ニュース
マイナ保険証一本化は「不安払拭が前提」 全非保有者に「資格確認書」
2023年8月4日 19:08
岸田文雄首相は4日、デジタル化推進に向けた決意と、マイナンバーカードに対する国民の信頼回復について会見した。マイナ保険証の推進方針は変わらず、2024年秋の一本化を目指す方針だが、「現行保険証の廃止は国民の不安払拭が前提になる」と強調した。一方で、マイナ保険証を持たない全員に対して「資格確認書」を発行する考えを示した。
岸田首相は冒頭、「マイナンバーの紐付け誤りで不安を招いていることをお詫び申し上げる」と切り出し、「信頼回復のための3つのポイントを徹底し、信頼を取り戻した上で、我が国にとって必要不可欠なデジタル改革を本格的に進めていく」とした。
具体的には、(1)個別データの総点検、(2)再発防止の徹底、(3)理解とマイナ保険証への不安払拭に取り組む。
秋までに紐づけ誤りについて総点検を完了。手作業でマイナンバー登録を進める中でミスが発生したことから、マイナンバー照会の手法や手続きで、国レベルで詳細で横断的なルールを定め、プロセスを可能な限り機械化していく。8日に総点検本部での中間報告を予定しており、総点検と再発防止を進めながら、マイナ保険証への不安払拭を目指していく。
デジタル化とマイナ保険証については、岸田首相の「思い」を強調した。
「なぜ岸田政権はデジタル化を急ぐのか? 2020年、政調会長としてコロナとの戦いの最前線にいた。そして、我が国のデジタルカの遅れを痛感した。給付金や支援金の給付遅れ、感染者情報のFAX集計による保健所業務の逼迫、感染者との接触確認アプリや、ワクチン接種システムの混乱などが発生した。欧米諸国、台湾、インド、シンガポールで円滑な行政サービスが我が国で実現できない現実に直面し、『デジタル後進国』であることに愕然とした。この『デジタル敗戦』を二度と繰り返してはいけない」と説明。岸田政権において、「デジタル化の遅れを取り戻したい」として、デジタル田園都市国家構想やマイナカードの早期普及を進めてきたとする。
その結果8,904万枚、70%を超える普及率を実現したが、一方で紐付け誤りなどの課題も発生したこととなる。
岸田首相は、「なぜ早期普及が必要なのか? 多様な公的サービスをデジタル処理するための公的基盤を欠いていたことが、コロナのデジタル敗戦の根本原因だと政府全体で認識したからだ。普段の暮らしで、免許証やパスポートが身元確認書になるが、オンラインでは身元確認をどうするのか? その役目を担うのが電子証明書を内蔵するマイナンバーカードだ。だから、デジタル社会のパスポートと呼んでいる。世界に伍するデジタル先進国を実現し、きめ細かい公共サービス、生活サービスを全国津々浦々で効率的に行なうための公的基盤を一刻も早く整えたい。そう思って(マイナンバーカードの普及を)進めてきた」と語った。
マイナ保険証への一本化については、「来年秋に廃止するのは乱暴ではないか? 廃止ありきではななく、理解が必要だ、といった指摘をいただいている。事案発生以来、不安払拭のための措置完了が大前提と申し上げてきた。現場の声を受け止め、不安払拭を最優先としていく。必要な時に必要な医療にアクセスできる国民健康保険制度は、国民生活そのもの。安心を揺るがさない。一人ひとりにデジタル化の利便性理解していただく必要がある」とマイナ保険証のメリットを周知していく方針を説明。
そのため現行健康保険証廃止の際にも、全ての国民が医療を受けられるように、全員に新たな「資格確認書」を発行する。また、有効期限も保険証に準ずるものにするなど、「マイナ保険証を保有していない人も、これまでどおり保健医療を受けることができる」と強調。全員に資格確認書を発行し、有効期間も従来と同一とすることで、ほぼ従来の健康保険証そのままで保健医療を受けられるようにする考えを示した。
岸田首相は、マイナ保険証への一本化の延期には言及せず、延期の可能性については、総点検の結果の確認が優先されるとし、「不安払拭が前提であり、総点検の結果さらなる期間が必要となれば時期の見直しも含めて判断する」と説明。「デジタル化の取り組みにより、国民に選ばれるマイナ保険証のために努力していく」と述べた。
まず冒頭、台風6号の被害への対応について申し上げます。
今回の台風では人的被害も発生しているほか、沖縄県を中心に広い範囲で停電となるなど、日常生活に大きな影響が生じています。お亡くなりになられた方に心から哀悼の意を表するとともに、全ての被災者の方々にお見舞いを申し上げます。
政府としては、災害の発生が懸念される段階から災害警戒会議を開催するなど、必要な体制を構築してきたところです。また、本日は、被災自治体のニーズを把握するため、谷防災担当大臣と玉城沖縄県知事がオンラインの災害対応協議を行うとともに、私もその報告を受け、今後の対応について確認いたしました。政府としては、これまでも停電の発生状況を踏まえ、地方自治体とも連携しながら、エアコンが使用できない場合の熱中症対策に関する広報・啓発等を行ってきたところですが、引き続き被災地のニーズを踏まえつつ、被災者に寄り添った支援を進めてまいります。
また、台風6号については、今後、沖縄本島や奄美地方に再び接近し、影響が長引くおそれもあります。引き続き警戒態勢を保持し、地方自治体とも連携しながら、政府一体となって防災対策、災害応急対策に取り組んでまいります。
そして、本日は、デジタル化推進に向けた決意とその前提となるマイナンバーカードに対する国民の信頼回復のための対策について、説明をさせていただきます。
冒頭、マイナンバーの紐(ひも)付け誤りをめぐって国民の皆様の不安を招いていることにおわびを申し上げます。
既に発表している「信頼回復のための3つのポイント」を徹底し、国民の皆様の信頼を取り戻した上で、我が国にとって必要不可欠であるデジタル改革を本格的に進めてまいります。改めて、「信頼回復のための3つのポイント」を簡潔に申し上げます。
第1のポイントは、個別データの総点検です。自治体や保険者と共に、原則として秋までに必要な個別データの総点検を実施します。その際、点検マニュアルの共有や点検費用など、点検実施機関の負担に十分配慮してまいります。
第2のポイントは、再発防止の徹底です。手作業でマイナンバー登録を進める中で様々な登録ミスが発生しており、再発防止のために、マイナンバー照会の手法や登録の手続などについて、国レベルで詳細な横断的なルールを定めます。さらに、プロセスを可能な限り機械化していきます。これら総点検の中間報告と再発防止については、来週8日に総点検本部を開催して、公表いたします。
第3のポイントは、デジタル化への理解促進とマイナ保険証への不安払拭です。この最も本質的で重要な点について、本日は、私の思いとマイナ保険証への不安払拭を図るための方針について説明いたします。
まず、岸田政権は「なぜデジタル化を急いで進めるのか」ということです。2020年、私は党の政調会長として、コロナとの闘いの最前線に立っていました。そして、我が国のデジタル化の遅れを痛感いたしました。
国民への給付金や各種の支援金における給付の遅れ、感染者情報をファクスで集計することなどによる保健所業務のひっ迫、感染者との接触確認アプリ導入やワクチン接種のシステムにおける混乱。欧米諸国や台湾、シンガポール、インドなどで円滑に進む行政サービスが、我が国では実現できないという現実に直面し、我が国がデジタル後進国だったことにがく然といたしました。
このデジタル敗戦を二度と繰り返してはならない。主要先進国に大きく後れを取っている我が国行政のデジタル化の遅れを取り戻したい。この強い思いから、政権発足以来、デジタル田園都市国家構想、マイナカードの早期普及を進めてきました。
デジタル田園都市国家構想については、5G、光ファイバー、海底ケーブルなどデジタル・インフラの全国展開を前倒しするとともに、デジタル田園都市国家構想交付金を創設。農林水産業、観光、国土強靱(きょうじん)化、医療、教育などの分野へのデジタル実装を支援し、横展開を強力に進めてまいります。
並行して、マイナカードの早期普及にも縦割りを排して、関係大臣が一致協力して取り組んできました。国民の皆様の御協力によって、8,904万枚、普及率は70パーセントを超えています。なぜ、マイナカードの早期普及が必要か。それは、多様な公的サービスをデジタル処理するための公的基盤を欠いていたことが、コロナのときのデジタル敗戦の根本的な原因だったと、政府全体で認識したからです。
少し詳しく御説明いたします。
私たちのふだんの暮らしでは、免許証やパスポートが、身元確認の役目を果たします。では、顔が見えず、成り済ましも簡単なオンラインの世界で、身元確認や本人確認をどうするのでしょうか。その役目を担うのが電子証明書を内蔵しているマイナンバーカードです。それゆえに、マイナンバーカードは「デジタル社会のパスポート」と呼ばれています。総理大臣の職責を担って以来、世界に伍(ご)するデジタル先進国を実現する。そして、個人や中小企業の様々な事情を配慮したきめ細かい公共サービス、生活サービスを全国津々浦々で効率的に行える公的基盤を一刻も早く整えたいとの強い思いを持って、政策を進めてきました。
実際に一部の自治体では、先進的な取組が始まっています。先週、現地視察を行った福岡市では、マイナンバー制度を活用し、ノンストップ行政の実現を掲げ、9割以上の手続のオンライン申請が可能となっています。同時に、高齢者の方々のためのきめ細かい相談体制も充実させ、「誰一人取り残さない」行政サービスに取り組んでいます。
昨日の群馬県でも、マイナカードとSuicaの連携により、地域交通の割引サービスを行っています。また、介護施設でも、センサー技術を活用した見守りや蓄積されたデータの活用によって良質な介護が実現している現場を拝見しました。
このように、生まれ出しているデジタル化の流れを止めることなく、先駆的な取組を速やかに全国展開し、人口減少や担い手不足が深刻化する中、医療、介護、子育て支援、行政サービス、地域交通などをめぐる地域の社会課題をデジタルで解決してまいります。
次に、マイナカードと健康保険証について申し上げます。「現行の保険証を来年秋に廃止するのは乱暴ではないか」、「廃止ありきではなく、国民の理解が必要だ」といった御指摘を国民の皆様から、また国会の審議でも頂いています。現場の医療関係者との意見交換でも、安心して全ての患者の方々に受診していただく環境を維持するとともに、より良い医療を受けることができるようデジタル化を進めていくことが重要であるとの御指摘を頂きました。
私自身、マイナカードをめぐる一連の事案発生以来、「現行の健康保険証の廃止は国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提」と申し上げてきたところであり、こうした国民の声、現場の声を重く受け止め、国民の不安払拭を最優先とした対応を採っていくこととします。
必要なときに必要な医療にアクセスできる医療保険制度は、国民生活の安心そのものであり、その信頼を揺るがすことはできません。まずは、国民の不安払拭と国民お一人お一人に、デジタル化することによる利便性をしっかりと理解していただくことが必要です。このため、現行の健康保険証を廃止する際にも、全ての国民が円滑に医療を受けられるよう、マイナ保険証を保有していない方全員に資格確認書を発行し、その有効期間やカードの形状も現行の健康保険証を踏まえたものとするなど、きめ細かい対応を徹底いたします。これにより、マイナ保険証を保有していない方も、現行の健康保険証を廃止してもなお、これまでどおり保険医療を受けることができます。このように、国民の不安払拭に万全の対応を採ります。
さらに、従来から申し上げているとおり、健康保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提との方針にのっとり、秋にも完了する紐付けの総点検とその後の修正作業等を私自身が先頭に立って進めてまいります。そうした作業の状況も見定めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には、必要な対応を行います。
政府としては、マイナ保険証への移行に際して、マイナ保険証のスマホ搭載、電子処方箋の普及、新たなマイナンバーカードへの移行等を着実に進め、マイナ保険証のデジタル環境を整備していきます。同時に、受診履歴に基づくより質の高い医療、多剤・重複投薬の防止、転職等の際のシームレスな移行など、マイナ保険証によるメリットを国民に実感していただける実効的な仕組みをつくってまいります。こうしたデジタル化の取組により、国民に選ばれるマイナ保険証にしていくことに全力を尽くします。
デジタル大臣には、関係大臣と連携して、来週8日に総点検の中間報告と再発防止と併せて、こうした内容を盛り込んだ対策をまとめるよう指示いたしました。
マイナンバーカード関連事案の総点検と再発防止、そして信頼回復のための対応を行いつつ、この先に我々日本が目指すもの。それは世界最先端のスマート行政府の実現です。そのために、デジタル基盤と政府の仕組み双方の改革に取り組みます。
デジタル基盤については、個人・法人・不動産のオンライン認証の仕組みやプライバシーをしっかりと守れるデータ流通基盤の整備、約1,700の自治体が共有できる標準業務プログラム群の整備などを進めていく必要があります。予算の効果の「見える化」に向けて、国の予算事業それぞれにIDを振る取組も重要です。
一方で、政府の仕組みについては、アナログを前提とする昭和の時代に確立し、これまで機能してきた我が国の制度や行政組織、国・地方の役割分担などをデジタルの時代に合わせて見直していかなければなりません。デジタルの力を使って、公務員の人数を増やさずに、多様化するニーズにきめ細かく対応できるようにする。こうした「小さくて大きな政府」としていくための令和版行財政改革です。
その際、何よりも大事なのは、利用者起点での業務や制度の設計です。行政サービスの利用者としての国民に直接向き合っている自治体、介護、教育、産業等の現場で奮闘する人々が国民の生の声を聴き、政策を磨き、デジタルを活用して、きめ細かくサービスをお届けできる。こうした利用者起点の姿勢を中央官庁に徹底したいと考え、この夏には、私自ら努めて地方の現場の意見を伺いにまわっています。
マイナンバーカードの信頼回復にめどをつけ、この秋から、令和版デジタル行財政改革を始動する準備を進めてまいります。
私からの発言は以上です。ありがとうございました。