TSMC熊本進出、新工場周辺の賃料は1.4倍に上昇　LIFULL調査

不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULLは、半導体製造の世界的企業「TSMC」の進出に伴う熊本県の賃貸市場への影響について調査を発表した。物件数や賃料に明らかにTSMC進出の影響が見られ、新工場周辺では2年間で新築賃料が1.7倍、全物件でも1.4倍になっているという。

TSMC(台湾積体電路製造)は、半導体受託製造の世界最大手だが、日本企業も出資する子会社「JASM」を設立し、熊本県菊陽町に工場を建設する。2024年12月の操業開始に向けて工事が進められている新工場では、大規模な雇用が予定されているほか、TSMCの進出が呼び水となって付近に関連企業の立地も進んでおり、菊陽町周辺では建設関係者やTSMCの駐在員、関連企業従業員による居住需要が高まっている。こうしたことから、LIFULLによる「LIFULL HOME'S PRESS」は、新工場建設地の菊陽町と関連企業の立地が進む大津町、合志市で、賃貸市場の影響を調査した。

賃貸市場の活性化については、「LIFULL HOME'S」の掲載物件数から調査。TSMC進出が発表された2021年10月の新工場周辺(菊陽町・大津町・合志市)の賃貸物件掲載数は517件だったが、新工場が着工された2022年4月までに進出発表時比(2021年10月)59.6%減の209件となるなど急激に減少。その後も2023年2月の29件(同94.4%減)を底に低水準で推移しており、8月時点では161件(同68.9%減)となっている。

熊本県全域の賃貸物件掲載数は2021年10月に5,496件。2022年4月は7,268件、2023年8月は7,936件と増加傾向のため、新工場周辺とは異なる傾向がでている。

新工場周辺では、空室が少なくなっているだけでなく、空室が発生しても募集開始後すぐに申し込みが入るなど、1物件あたりの掲載期間が短くなっており、掲載物件数の減少要因となっている。地元不動産会社によれば、進出発表当初は工事関係者が多かったが、最近はTSMCや関連企業の従業員やその家族がニーズの中心となっているという。

また、新工場周辺(菊陽町・大津町・合志市)ではアパートやマンションが建設ラッシュで、新築物件の供給数が増加。募集賃料も上昇している。

2023年第3四半期(7～9月)にLIFULL HOME'Sに掲載された、新工場周辺の新築賃貸物件の平均賃料は10.36万円。TSMCの工場進出が発表された2021年第4四半期の5.99万円から72.9%上昇し、約1.7倍の賃料になった。また、進出発表当初に中心だった単身向け物件の供給から、徐々にファミリー向け物件の供給へとシフトしており、1m2あたり賃料も工場進出発表時の1,108円から、直近は1,680円へと51.6%上昇している。

なお、熊本県全域の新築賃貸物件平均賃料は、進出発表時から2023年第3四半期で25.4%の上昇(1m2あたり26.2%の上昇)。新工場周辺は、高い賃料でも入居者が決まることから、強気の賃料設定となっているという。また、既存物件においても新工場周辺は、進出発表時比で約1.4倍の賃料に上昇している。