像が出てくるまで作業をすることが多く、処理は速ければ速いほどいい。
LLaMa2-7Bのローカル実行デモとして、Rewind AIが開発中の「Superpower」を使用したデモも行なった。Superpowerは、過去の議事録の音声データや、Web閲覧履歴などからも情報を収集して、個人に最適化した情報を提示するツール。NPU、GPU、CPUを活用して情報を提示する様子が披露された。
インテルでは、AIの採用を推進する「AI PC アクセラレーション・プログラム」も実施しており、2025年までに1億台のパソコンに搭載することを目指す。対応アプリケーション開発についても、100社以上が興味を示しているとし、300以上のアプリが開発予定で、AIアプリとフレームワークの開発数について競合他社の3倍を目指す。