ニュース

11月スタート「Microsoft 365 Copilot」の創造性 月30ドルの副操縦士

マイクロソフトは、11月1日から企業向けに「Microsoft 365 Copilot」を提供開始する。Word、Excel、Teams、Outlook、PowerPointなどナレッジワーカー向けのOffice製品にAIによるCopilot(副操縦士)機能を組み込む。まず企業向けからスタートし、個人向けなどに今後展開を拡大していく計画だ。なお、法人向けのMicrosoft 365 Copilotの利用料金は月額30ドル(約4,500円)。

Word、Excel、PowerPointなど従来のMicrosoft 365 アプリケーションの基本機能とともに、大規模言語モデル(LLM)とユーザーデータを集約する「Microsoft Graph」を組み合わせ、ユーザー企業の利用シナリオに沿ったアウトプットをAIが担い、作業の省力化や生産性の向上を図る。各Officeアプリには、「Copilot in 〇〇」といったAI支援機能が追加される。27日に日本マイクロソフトがその概要について説明した。

Wordの場合、「Copilot in Word」としてフル機能のWordと連携し、「原稿案(ドラフト)の自動作成」や「文書の要約」、トーンの変更や文章量の調整などの「編集・書き換え」をCopilotが代行する。例えばWord文書に対し、「第3段落を簡潔にして。文章のトーンをもう少しカジュアルに変更して」とプロンプト(文字による指示)入力すると、Wordが指示に沿って文章を調整する。

「Copilot in Excel」においては、ExcelにAI支援機能が追加され、Excelデータの「自動集計」、「多角的な分析」、「最適なグラフの生成・視覚化」などが行なわれる。作成したグラフに対し、より適したグラフタイプなどを提案・作成するといったことも可能。

例えば、Excelデータをもとに「<変数の変化> の影響を推定し、グラフを生成して視覚的にわかりやすくして」と指示し、グラフ作成が行なえる。なお、Copilot in Excelのみ、11月1日時点では日本語対応していない。ただし、入力データや表示が英語であれば利用可能だ。

「Copilot in PowerPoint」は、プレゼン資料の自動生成等に対応。例えば、「Word原稿をもとに5枚のスライドを生成して、ストック画像も挿入して」と指示するだけで、Word文書をもとにしたパワーポイント資料の草稿案を作成できる。また、レイアウトの調整や書式の変更もプロンプトで行なえる。

「Copilot in Outlook」では、「先週、確認できなかったメールをまとめて。重要なものにはフラグを立てて」と指示すると、重要と思われるメールをリストアップしてくれる。また返信文の自動生成や文章の長さの調整、メールの要約・整理などの機能も備えている。

「Copilot in Teams」は、オンライン会議の要約やタスクの整理に対応。参加できなかった会議のデータから要約をテキストで把握したり、途中参加時に「会議で聞き逃したところをまとめて。これまでの論点は何?」と問いかけて、話の流れを理解するといった使い方が可能。

新たなサービスが「Microsoft 365 Chat」。Microsoft 365 アプリや、社内データ、カレンダー、メール、チャット、ドキュメント、会議、連絡先などを横断し、情報を探し出すAIチャットとなる。チャットで質問すると、さまざまなソースから情報を集約し、要約した上で提示。社内用語や申請手段などを調べる際に、必要な情報にすぐアクセスできるよう支援する。

様々な企業内データを保護しながら、利用者の生産性向上に役立てるCopilotだが、個人情報や非開示のデータは回答しない。例えば、「〇〇さんの給料は、いくらですか?」と尋ねると、Copilot側で仕事の文脈で適したプロンプトがどうかを判断し、個人情報にアクセスできないと回答。アクセス可能で回答に適した情報についてのみ反応するという。

また、企業におけるAI利用では、AI学習時の「著作権侵害」を不安視する声も聞かれる。そうした不安に対し、Microsoftでは、著作権侵害の心配なく利用できる「Copilot Copyright Commitment」を発表している。これは、法人向けCopilotユーザーが、仮に第三者から著作権侵害で訴えられた場合、Microsoftが、弁護士、訴訟の結果生じた不利な判決などにより顧客に課された金額を支払うというもの。こうした施策により、企業が安心してCopilotを使えるようにする。

Copilot利用には、一人あたり月額30ドルのコストがかかるが、日本でのサービス開始を目前とし、「多くの引き合いを頂いている」という。

コパイロットいろいろ 全部入りが「Microsoft 365 Copilot」

なお、Microsoftでは、ほとんどの製品に「Copilot」を投入している。そのため、多数のCopilotが存在する状況となっている。

機能面でサービスを整理すると、基本的なサービスとなるのが「Microsoft Copilot」。LLMを使ったAIサービスの全体を包含する名称であるとともに、チャットUIなどを含む、MicrosoftのCopilotサービスの基本となるものだ。Windowsに統合した「Copilot in Windows」や「Bing Chat」もMicrosoft Copilotに含まれる。

Bing Chat Enterpriseは、加えて企業内のデータを学習し、Copilotサービスに利用可能にするもの。法人向けのデータ保護機能を有しているため、企業の学習データは外部に出ること無く、自社に適したAI体験を実現するものだ。

今回スタートする「Microsoft 365 Copilot」は、上記の機能に加え、法人向けのデータ保護やMicrosoft 365 チャット、Microsoft 365 アプリなど全てにおいてCopilotが使えるサービスとなる。