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1回の生体認証で決済・ポイント・年齢確認の"手ぶら決済" 東武と日立

東武鉄道と日立製作所は、キャッシュレス決済、ポイント付与、本人確認(年齢認証)をワンストップで実現する共通プラットフォームを2023年度内に立ち上げることに合意した。まずは2023年度中に東武ストアに対応セルフレジを導入する

労働力の不足が問題化する中、セルフレジの導入は伸びているなど、店舗の省人化・無人化への取り組みが加速している。しかし、酒類の販売時にはセルフレジでは年齢認証ができないことから有人レジを利用する必要があるほか、スポーツクラブなどでは無人化することで会員証の貸し借りによる「なりすまし」が横行してしまうことから無人化に課題があるなど、機会損失があるという。

両社が取り組む共通プラットフォームでは、様々なサービスを利用するための複数のデジタルIDを登録し、生体認証のワンストップで認証を行なうもの。これまでも同様の取り組みはあったが、同一企業内のサービスに限られ、他社のサービスを利用する場合には別途登録が必要になった。今回の取り組みでは、共通プラットフォームを提供することで複数の企業サービスを同一の生体認証で利用できるようにする。

東武ストアでは、同プラットフォームに対応したセルフレジを複数店舗で導入。同プラットフォームに生年月日、TOBU POINT ID、クレジットカード情報を登録すると、東武ストアのセルフレジで生体認証を行なうだけで、TOBU POINTの付与・利用、カード決済などをカードやスマホを出さずに行なえるようになる。

これにより、利用者は複数の会員証やポイントカード等を持ち歩くことなく、買い物やサービスを生体認証だけで利用でき利便性が向上する。認証時に自動的に決済手段が選択され、利用可能なポイントサービスが登録されていれば、自動的にポイントが付加される。決済手段は複数登録し、優先順位を決めることもできる。また、酒類の購入時に必要な年齢確認についても、生体認証によって紐付けられた年齢情報を基に確認をするため、無人で酒類の販売が可能になる。

酒を購入すると年齢確認のため生体認証を求められる
指静脈認証で年齢認証を行なう
指静脈認証は手をかざすだけの非接触で可能

また、登録してあるクレジットカードやサービスに紐付く個人情報は一括して変更が可能。住所変更などはプラットフォーム上で行なえば全ての登録サービスに反映できる。会員カードの発行や再発行なども不要になる。

各種キャンペーンなども、従来はQRコードからキャンペーンサイトで情報を登録する等の手間がかかったが、共通プラットフォームに対応していれば、個人情報等の入力をせずに応募だけで手続が完了する。

利用可能な生体認証システムは、指静脈認証と顔認証。指静脈認証は認証に2秒ほど時間がかかるが、高精度な認証が可能。顔認証は指静脈認証に比べると精度が落ちるが、素早く認証が行なえるため、駅改札などスピードが要求されるシーンで活用できるという。導入第一弾となる東武ストアでは、指静脈認証を利用したセルフレジが導入される。

認証は生体情報から秘密鍵と公開鍵を生成。生成は日立独自の技術であるPBI技術(Public Biometrics Infrastructure技術/公開型生体認証基盤技術)によって行なわれる。クラウド上には公開鍵(復元できないデータ)を保管し、そこから認証を行なう。生体情報生成される公開鍵は一方向性変換となっており、万が一公開鍵が漏洩しても、どの生体情報のものか結び付けることはできないという。

生体認証は「社会インフラ」に

東武鉄道は、1年前に日立製作所から、生体認証に関する実証実験の誘いをうけたという。当時、東武鉄道では、「生体認証は今後社会インフラになる」という認識があり、デジタル社会インフラをグループ事業に組み込みたいという思いがあった。そこで、東武鉄道側から、生体認証の利用企業としてではなく、プラットフォームを創る運営企業として協力したいと申し出て、日立が快諾したという。

東武鉄道が日立製作所と共同で取り組みを開始した理由としては、「複数の生体認証方式を利用でき、シーンに応じた使い分けが可能」「社会インフラとして定着を目指す発想」「安心、安全な個人情報・生体情報の管理」の3つをあげている。

導入される東武ストアでは、年齢確認、決済、ポイント付与が共通プラットフォームで可能になり、手ぶら決済を可能にする。ポイントカードを提示する手間がなくなる他、従来は有人レジでしか対応できなかった年齢確認による酒類の販売が無人レジで可能になる。

導入予定のセルフレジ
生体認証だけで決済とポイント付与が行なわれた

今後は鉄道分野への導入も視野にいれて検討。その他交通、商業施設、ホテル、スポーツクラブ、レジャー施設などの東武グループの各施設への導入を推進し、ロールモデルとしながら、全国に導入を拡大していく。将来的にはパートナー、導入店舗など、幅広く参画企業を募り、利用シーン、ユースケースを拡充させながら、本プラットフォームが社会インフラとなることを目指す。