ヘルメットは重要。JAFが電動キックボードの「ノーヘル」リスク検証

JAFは、電動キックボードをヘルメットなしで運転した場合のリスクについて実験し、その結果を公表した。

警察庁によると、2022年に発生した電動キックボードに関する交通事故は41件(対前年12件増)、そのうち死亡事故は1件となっている。7月からは改正道路交通法の一部が施行され、新たに「特定小型原動機付自転車」が追加。条件を満たした電動キックボードは16歳以上であれば免許なしで運転ができ、ヘルメットも努力義務となった。

こうした背景によりJAFは、電動キックボードが街中で遭遇しそうな交通場面を再現し、走行速度やヘルメット有無によって衝突・転倒時の危険度がどう変化するのかを検証し、公開した。

縁石に乗り上げて転倒した際の危険性

ダミー人形を乗せた電動キックボードを20km/hでけん引し、高さ10cmの縁石に衝突させ、転倒時の頭部損傷値(HIC値)を計測。

HIC値とは「Head Injury Criterion」の略で、衝突や落下などの衝撃による脳や頭蓋骨への損傷程度を表す数値のこと。HIC1000を超えると脳傷害の可能性があり、HIC3000を超えると非常に高い確率で重篤な傷害が発生するという。

結果は、ヘルメット着用時でHIC1231.8、ヘルメット非着用時はHIC7766.2。ヘルメット非着用時は着用時と比較し、HIC値が6.3倍になり、重篤な頭部損傷になるリスクや死亡するリスクが高いことがわかった。

自動車に衝突した際の危険性

ダミー人形を乗せた電動キックボードを20km/hでけん引し、静止している自動車に衝突させ、自動車との1次衝突と2次衝突のHIC値を計測した。

1次衝突は、電動キックボードのメインフレームや人の腕が先に自動車とぶつかったことでヘルメット着用でHIC19.7、非着用でHIC1912.8と、HIC値は低い結果となった。2次衝突では、ヘルメット着用時はHIC147.9だが、非着用ではHIC6346.3と非常に高くなり、頭蓋骨骨折や脳損傷、死亡のリスクが高い結果となった。

20km/hで頭部を直接フロントガラスに衝突させた場合

実験では電動キックボードや腕が先にぶつかっていたが、頭部から衝突することを想定し、フロントガラスにダミー人形の頭部(4.5kg)を高さ1.6mの位置から落とし、20km/hでフロントガラスに直接頭部をぶつけた場合の衝撃の再現も行なった。フロントガラスがクモの巣状にヒビが広がって割れるほど衝撃は強く、頭蓋骨骨折や脳損傷、死亡のリスクが高いことが予想されるという。

今回の実験では電動キックボードが1次衝突よりも、2次衝突の方が高いHIC値となり、より頭部への影響が大きいことがわかった。

電動キックボード(特定小型原動機付自転車の場合)は、16歳以上であれば免許なしで乗れるが、走行中に転倒して地面に頭を打ち付けた場合、重篤な事故のリスクがある。JAFでは、頭部を保護するヘルメットはとても重要で、あご紐の調整などで適切にヘルメットを着用することも重要なポイントだとしている。