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KDDI、ダイバーの位置を地上で確認できる「水中音響測位装置」

KDDIとKDDI総合研究所は、水中での複数の作業者やダイバーの位置特定が可能な「水中音響測位装置」を開発し、静岡県沼津市沿岸で実証実験を行なった。海中に潜行する2名のダイバーと1台の水中ドローンを含む計10台の対象(超音波発信器)の位置を1台の受信器で毎秒測定し、それぞれの位置を可視化して観測できる。

今回の実証実験では、対象物から発する超音波の位相差や到達時間から対象物の位置を求めることが可能な技術「SSBL(Super Short Base Line)音響測位技術」を活用。これにより、ダイバーや水中ドローンの位置と動き(位置の時間推移)が陸上でも把握できる。それぞれの位置情報や動きをダイバーへフィードバックすることで、水中活動の安全性、効率を向上させることが期待できる。

近年、国内の港湾事業や漁業での海中点検の必要性が増加している一方、こうした水中活動には事故のリスクが伴う。両社は水中活動の不安を払拭し、事故が起きた際の捜索や救助のため、また、複数の水中作業者や水中ドローンがより効率的に作業するため、水中活動時の位置把握、安全確保が重要な課題と認識し、対策を検討してきた。

ダイバーの位置を可視化

1台の受信器で1秒間に複数の対象(超音波発信器)の位置を観測可能な水中音響測位装置を開発。実証実験では10台の超音波発信器を水深2~30mの各位置に沈め、超音波発信器の発信タイミングを0.1秒ずつずらし、受信器側も同じタイミングで受信することで、10台の位置を毎秒計算し観測することを可能にした。10台のうち3台の超音波発信器を2名のダイバーと1台の水中ドローンに装着し、潜行するダイバーと水中ドローンの位置を毎秒可視化することにも成功している。

音波を使った測定は一般に海面などの反射が大きく影響するが、これまで培った水中音響測位技術の知識や技術の蓄積により、今回の実装方式ではこの問題を大幅に軽減し、実海域で動作することを確認した。

今後は、位置測定性能の向上、測定対象数の拡大、測定範囲の延伸などの開発を行ない、水産資源の監視や水中インフラ点検をより安全に、効率的に行なえるようにDX化を支援する。港湾事業や漁業に加え、スキューバダイビングなどのレジャーへの活用も検討し、さまざまなシーンでの社会課題の解決を目指す。