読み書き困難な人に「じぶんフォント」が有効 　DNPと東工大

大日本印刷と東京工業大学等は、読み書き困難がある人にも見やすく・読みやすい「じぶんフォント」を2022年より開発しており、有効性が確認できたことを発表した。

じぶんフォントは、発達性ディスレクシアを含む読み書き困難がある人にも見やすく・読みやすいフォント。多様な読み書き特性を持つ人を包括する読字環境の開発を見据えている。

今回、書体の主観的な読みやすさと個人の読み書き特性の関係を明らかにする調査を行ない、その結果、読み書き困難の視覚的な症状がある人のうち、「じぶんフォント」が最も読みやすいと回答した人の割合は約49%に至った。

読み書き困難の症状がない人のうち、同様の回答をした人の割合である約37%と比較して約12%多くなり、「じぶんフォント」の有効性が確認できたとする。

発達性ディスレクシアとは、知的能力や教育環境に問題がないにも関わらず文字を読むことが困難な学習障がいのこと。学齢期児童のうち、日本では約8%、英語圏では約10～15%にこの症状があると言われている。

多様な読み書き特性を持つ人がいることを背景として、DNP・東京工業大学・ファシリティジャポン・リアルタイプの4者は、2022年に、個々人にとって読みやすい書体がそれぞれ存在するという仮説に基づいて「じぶんフォント」のプロトタイプを開発。このプロトタイプを用いて行なった今回の調査では、読み書き特性によって、主観的に読みやすい書体が異なるという可能性と、特性ごとの読みやすい書体の傾向を明らかにすることができたという。

調査期間は'22年9月26日～11月18日。有効回答数は5,180件。計7書体(「じぶんフォント」3種、丸ゴシック体1種、明朝体1種、角ゴシック体2種)から、2書体の比較を全組み合わせで行ない、主観的な読みやすさの順位を算出した。

その結果、全体の25%が「じぶんフォント はっきりまるご」を最も読みやすい書体に選んだ。これは、約35%で1位になった丸ゴシック体に次いで2位という結果で、多くの人にとって読みやすい書体であることがわかった。3種類の「じぶんフォント」を合わせると、約40%の人にとって最も読みやすい書体と評価された。

また、「読み書きを苦手と感じ、かつ、文字が動いて見えるなどの視覚的な症状がある」グループ(回答数408件)では、「読み書き困難がない」グループと比べて、「明朝体」を読みやすいと感じる人は少なく、「じぶんフォント どっしりまるご」と「じぶんフォント すっきりまるご」を読みやすいと感じる人が多数という結果になった。

「じぶんフォント(3種類)」を読みやすいと回答した人は、同グループで49%(回答数200件/408件)となり、読み書き困難のないグループの37%(回答数1,022件／2,706件)よりも割合が高いことがわかった。

この結果から、読み書き困難の視覚的な症状がある人には、丸みがあって抑揚が少ない(太さが一定の)書体、文字の底辺がどっしりしていて、重心が分かりやすい書体が読みやすい可能性が示された。

DNPでは今後、より実生活に近い環境で文章を読む場面でも有効性が確認できるか、実証実験を行なっていく。Webサイトのほか、障がい者雇用に取り組む特例子会社のDNPビジネスパートナーズのWebサイト、NTTドコモのWebサイトに「じぶんフォント」を実装して、その有効性を検証する。