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詐欺や中国イタ電を自動ブロック スマホアプリ「Whoscall」が渋谷区と連携

左から、渋谷区 産業観光文化部の瀬野小枝子氏、Whoscall 日本事業責任者のロー・ウェイチェン氏、渋谷区 危機管理対策部の東浦幸生氏

Whoscallは、詐欺電話などを自動的にブロックするスマートフォン向けアプリ「Whoscall」にて、渋谷区と連携した実証実験を実施する。対象ユーザーは有償のプレミアム版が1年間無料になるというもので、被害防止策の啓発と効果の検証を行なう。

「Whoscall」は台湾発のサービスで、東・東南アジア最大という26億件の電話番号データベースとAI技術により、迷惑電話やSMSを識別・ブロックするスマートフォンアプリ。全世界で1億ダウンロードを突破、33カ国・地域でサービスを展開し、一部の展開国では政府や警察機関とも連携している。国内だけでなく海外から日本をターゲットにアクセスする迷惑電話の検知にも対応する。生成AIを使った詐欺、暗号資産ウォレットなどWeb3を標的にした詐欺など、海外の先端的な事例にも対応する。日本においては、福岡市やフィッシング対策協議会とすでに連携している。

アプリでは特殊詐欺などが疑われるSMSの識別、電話番号の識別、自動着信拒否機能などが用意されているほか、5月からは新機能としてメール・SMSに届いたURLが詐欺URLの可能性があるか判別するURLスキャン機能も提供されている。

アプリには無料版とプレミアム版があり、無料版はSMSの識別機能とURLスキャン機能のみが提供される。プレミアム版はすべての機能を使うことができ、広告も掲載されない。プレミアム版の価格は月額350円、年額3,000円。

中国からの日本国内への嫌がらせ電話が急増しているといった、例外的ではあるものの、特殊な状況にも対応可能。これらの電話は詐欺グループではなく一般からかけられていることが多いとされ、データベース上では詐欺電話とは分けつつ、ユーザーからのレポートが蓄積されることで識別精度を高めていくという。

渋谷区との連携では、実証実験として渋谷区民と、渋谷区内に拠点があるスタートアップ企業の従業員など先着300名限定でアプリのプレミアム版を1年間無償で提供する。申込期間は9月4日~30日まで。このモニター利用期間中(3カ月後、1年後)、2回のアンケート調査が実施される。

特殊詐欺は高齢者がターゲットで、固定電話に対策を施すのがこれまで一般的だったが、「Whoscall」はこれをスマートフォンで提供するサービスとなる。渋谷区に限ったことではないが、行政サービスはスマートフォンで便利に利用できるよう取り組みを進めており、高齢者に対しても、スマートフォンを使えばより便利で、自宅で手続きができて、わざわざ役所を訪れる必要がない、とスマートフォンの利用を推奨してきた背景がある。

しかし、特殊詐欺対策になると、スマートフォン向けに有効なものが見つけられておらず、「スマホで起きる特殊詐欺への対策は、不十分と言わざるを得ない状況だった」(渋谷区 危機管理対策部 安全対策課長の東浦幸生氏)という。

Whoscallは、渋谷区でスタートアップとして活動しており、渋谷区のスタートアップ企業の支援策を申し込み、啓発やモニター募集などで連携することになった。渋谷区 産業観光文化部 グローバル拠点都市推進室 グローバル拠点都市推進主査の瀬野小枝子氏は、「安全対策課と連携して対応策を探していた。日本でも結果が出て、広まればいいなと思う」と語ったほか、安全対策課の東浦氏も「すごく期待している。渋谷区が応援することで、次の自治体に広がっていけば」と期待を語っている。

投資詐欺対策など若者にも有用「家族に広めて」

高齢者がスマートフォンアプリをダウンロードして活用するのはハードルが高いのではないか? との問いに対し、Whoscall 日本事業責任者のロー・ウェイチェン氏は「若い人にも使ってもらいたい」と答えている。

高齢者を標的にした特殊詐欺からもう少し視野を広げ、詐欺全般に目を向けると、若者をターゲットにした詐欺も拡大している。暗号資産関連を含む投資詐欺、ロマンス詐欺、デーティング詐欺など、さまざまな問題が指摘されており、いずれもスマートフォンを起点にしている。詐欺対策全体でみれば若者も例外ではない状況であり、Whoscallはこうした詐欺のきっかけになる電話やSMS、URLといった接触ポイントの検知・識別に対応する。

「詐欺だったかも、と気づいてからでは後悔する。いつ詐欺に会うかはわからない。地震保険に入るように詐欺対策が必要。1日たった8円(プレミアム版の年額の場合)で使える」とロー・ウェイチェン氏はアピール。高齢者は導入が難しいという課題に対して渋谷区の瀬野氏も「使ってみて実感が湧いたら、家族にすすめてもらいたい」とした。